【1】書式概要
この契約書は、フランチャイズ事業に参加する加盟店(フランチャイジー)の立場を重視した契約書の雛型です。一般的なフランチャイズ契約では本部側に有利な条件が多く盛り込まれがちですが、この書式では加盟店側の権利や利益を守るための工夫が随所に施されています。
フランチャイズ事業への参入を検討している事業者の方にとって、この契約書は非常に実用的なツールとなります。飲食店チェーン、コンビニエンスストア、学習塾、美容サロン、クリーニング店など、様々な業種でフランチャイズ展開が行われている現代において、加盟店側の視点で作成された契約書は貴重な存在です。
特に注目すべきは、改正民法に対応した内容となっている点です。2020年の民法改正により、契約に関する規定が大きく変わりましたが、この契約書はそれらの変更点を適切に反映しています。また、加盟金の返還規定や、本部による知的財産権侵害に対する保証条項など、従来の契約書では見落とされがちな加盟店保護の仕組みが盛り込まれています。
実際の使用場面としては、フランチャイズ本部との契約交渉時に、この雛型をベースとして条件交渉を行うことが想定されます。Word形式で提供されるため、各事業者の具体的な状況に応じて条項の修正や追加が容易に行えます。弁護士や行政書士といった専門家と相談しながら、最終的な契約書を完成させる際の土台として活用していただけます。
【2】条文タイトル
第1条(フランチャイズの意義および条件) 第2条(事業テリトリー) 第3条(甲の指導・援助) 第4条(甲による標章の使用許諾) 第5条(加盟金およびロイヤリティ) 第6条(競業避止規定) 第7条(原材料等の供給・仕入れ、サービスの提供) 第8条(販売促進と広告宣伝) 第9条(クレーム・紛争処理等) 第10条(秘密保持) 第11条(個人情報保護) 第12条(譲渡の禁止) 第13条(損害賠償) 第14条(不可抗力免責) 第15条(有効期間) 第16条(契約解除) 第17条(中途解約) 第18条(反社会的勢力の排除) 第19条(契約終了後の措置) 第20条(合意管轄) 第21条(協議)
【3】逐条解説
第1条(フランチャイズの意義および条件)
この条文は契約の基本的な枠組みを定めています。フランチャイジーが独立した事業者として店舗を運営することを明確にしており、雇用関係や代理関係ではないことを確認しています。例えば、コンビニエンスストアの場合、店舗オーナーは本部の従業員ではなく、自らの判断で店舗運営を行う独立した事業者として位置づけられます。
第2条(事業テリトリー)
加盟店にとって極めて重要な条項です。指定された地域内での独占的な営業権を保障し、本部が同じエリアに新たな加盟店や直営店を出店することを禁止しています。学習塾フランチャイズの場合、半径2キロメートル以内に同じブランドの教室を新設できないといった取り決めがこれに該当します。
第3条(甲の指導・援助)
本部が加盟店に対して提供すべき支援内容を具体的に列挙しています。重要なのは第3項で、本部が提供するノウハウやマニュアルが第三者の知的財産権を侵害していないことを保証し、問題が生じた場合の責任を本部が負うことを明記している点です。
第4条(甲による標章の使用許諾)
商標やロゴマークの使用に関する規定です。加盟店は本部の商標を使用する権利を得る一方で、契約終了後は速やかに使用を停止する義務があります。ファストフード店の場合、店舗看板やユニフォーム、包装材料などに使用される全ての商標が対象となります。
第5条(加盟金およびロイヤリティ)
加盟店側に有利な条項として、契約締結後6か月以内の契約終了時における加盟金返還請求権を規定しています。これは一般的な契約では見られない保護措置で、美容サロンフランチャイズなどで初期投資が回収できない場合のリスクを軽減します。
第6条(競業避止規定)
契約期間中の競業禁止を定めています。ただし、この条項は加盟店の事業の自由を制限するものであるため、必要最小限の範囲に留めることが重要です。クリーニング店の場合、同業種での独立開業は制限されますが、全く関係のない業種への進出は可能です。
第7条(原材料等の供給・仕入れ、サービスの提供)
加盟店が必要な資材や原材料を調達する方法を規定しています。本部指定の業者からの購入を義務付けるケースが多いですが、価格の透明性や品質保証が重要なポイントとなります。
第8条(販売促進と広告宣伝)
加盟店の広告宣伝活動に関する規定です。本部との統一性を保ちつつ、地域に根ざした販促活動を行うことが求められます。地域の商店街イベントへの参加なども含まれます。
第9条(クレーム・紛争処理等)
顧客からの苦情や第三者とのトラブルが発生した際の対応方針を定めています。加盟店だけでなく本部も協力して解決にあたることを明記しており、加盟店の負担軽減を図っています。
第10条(秘密保持)
営業ノウハウや顧客情報の機密保持に関する規定です。契約終了後も3年間は秘密保持義務が継続します。IT関連のフランチャイズでは、システムの仕様やプログラムコードなどが対象となることが多いです。
第11条(個人情報保護)
個人情報保護法に基づく適切な個人情報の取扱いを規定しています。顧客データベースの管理や、委託先への情報提供時の安全管理措置について定めています。
第12条(譲渡の禁止)
契約上の地位や権利義務の第三者への譲渡を制限する条項です。相手方の書面による同意なく譲渡することはできません。事業承継の際には事前の合意が必要となります。
第13条(損害賠償)
契約違反による損害賠償請求権を規定しています。双方向の規定となっており、加盟店からも本部に対して損害賠償を請求できる仕組みとなっています。
第14条(不可抗力免責)
自然災害などの不可抗力による契約履行不能の場合の免責条項です。新型コロナウイルス感染症のような予期せぬ事態も対象となる可能性があります。
第15条(有効期間)
契約の有効期間と自動延長に関する規定です。6か月前までに異議申し立てがない場合、1年間の自動延長が行われます。
第16条(契約解除)
重大な契約違反があった場合の解除事由を列挙しています。破産や営業停止処分など、客観的に判断できる事由に限定されています。
第17条(中途解約)
6か月の予告期間を設けることで、当事者が任意に契約を解約できる権利を保障しています。これは加盟店にとって重要な権利で、事業環境の変化に対応するための安全弁となります。
第18条(反社会的勢力の排除)
暴力団等の反社会的勢力との関係を完全に排除する条項です。企業のコンプライアンス体制の一環として必須の規定となっています。
第19条(契約終了後の措置)
契約終了時の処理手続きを規定しています。特に第2項では、契約締結から2年以内の終了時における本部による費用補償を定めており、加盟店の初期投資リスクを軽減する重要な保護措置となっています。
第20条(合意管轄)
契約に関する紛争の管轄裁判所を指定しています。通常は本部所在地の裁判所が指定されることが多いですが、加盟店の所在地も考慮して決定すべき事項です。
第21条(協議)
契約に定めのない事項や疑義が生じた場合の解決方法を規定しています。まずは当事者間の話し合いによる円満解決を目指すことを基本としています。
|