【1】書式概要
この契約書は、映像編集やテロップ制作を外部の編集者やクリエイターに依頼する際に使用する専門的な業務委託契約書です。動画コンテンツの需要が急速に高まる現代において、企業がプロモーション動画やWeb動画、CM制作などを外注する機会が増えています。そんな時に必要となるのが、双方の権利と義務を明確に定めた契約書です。
この契約書テンプレートは、発注者側の立場を重視した内容となっており、映像制作会社や広告代理店、企業の宣伝部門などが安心して外注できるよう設計されています。テロップ制作から音声編集、カラーグレーディングまで、現代の映像編集業務で必要となる全ての要素を網羅しています。
特に注目すべき点として、改正民法に完全対応している点があります。2020年の民法改正により、契約に関する規定が大幅に見直されましたが、この契約書はその変更点を全て反映しています。また、著作権の帰属や機密保持、検収プロセスなど、映像制作特有の課題についても詳細に規定されています。
Word形式で提供されるため、自社の状況に合わせて内容を自由に編集・カスタマイズできます。修正回数の制限や追加料金の設定、納品形式の指定など、実際の業務で問題となりがちな点についても事前に取り決めができるよう配慮されています。
YouTubeやTikTokなどのSNS動画制作から、企業の研修動画、製品紹介動画まで、あらゆる映像制作シーンで活用できる汎用性の高い契約書です。フリーランスの編集者に依頼する場合はもちろん、制作会社との取引でも使用できます。
【2】条文タイトル
第1条(契約当事者) 第2条(業務内容) 第3条(契約期間) 第4条(報酬) 第5条(進捗報告) 第6条(納品物と検収) 第7条(機材・ソフトウェア) 第8条(素材の提供) 第9条(テロップ作成に関する特則) 第10条(著作権等の権利帰属) 第11条(撮影素材の取扱い) 第12条(機密保持) 第13条(クレジット表記) 第14条(再委託の禁止) 第15条(契約解除) 第16条(中途解約) 第17条(損害賠償) 第18条(不可抗力) 第19条(個人情報の取扱い) 第20条(反社会的勢力の排除) 第21条(存続条項) 第22条(協議事項) 第23条(管轄裁判所)
【3】逐条解説
第1条(契約当事者)
この条文では契約を結ぶ当事者を明確に特定します。発注者を「甲」、受注者を「乙」として表記し、それぞれの正式名称と住所を記載する仕組みです。法人の場合は商号や代表者名も含めて記載することが一般的で、個人事業主の場合は屋号と本名を併記することもあります。住所は連絡先としての意味もあるため、正確な記載が重要です。
第2条(業務内容)
映像編集業務の具体的な内容を詳細に定めた重要な条文です。単純な「映像編集」という表現では範囲が曖昧になりがちですが、この条文では素材のカット編集からテロップ作成、エフェクト適用、音声編集まで、現代の映像制作で必要となる全工程を明記しています。特に修正回数を2回までに制限している点は、後々のトラブルを避ける上で非常に有効です。例えば、クライアントが何度も修正を求めてくる場合、3回目以降は追加料金が発生することを事前に明示しています。
第3条(契約期間)
契約の有効期間と具体的な業務期間、納品期限を定めています。映像制作は時間のかかる作業であるため、現実的なスケジュールを設定することが重要です。例えば、5分程度の企業紹介動画であれば、素材提供から納品まで2-3週間程度を見込むのが一般的でしょう。ただし、修正回数や内容の複雑さによって期間は変動するため、余裕を持ったスケジュール設定が推奨されます。
第4条(報酬)
報酬の金額と支払い条件を明確に定めた条文です。消費税の扱いや振込手数料の負担者、支払い期日まで詳細に規定しています。映像制作業界では、作業の複雑さや時間によって報酬が大きく変動するため、基本料金に加えて追加作業の料金体系も併記している点が特徴的です。例えば、当初5分の動画制作を依頼したが、最終的に8分になった場合、超過分の3分について1分あたりの追加料金が発生する仕組みです。
第5条(進捗報告)
制作進捗の報告義務について定めています。映像制作は完成まで時間がかかるため、発注者としては途中経過を確認したいのが自然です。この条文では電子メールやオンライン会議システムを使った報告方法を明示し、問題が発生した場合の連絡義務も規定しています。実際の運用では、編集の25%、50%、75%完了時点で中間報告を求めることが多いでしょう。
第6条(納品物と検収)
完成した映像の納品と検収プロセスを定めています。検収期間を明確に設定することで、いつまでも検収が完了しない事態を防いでいます。また、契約不適合がある場合の修正義務も規定しており、品質保証の観点から重要な条文です。例えば、指定したフォーマットで書き出されていない場合や、音声にノイズが入っている場合などは、無償での修正対象となります。
第7条(機材・ソフトウェア)
