【1】書式概要
この「〔改正民法対応版〕著作権侵害に関する和解契約書」は、著作権が侵害された場合に、裁判に進まずに当事者間で問題を解決するための和解契約書です。著作権の創作者・権利者と、侵害行為をした側との間で締結するもので、侵害の事実確認、侵害品の回収・廃棄、損害賠償などの取り決めを明文化できます。
例えば、自分のイラスト作品や文章が無断で商品化された場合や、制作したコンテンツが許可なく使用された際に活用できます。改正民法に対応しており、最新の法令に準拠した内容となっているため、安心して利用可能です。
特に個人クリエイターや中小企業の権利者が自らの権利を守るために、弁護士費用をかけずに解決したい場合に役立ちます。権利侵害の事実確認から損害賠償、再発防止までを包括的にカバーしており、著作権トラブルを迅速かつ効果的に解決するための実用的な書式となっています。
【2】条文タイトル
第1条(著作権の有効性承認)
第2条(権利侵害)
第3条(禁止行為)
第4条(販売金額等)
第5条(回収及び廃棄処分)
第6条(情報開示)
第7条(損害賠償金)
第8条(責任追及)
第9条(清算条項)
第10条(費用負担)
【3】逐条解説
第1条(著作権の有効性承認)
この条文では、侵害した側(乙)が著作権者(甲)の著作権が有効であることを認める内容です。これにより、「そもそも著作権が存在するのか」といった根本的な争いを防ぎます。例えば、イラストレーターが描いたキャラクターを無断で使用した企業が、そのキャラクターの著作権をイラストレーターが持っていることを正式に認める場面で使われます。この承認によって、後々「著作権自体を認めていない」という主張ができなくなるため、和解の基礎となる重要な条項です。
第2条(権利侵害)
侵害者が自身の製品やサービスが権利侵害していることを明確に認める条項です。ここで侵害の事実を明確にすることで、将来的に「侵害していない」という反論を封じることができます。音楽制作者の楽曲を無断でCMに使用した広告会社が「この楽曲を無許可で使用したことが著作権侵害に該当する」と認めるような場面で使われます。この条項があることで、侵害の事実が確定し、以降の条項の正当性が担保されます。
第3条(禁止行為)
侵害者が侵害行為を中止し、今後も同様の侵害を行わないことを約束する条項です。これは将来にわたる侵害防止の誓約であり、再発防止のための重要な約束になります。例えば、写真家の写真を無断で自社サイトに掲載していた会社が、その写真の使用を直ちに中止し、今後はその写真家の作品を許可なく使用しないことを約束する場合などに適用されます。この条項によって侵害の継続や再発を防止する効果があります。
第4条(販売金額等)
侵害者が侵害品について、製造数・販売先・販売数・販売金額・在庫数・回収数を明示する条項です。これにより損害の規模が明確になり、適切な賠償額の算定基準となります。例えば、デザイナーのパターンを無断で使用したアパレルメーカーが、そのパターンを使った商品をいくつ作って、どこにいくらで売ったのかを正確に報告する場面で使用します。この情報開示により、被害の実態が明らかになるとともに、回収・廃棄の対象数も確定します。
第5条(回収及び廃棄処分)
侵害品の回収と廃棄に関する条項です。期限を設けて回収・廃棄を完了させ、その証明書類を提出することで確実な実行を担保します。漫画家のキャラクターを無断で使ったグッズを製造した会社が、市場に出回っている商品をすべて回収し、在庫と合わせて廃棄する場合などに使用します。この条項により、侵害品が市場から確実に排除され、被害の拡大を防止できます。
第6条(情報開示)
和解の経過・結果を公表し、関係者に通知する義務を定めた条項です。これにより第三者への影響も考慮した解決が図られます。小説家の作品を無断で翻案した出版社が、自社のホームページで著作権侵害があったことを公表し、その本を納入した書店にも通知する場合などに適用されます。この条項によって侵害の事実が公になり、社会的な信用回復や再発防止の抑止力となります。
第7条(損害賠償金)
著作権侵害に対する損害賠償金の額と支払方法を定める条項です。侵害の程度や販売金額などを考慮して適切な賠償額を設定します。例えば、プログラマーが作成したソフトウェアを無断で使用していた企業が、その使用料相当額や逸失利益などを考慮した金額を支払う場合などに用います。賠償金の金額、支払期限、支払方法を明確にすることで、確実な履行が期待できます。
第8条(責任追及)
契約を守る限り、著作権者は民事・刑事を問わず追加の責任追及をしないことを約束する条項です。これによって侵害者は和解に応じる動機を得ます。写真を無断使用されたカメラマンが、この契約の条件を相手が守る限り、民事訴訟や刑事告訴をしないと約束する場面などで使用されます。侵害者が安心して和解に応じられる環境を整える重要な条項です。
第9条(清算条項)
本契約以外に債権債務関係がないことを確認する条項です。これにより、契約外の請求が発生するリスクを排除します。イラストレーターとそのイラストを無断使用した会社が、この和解契約で定めた事項以外にお互いへの請求権がないことを確認する場合などに使われます。この条項によって、後日「実は別の損害があった」などと追加請求されるリスクを防止できます。
第10条(費用負担)
契約締結にかかる費用は各自負担することを定める条項です。例えば印紙代や弁護士相談料などの費用分担を明確にします。著作権侵害の和解交渉において、双方が弁護士に相談した費用や契約書作成費用などを、それぞれが自己負担することを定める場合などに使用します。費用負担を明確にすることで、後から「契約書作成費用を払え」などのトラブルを防止します。