【1】書式概要
この契約書は、企業や教育機関が外部の講師に講演やセミナーを依頼する際に使用する包括的な業務委託契約書です。特に注目すべき点は、講師の講演内容を映像として記録し、それを商業的に活用することを前提とした内容になっていることです。
現代のビジネス環境では、一度の講演を録画してオンライン配信やeラーニングコンテンツとして活用することが一般的になっています。この契約書は、そうしたデジタル時代の教育ビジネスに対応した内容となっており、映像の著作権から肖像権まで、包括的に権利関係を整理できます。
実際の使用場面としては、企業が社内研修用の動画コンテンツを制作する場合、教育事業者がオンライン講座を展開する場合、セミナー運営会社がウェブセミナーを開催する場合などが挙げられます。また、講師派遣業や人材育成コンサルティング会社にとっても、講師との権利関係を明確にする重要な書面となります。
この契約書は委託者(発注者側)に有利な条件で作成されており、講師から映像使用権や著作権を包括的に取得できる内容になっています。Word形式で提供されるため、自社の業務内容や契約条件に合わせて自由に編集・修正が可能です。改正民法にも対応済みで、現在の商慣行に即した実用的な契約書として活用できます。
【2】条文タイトル
第1条(契約内容) 第2条(報酬) 第3条(有効期間) 第4条(著作権等) 第5条(保証等) 第6条(譲渡の禁止) 第7条(再委託) 第8条(秘密保持) 第9条(損害賠償責任) 第10条(反社会的勢力の排除) 第11条(契約解除) 第12条(肖像権) 第13条(存続事項) 第14条(協議事項) 第15条(管轄裁判所)
【3】逐条解説
第1条(契約内容)
この条項では契約の基本的な枠組みを定めています。単純な講師業務の委託だけでなく、講演内容の記録や商業利用についても包括的に合意を取る構造になっています。
特に重要なのは、講師料に映像の二次利用料も含むという点です。通常、映像の商用利用には別途使用料が発生することが多いのですが、この契約では最初の講師料で全てを包含する仕組みになっています。例えば、ある経営コンサルタントが50万円で企業向けセミナーを行った場合、その講演を録画して後日オンライン教材として販売する権利も、この50万円に含まれることになります。
第2条(報酬)
支払い条件を明確に定めた条項です。月末締め翌月末払いという一般的なビジネス慣行に従いつつ、長期講座の場合の分割払いについても規定しています。
実務的には、例えば3ヶ月間の連続講座を依頼した場合、各月の講義実施後に順次支払いが行われる仕組みです。これにより、委託者側のキャッシュフローの負担を軽減しながら、講師側も定期的な収入を確保できます。
第3条(有効期間)
自動更新条項を含む1年契約として設定されています。この条項により、双方が特に問題を感じなければ自動的に契約が継続され、継続的な講師業務の委託関係を構築できます。
例えば、毎月定期的に開催される経営者向けセミナーの講師として契約する場合、毎回新しい契約を結ぶ手間が省けて効率的です。一方で、契約を終了したい場合は1ヶ月前の通知により更新を阻止できる仕組みになっています。
第4条(著作権等)
この契約書の最も重要な条項の一つで、講演映像の著作権を委託者に帰属させる内容になっています。さらに、講師の著作者人格権の不行使についても定めており、委託者が自由に映像を編集・加工できる権利を確保しています。
具体的には、講師が「マーケティング戦略」について講演した映像を、委託者が編集してeラーニング教材として販売したり、企業のプロモーション動画の一部として使用したりすることが可能になります。講師は後からその使用方法について異議を申し立てることができません。
第5条(保証等)
講師に対して、講演内容や使用資料が第三者の権利を侵害していないことを保証させる条項です。万が一著作権侵害等の問題が発生した場合、講師が全責任を負う構造になっています。
例えば、講師が他社の研修資料を無断で使用して講演を行い、後日著作権侵害で訴えられた場合、委託者ではなく講師がその責任と費用を負担することになります。これは委託者保護の観点から重要な規定です。
第6条(譲渡の禁止)
契約上の権利義務を第三者に譲渡することを禁止する標準的な条項です。講師の人的信頼関係に基づく契約であることを明確にしています。
第7条(再委託)
講師が勝手に代理講師を立てることを防ぐ条項です。委託者の事前承諾なしに他の講師に業務を任せることはできず、もし承諾を得て再委託する場合でも、元の講師が全責任を負う仕組みになっています。
第8条(秘密保持)
双方向の秘密保持義務を定めた包括的な条項です。講演の準備過程で知り得た企業の内部情報や、逆に委託者が講師の独自ノウハウを知った場合の取り扱いを規定しています。
例えば、講師が企業の新商品開発プロジェクトに関する研修を行う場合、その過程で知り得た未発表の商品情報を外部に漏らしてはならないという義務が発生します。
第9条(損害賠償責任)
講師の責任で生じた損害について、講師が賠償責任を負うことを明確にした条項です。過失による講演のキャンセルや、不適切な発言による企業イメージの損害なども対象となります。
第10条(反社会的勢力の排除)
現代の契約書では必須となっている暴力団排除条項です。反社会的勢力との関係が判明した場合、即座に契約解除できる権利を相互に保障しています。
第11条(契約解除)
債務不履行による契約解除の条件を定めています。相当期間の催告後に改善されない場合の解除権を規定しており、解除による損害賠償請求権も保留されています。
第12条(肖像権)
講師の肖像権について包括的な使用許諾を得る条項です。撮影された映像を様々な媒体で制限なく使用できる権利を委託者に与えており、期間制限もありません。
これにより、講演映像を企業のウェブサイトに掲載したり、広告に使用したり、商品パッケージに印刷したりすることが可能になります。講師は画像の選択や加工についても異議を申し立てることができません。
第13条(存続事項)
契約終了後も効力を持続する条項を列挙しています。著作権や秘密保持義務、肖像権の許諾など、契約終了後も継続すべき事項を明確にしています。
第14条(協議事項)
契約書に記載のない事項については双方の協議で決定するという一般条項です。
第15条(管轄裁判所)
紛争が生じた場合の管轄裁判所を定める条項です。訴額に応じて簡易裁判所または地方裁判所を指定する実用的な規定になっています。
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