【1】書式概要
この「〔改正民法対応版〕代理受領承認依頼書兼承諾書」は、企業間取引における資金繰り対策として広く活用される重要な書類です。取引先から支払われる予定の売掛金を、自社ではなく第三者(通常は自社の取引先)に直接受け取らせる際に用います。特に中小企業がキャッシュフローを改善したい場合や、資金調達の一環として活用するケースが多く見られます。
例えば、A社はB社に商品を納入し代金を請求する予定ですが、資金繰りの関係でA社の仕入先であるC社に直接B社から支払ってもらいたい場合、この書類でB社の了承を得ます。実務上は、売掛金担保融資やファクタリングに近い機能を果たしますが、債権譲渡と異なり登記等の手続きが不要なため、手軽に利用できる点が特徴です。
改正民法に対応しており、現行の取引実務に即した内容となっているため、経理担当者や財務責任者にとって安心して使える書式となっています。資金繰りに悩む中小企業経営者や、支払い関係の効率化を図りたい経理担当者にとって、手続きを適正に進めるための必須アイテムといえるでしょう。
【2】解説
代理受領承認依頼書について
この書類は「代理受領」という方式を用いて、本来自社が受け取るべき売掛金を第三者に受け取らせるための手続き書類です。取引先の承諾を得ることで、支払いの流れを変更する効果があります。実務上は銀行融資を受ける際の担保設定や、ファクタリング(売掛債権の売却)とは異なる柔軟な資金調達手段として活用されています。
冒頭部分(日付、宛先、発信者情報)
文書作成日、依頼先企業名、依頼者(自社)の基本情報を記載する欄です。正式な企業間文書として必要な形式を整えています。特に相手先の正式名称や、自社の代表者役職・氏名は正確に記載することが重要です。取引上の信頼関係を築くための基本となる部分なので、社印の押印も忘れないようにしましょう。
前文(依頼内容の説明)
代理受領の依頼内容を説明する部分です。ここでは自社が本来受け取るべき売掛金について、指定した第三者(多くの場合は自社の取引先)への支払いを依頼しています。また、直接取り立てをしないことや、代理受領を中止する場合の手続き方法についても明記しています。これにより支払い先の変更による混乱や二重払いのリスクを防止しています。
「記」以下の明細部分
1. 代理受領者
実際に売掛金を受け取る第三者の情報を記載します。通常は自社の取引先となりますが、資金調達会社や金融機関が指定される場合もあります。代理受領者の正確な住所と名称は、支払いの確実性を担保するために必須情報です。例えば、材料仕入先への直接支払いの場合は、その仕入先の正式名称と本社所在地を記載します。
2. 代理受領する売掛金
対象となる売掛金の具体的な情報を記載します。締め日、支払予定日、金額を明確にすることで、どの請求分についての代理受領なのかを特定します。例えば「2025年4月30日締め分、支払日2025年5月31日、金額100万円」というように、間違いのないよう具体的かつ明確に記載すべきです。複数の請求がある場合は、請求書番号や契約内容も追記するとより確実です。
承諾欄
支払い元企業が代理受領を承認する意思表示を行う欄です。承認日と社印の押印により、三者間での合意が成立します。この承諾が得られることで初めて代理受領の法的効力が生じますので、必ず押印をもらう必要があります。