編集に使用する機材やソフトウェアについて定めています。現代の映像編集では高性能なパソコンと専門ソフトウェアが必要不可欠ですが、通常は受注者が準備します。この条文では使用すべきソフトウェアの種類を指定できるようになっており、例えばAdobe Premiere ProやDaVinci Resolveなど、特定のソフトでの編集を求めることができます。また、データ消失のリスクを避けるためのバックアップ義務も明記されています。
第8条(素材の提供)
発注者が編集者に提供する素材について詳細に定めています。映像制作では撮影データ、音声ファイル、ロゴデータなど多様な素材が必要になるため、何をいつまでに提供するかを明確にすることが重要です。オンラインストレージサービスの普及により、大容量ファイルの受け渡しが容易になりましたが、セキュリティ面での配慮も必要です。
第9条(テロップ作成に関する特則)
テロップ制作に特化した詳細な規定です。文字サイズや色、表示時間など、視聴者の理解を助けるための技術的要件を定めています。特に企業動画では、ブランドイメージを統一するためのフォント指定や色彩規定が重要になります。例えば、企業のコーポレートカラーに合わせたテロップ色の使用や、視認性を確保するための最小文字サイズの規定などが含まれます。
第10条(著作権等の権利帰属)
完成した映像の著作権を発注者に帰属させる重要な条文です。映像制作では、編集者の創作的な要素が多分に含まれるため、著作権の帰属を明確にしておくことが不可欠です。一方で、編集者が独自に開発した技術やテンプレートについては、編集者の権利として保護される仕組みも含まれています。
第11条(撮影素材の取扱い)
提供された撮影素材の適切な管理について定めています。企業の機密情報が含まれる場合が多いため、業務完了後の処理方法を明確にしています。返却、消去、または許可を得た保管の3つの選択肢を用意し、セキュリティ対策の義務も課しています。
第12条(機密保持)
映像制作で知り得た機密情報の保護について詳細に規定しています。新商品の発表前動画や企業の内部情報が含まれる場合が多いため、厳格な機密保持義務を課しています。ただし、公知の情報や適法に取得した情報については対象外とする合理的な例外規定も設けています。
第13条(クレジット表記)
完成した映像におけるクレジット表記について定めています。編集者の名前を表示するかどうかは発注者の判断に委ねられており、ポートフォリオ使用についても事前承諾を必要とする仕組みです。これにより、発注者のブランド保護を優先した規定となっています。
第14条(再委託の禁止)
業務の再委託を原則禁止する条文です。映像制作では技術的な専門性が重要であり、また機密情報を扱うため、信頼関係に基づく直接の委託関係を重視しています。やむを得ず再委託する場合は、書面による事前承諾と同等の義務の承継を求めています。
第15条(契約解除)
契約違反があった場合の解除手続きについて定めています。相当期間を定めた催告を経ることで、軽微な違反でも改善の機会を与える一方、重大な違反の場合は即座に解除できる仕組みを設けています。破産や差押えなどの信用状況悪化も解除事由に含めることで、リスク管理を図っています。
第16条(中途解約)
発注者の都合による中途解約について規定しています。映像制作では作業途中での方針変更や予算変更が起こりがちですが、その場合の報酬支払いルールを明確にしています。進捗度合いに応じた報酬支払いと実費補償により、双方の利益バランスを図っています。
第17条(損害賠償)
契約違反による損害賠償について定めています。受注者の責任を原則として報酬額を上限とする一方、故意・重過失や機密保持違反、知的財産権侵害の場合は無制限責任とする合理的な責任制限を設けています。
第18条(不可抗力)
地震や疫病などの予見できない事由による履行遅延について規定しています。近年の自然災害の多発やパンデミックの経験を踏まえ、当事者の責任を免除する一方、適切な対応協議を義務付けています。
第19条(個人情報の取扱い)
映像に含まれる個人情報の適切な取扱いについて定めています。インタビュー動画や社員紹介動画など、個人情報が含まれる場合の法令遵守義務と、業務完了後の適切な処理を規定しています。
第20条(反社会的勢力の排除)
反社会的勢力との関係を排除する条文です。企業コンプライアンスの観点から必要不可欠な規定であり、違反があった場合は無催告解除を可能とする厳格な内容となっています。
第21条(存続条項)
契約終了後も効力を持続させる条文を明記しています。著作権や機密保持などの重要な義務は、契約終了後も継続する必要があるため、明確に規定しています。
第22条(協議事項)
契約に定めのない事項や解釈の疑義について、当事者間の誠実な協議による解決を定めています。訴訟に発展する前の円満解決を図る重要な条文です。
第23条(管轄裁判所)
万が一の紛争に備えた管轄裁判所を定めています。専属的合意管轄とすることで、紛争解決の迅速化と予測可能性を確保しています。通常は発注者の本社所在地を管轄する裁判所を指定することが多いでしょう。
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