【1】書式概要
この契約書は、企業がインフルエンサーやタレントとブランドアンバサダー契約を結ぶ際に使用する専用の業務委託契約書です。近年、SNSマーケティングやインフルエンサーマーケティングが企業の販促戦略において重要な位置を占めるようになり、多くの企業がブランドアンバサダー制度を導入しています。
従来の広告契約とは異なり、ブランドアンバサダー契約では長期的な関係性構築が重要であり、単発的な投稿ではなく継続的なブランド発信が求められます。そのため、通常の業務委託契約では対応しきれない特殊な条項が数多く必要となります。
この契約書テンプレートは、改正民法に完全対応しており、2020年4月の債権法改正による新しい契約ルールにも準拠しています。企業側の権利保護と委託者側の義務範囲を明確に定めることで、双方にとって安心できる契約関係を築くことができます。
実際の使用場面としては、化粧品メーカーが美容インフルエンサーと契約する際、アパレル企業がファッション系YouTuberと提携する際、食品会社が料理系インスタグラマーと協業する際など、様々な業界で活用いただけます。また、スタートアップ企業が知名度向上のためにタレントと契約する際にも重宝します。
契約書はWord形式で提供されているため、企業名や報酬額、契約期間などを簡単に編集して即座に使用することが可能です。弁護士監修のもと作成されているため、実用性と安全性を兼ね備えた内容となっています。
【2】条文タイトル
第1条(目的) 第2条(業務内容) 第3条(委託期間) 第4条(報酬) 第5条(業務遂行) 第6条(再委託の禁止) 第7条(機密保持) 第8条(権利帰属) 第9条(競業避止) 第10条(損害賠償) 第11条(解除) 第12条(反社会的勢力の排除) 第13条(契約の変更) 第14条(協議事項) 第15条(管轄裁判所)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条文は契約全体の基本的な枠組みを定めています。ブランドアンバサダー契約が単なる広告契約ではなく、企業のブランド価値向上を目的とした業務委託契約であることを明確にしています。企業側にとっては、この条文により契約の性質を特定し、後々のトラブルを避けることができます。
第2条(業務内容)
具体的な業務範囲を詳細に規定した重要な条文です。SNSでの情報発信、イベント参加、プロモーション活動など、現代のマーケティング手法に対応した内容となっています。例えば、コスメブランドの場合、新商品のInstagram投稿、メイク動画の制作、店舗イベントへの参加などが含まれます。業務内容を明確にすることで、双方の認識違いを防ぎます。
第3条(委託期間)
契約期間の設定と自動更新条項を定めています。ブランドアンバサダー契約では長期的な関係構築が重要なため、1年間の自動更新システムを採用しています。企業側は安定した宣伝効果を期待でき、アンバサダー側も継続的な収入を見込めます。期間満了前の意思表示により更新を阻止できる仕組みも整備されています。
第4条(報酬)
月額固定報酬制を基本とした報酬体系を規定しています。単発的な成果報酬ではなく、継続的な関係性に基づく安定した報酬システムが特徴です。振込手数料の負担者や支払い時期も明確に定めており、金銭トラブルを未然に防ぎます。
第5条(業務遂行)
善管注意義務と企業イメージの保護を規定した条文です。アンバサダーには高い職業倫理が求められ、企業の名誉や信用を損なう行為は禁止されています。例えば、炎上を招くような発言やブランドイメージに合わない行動は契約違反となります。
第6条(再委託の禁止)
業務の第三者委託を原則禁止する条文です。ブランドアンバサダー契約では個人の信用力や影響力が重要であり、安易な再委託は契約の本質を損ないます。企業側の事前承諾があれば例外的に認められますが、厳格な管理が必要です。
第7条(機密保持)
企業の営業秘密や戦略情報の保護を図る条文です。アンバサダーは製品開発情報や販売戦略など、機密性の高い情報に触れる機会が多いため、厳格な機密保持義務が課されています。契約終了後も義務が継続することで、企業の知的財産を長期的に保護します。
第8条(権利帰属)
制作物の著作権や知的財産権の帰属を明確にした条文です。アンバサダーが制作した動画、写真、文章などの著作権は企業に帰属するため、企業は自由に二次利用できます。これにより、マーケティング素材の有効活用が可能になります。
第9条(競業避止)
競合他社との関係を制限する条文です。契約期間中および終了後6ヶ月間は、競合企業の製品宣伝が禁止されます。例えば、化粧品ブランドのアンバサダーが同時期に他の化粧品会社の宣伝を行うことは許されません。企業のブランド価値を守るための重要な条項です。
第10条(損害賠償)
契約違反時の損害賠償責任を定めた条文です。双方向の責任を規定することで、公平性を保っています。実際の損害額の立証が必要となるため、予想損害額の算定や証拠保全が重要になります。
第11条(解除)
契約違反時の解除権を規定した条文です。相当期間を定めた催告が前提となるため、一方的な解除は認められません。例えば、投稿頻度が著しく少ない場合や不適切な発言があった場合に、段階的な是正措置を経て解除に至ります。
第12条(反社会的勢力の排除)
反社会的勢力との関係を完全に排除する条文です。近年の企業コンプライアンス強化により、必須となっている条項です。表明保証違反があった場合は無催告解除が可能であり、企業の信用リスクを最小限に抑えます。
第13条(契約の変更)
契約内容の変更手続きを定めた条文です。書面による合意が必要とされており、口約束による変更は認められません。報酬改定や業務内容の変更時には、必ず書面で記録を残すことが重要です。
第14条(協議事項)
契約書に定めのない事項や解釈の相違について、誠実協議による解決を規定した条文です。裁判に発展する前の段階で問題解決を図ることで、双方の関係維持と費用削減を図ります。
第15条(管轄裁判所)
紛争時の管轄裁判所を事前に定めた条文です。専属的合意管轄により、複数の裁判所での争いを避けることができます。企業の本店所在地の裁判所を指定することが一般的で、訴訟の効率化を図ります。
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