【1】書式概要
この動産使用貸借契約書は、機械や設備、車両などの動産を無償で貸し借りする際に使用する契約書の雛型です。改正民法に完全対応しており、特に借主の立場を重視した内容となっています。
使用貸借契約とは、借主が貸主から物を無償で借り受け、使用収益した後に返還する契約のことです。レンタル料金が発生する賃貸借契約とは異なり、対価を支払わない点が大きな特徴となります。この契約書は、親族間での車両の貸し借りや、企業間での機械設備の一時的な貸与、知人同士での工具の貸し借りなど、様々な場面でご活用いただけます。
特に本契約書は借主に配慮した条項が多く盛り込まれています。例えば、借主の配偶者や一親等内の親族であれば事前届出のみで使用が可能な規定や、契約期間中でも2か月前通知により解約できる条項などが含まれており、借主にとって使いやすい内容となっています。
また、損害賠償請求についても貸主側に事前通知義務を課し、請求期間を6か月以内に制限するなど、借主の予見可能性を高める工夫が施されています。反社会的勢力の排除条項も詳細に規定されており、現代のビジネス環境に対応した内容となっています。
中小企業の経営者が取引先から機械を一時的に借り受ける場合や、個人事業主が知人から作業用具を借りる際、さらには家族間での自動車の貸し借りなど、日常的によくある場面で安心してお使いいただける実用的な契約書です。専門的な用語についても分かりやすく整理されており、初めて契約書を作成される方でも安心してご利用いただけます。
【2】条文タイトル
第1条(使用貸借契約)
第2条(契約期間)
第3条(使用目的)
第4条(乙による使用・収益)
第5条(修繕等)
第6条(使用目的の変更等)
第7条(解除)
第8条(損害賠償)
第9条(本件動産の返還・原状回復)
第10条(合意管轄)
第11条(協議)
【3】逐条解説
第1条(使用貸借契約)
この条文では契約の基本的な枠組みを定めています。甲が貸主、乙が借主として、具体的な動産の特定と引渡し期日を明記する構造になっています。例えば「平成フォークリフト FG25型 製造番号ABC123」のように具体的に記載することで、後日のトラブルを防ぐことができます。引渡し期日を明確にすることで、双方の準備期間を確保し、スムーズな契約履行につなげる狙いがあります。
第2条(契約期間)
契約期間を2年間として設定していますが、注目すべきは2か月前予告による中途解約権を双方に認めている点です。これは借主にとって非常に有利な条項で、例えば借りた機械が予想より早く不要になった場合でも、2か月前に通知すれば違約金なしで契約を終了できます。また乙の死亡による契約終了条項は、個人が契約当事者となる場合の相続トラブルを未然に防ぐ配慮です。
第3条(使用目的)
使用目的の限定は使用貸借契約において重要な要素です。例えば「建設工事における土砂運搬のため」と記載されていれば、その車両を引越し作業に使用することはできません。目的外使用は契約違反となり得るため、借主は事前に使用範囲を十分検討して記載する必要があります。
第4条(乙による使用・収益)
この条文は借主の使用方法について規定しています。通常の用法に従った使用という表現は、例えば乗用車であれば一般的な道路走行を想定し、レース用途などの過酷な使用は含まれないという意味です。第三者使用については原則として貸主の承諾が必要ですが、配偶者や一親等親族(父母・子)については事前届出のみで使用可能としており、借主の利便性を重視した規定となっています。
第5条(修繕等)
必要費の負担について借主に責任を課していますが、これは使用に伴う通常のメンテナンス費用を意味します。例えば車両であればオイル交換や定期点検費用、機械であれば日常的な点検整備費用などが該当します。ただし大規模な修理や改修については別途協議が必要となる場合が多いでしょう。
第6条(使用目的の変更等)
使用目的の変更や原状変更には事前承諾が必要とする条項です。例えば事務用に借りた車両を工事現場で使用したい場合や、機械に改良を加えたい場合などがこれに該当します。改良についても明記されているため、借主が独断で設備を追加することは契約違反となります。
第7条(解除)
契約解除事由を詳細に列挙した条文で、特に反社会的勢力の排除について詳しく規定している点が現代的です。仮差押えや破産申立てなどの経済的危機事由のほか、事業廃止や財産状態悪化なども解除事由として含めており、貸主の利益保護を図っています。手形不渡りについても明記されており、与信管理の観点からも重要な条項となっています。
第8条(損害賠償)
損害賠償請求について、貸主に事前通知義務を課し、請求期間を返還後6か月以内に制限している点が借主有利な特徴です。例えば機械を返却した後に損傷が発見されても、貸主が事前に借主に損害発生を通知していなければ請求できない仕組みとなっています。これにより借主は予期しない高額請求から保護されます。
第9条(本件動産の返還・原状回復)
契約終了時の返還義務と原状回復義務を規定していますが、借主の責任によらない損傷については原状回復義務を免除している点が注目されます。例えば台風による損傷や経年劣化による故障などは借主の負担とならず、合理的な責任分担を実現しています。
第10条(合意管轄)
紛争が生じた場合の管轄裁判所を予め決めておく条項です。契約書作成時に具体的な地方裁判所名を記載することで、将来の紛争解決を迅速化できます。通常は貸主の本店所在地を管轄する裁判所を選択することが多く見られます。
第11条(協議)
契約に定めのない事項や疑義が生じた場合の解決方法を定めています。まずは当事者間の協議による円満解決を目指すという姿勢を明確にしており、訴訟に至る前の段階での解決を促進する効果があります。これにより長期的な信頼関係の維持にもつながります。