【1】書式概要
この準消費貸借契約書は、すでに存在する債務を消費貸借の形に書き換えるための重要な書類です。
例えば、商品の売買契約で支払いが滞っている場合や、口約束でお金を貸し借りしていた場合に、その債務を改めて消費貸借契約として明確化するために使用されます。2020年の民法改正に対応した内容となっており、債務の確認から返済方法、利息、遅延損害金の取り決めまで必要事項が網羅されています。
特に事業者間での売掛債権を分割払いに変更する際や、友人・知人間での貸し借りを正式な契約として書面化したい場合に重宝します。細かな条件設定ができるため、当事者間の関係性や状況に応じてカスタマイズも可能です。期限の利益喪失条項など債権者保護の規定も含まれているので、貸主側の安心感にもつながります。
〔条文タイトル〕
第1条(債務確認)
第2条(準消費貸借)
第3条(弁済)
第4条(利息)
第5条(遅延損害金)
第6条(期限の利益喪失)
第7条(合意管轄)
【2】逐条解説
第1条(債務確認)
この条項では、借主(乙)が貸主(甲)に対して負っている既存の債務内容を明確に確認します。特に売買契約などの別契約から生じた未払い代金の金額を明記することで、債務の存在と金額について当事者間で争いがないことを明確にします。例えば「商品購入代金300万円のうち、未払いの150万円について債務を認める」といった形で記載することで、後からの「そんな債務はない」といった主張を防止できます。
第2条(準消費貸借)
既存の債務を消費貸借契約として新たに位置づける条項です。民法第588条に規定される準消費貸借の合意を表明するもので、この合意により既存の売買代金債務などが消費貸借(お金の貸し借り)の形に変わります。これにより返済方法や利息などを新たに取り決めることが可能になります。つまり「売買代金の未払い」から「借金」へと債務の性質が変わるわけです。
第3条(弁済)
借主がどのように返済するかの条件を定めています。返済開始日、毎月の返済額、返済回数、そして支払方法(持参または送付)まで具体的に決めることで、返済に関する誤解を防ぎます。例えば「2023年6月末日から毎月5万円ずつ、計24回の分割で支払う」といった形で明記することで、支払いスケジュールを明確にします。実際に使用する際には、カレンダーで確認しながら現実的な返済プランを設定することが大切です。
第4条(利息)
債務に対する利息の計算方法を定めています。年率と支払い方法を明記し、民法で定められた利息制限法の範囲内(年20%以下)で設定されています。この書式では年5%と設定されていますが、当事者間の合意で変更可能です。利息の計算は月割りで行われ、毎月の分割金と一緒に支払うよう定められています。
第5条(遅延損害金)
借主が返済を遅延した場合のペナルティとして、遅延損害金の支払いを義務付けています。年率14.6%と設定されていますが、これは利息制限法の上限内での設定です。私の知人は遅延損害金を年10%に設定していましたが、高すぎると借主の返済意欲を削ぐことになるため、適切な金利設定が重要です。債務者の支払能力も考慮しつつ、適切な率を設定しましょう。
第6条(期限の利益喪失)
借主が一定の条件に違反した場合、残りの分割払いの権利(期限の利益)を失い、残債務を一括で支払わなければならなくなる規定です。特に①利息の支払い遅延、②差押えなどの債務整理事由の発生、③税金滞納、④無断での引っ越しといった事由が定められています。これは貸主を保護するための重要条項で、分割払いという「特典」を与える代わりに借主の誠実な返済を求めるものです。良好な関係を維持している場合でも、万が一に備えて明記しておくべき条項です。
第7条(合意管轄)
紛争が生じた場合の裁判管轄を貸主の居住地の裁判所と定めています。通常、訴訟は被告(多くの場合は借主)の住所地で行われますが、本条項により貸主の便宜を図っています。例えば東京に住む貸主が大阪の借主に貸した場合、この条項がないと訴訟は大阪で行うことになりますが、本条項があれば東京で訴訟できます。当事者間の力関係や交渉によっては、この条項を修正・削除することもあります。
この準消費貸借契約書は、既存の債務を整理し、返済条件を明確化したい場合に非常に役立つ書式です。特に口約束や不明確な条件での貸し借りを正式化することで、お互いの権利義務を明確にし、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。