【1】書式概要
この「エレベーターメンテナンス業務委託契約書」は、マンションなどの集合住宅や商業ビルでのエレベーター設備の保守管理を安全かつ適切に行うための重要な契約書雛型です。2020年の改正民法に対応した内容となっており、管理組合と保守管理会社との間の権利義務関係を明確にします。
本契約書は、定期点検や緊急対応、部品交換などの基本的な業務内容から、委託料の支払い条件、契約期間、責任の所在、緊急時の対応方法まで幅広く網羅しています。特に重要な条項として、再委託の制限、秘密保持義務、反社会的勢力の排除に関する条項も含まれており、現代の契約実務に必要な要素を押さえています。
この雛型は、新築マンションの管理組合が初めて保守会社と契約を結ぶ場合や、既存の契約を見直す際に特に役立ちます。また、複数のエレベーターを持つ中規模〜大規模マンションでの使用を想定していますが、停止階数や号機数の調整により、さまざまな規模の建物に対応可能です。
契約書の文言はシンプルかつ明確で、専門家でなくても理解しやすい表現となっています。管理組合の理事長や担当者が、専門知識がなくても契約内容を把握できるよう配慮されています。さらに、契約の解除条件や紛争解決方法についても明記されており、トラブル発生時の対応方針が明確になっています。
エレベーターは建物の安全と利便性に直結する重要設備です。この契約書雛型を活用することで、管理組合は安心して保守管理業務を委託でき、居住者の安全と快適な生活環境を確保することができるでしょう。
〔条文タイトル〕
第1条(目的)
第2条(対象設備)
第3条(業務内容)
第4条(業務実施報告)
第5条(委託料)
第6条(契約期間)
第7条(責任)
第8条(緊急時の対応)
第9条(再委託の禁止)
第10条(秘密保持)
第11条(反社会的勢力の排除)
第12条(解約)
第13条(契約の解除)
第14条(損害賠償)
第15条(協議事項)
第16条(管轄裁判所)
【2】逐条解説
前文
契約の当事者を明確に定義しています。「甲」をマンション管理組合、「乙」を業務を受託する会社とし、本契約の対象となるマンションを特定しています。この前文は契約の基本的な枠組みを示す重要な部分です。
第1条(目的)
本契約の目的を明確にしています。甲(管理組合)が所有するエレベーター設備の保守管理業務を乙(メンテナンス会社)に委託し、乙がこれを受託するという基本的な契約関係を定めています。目的条項は契約全体の解釈指針となります。
第2条(対象設備)
本契約の対象となるエレベーター設備の具体的な内容を詳細に特定しています。設置場所、号機番号(種類も含む)、製造メーカー、型式、積載量、速度、停止階、設置年月などの情報を明記することで、契約の対象を明確にし、将来的な紛争を防止します。
第3条(業務内容)
乙(メンテナンス会社)が行うべき業務内容を列挙しています。定期点検、緊急時対応、部品交換・修理、法定検査の立会い、その他安全運行に必要な業務と明確に定めることで、業務範囲を明確にしています。
第4条(業務実施報告)
乙(メンテナンス会社)の業務報告義務を定めています。業務実施後の速やかな報告を書面で行うことを義務付けることで、業務の透明性と甲(管理組合)の監督権を確保しています。
第5条(委託料)
金銭的対価に関する条項です。委託料の金額、支払い方法、支払い期日を明確にしています。また、通常の保守点検に必要な消耗品費用は委託料に含まれるが、修理に必要な部品代は別途甲の負担となることを明記し、費用負担の範囲を明確にしています。
第6条(契約期間)
契約の存続期間と更新に関する条項です。初期契約期間を1年間とし、期間満了の1ヶ月前までに甲乙いずれからも書面による申し出がない場合は自動更新される仕組みを定めています。これにより契約関係の安定性を確保しています。
第7条(責任)
乙(メンテナンス会社)の責任範囲を定めています。善管注意義務を基本とし、故意または重大な過失による損害賠償責任、第三者に対する損害の責任と負担について明確にしています。これにより、責任の所在を明確にし、トラブル発生時の対応を円滑にします。
第8条(緊急時の対応)
故障等の緊急事態発生時の対応方法と費用負担について定めています。乙(メンテナンス会社)は速やかに対応する義務を負い、通常の保守点検範囲を超える費用については甲乙協議の上で負担を決定するとしています。
第9条(再委託の禁止)
乙(メンテナンス会社)による業務の第三者への再委託を原則として禁止し、例外的に甲(管理組合)の書面による事前承諾がある場合のみ許容しています。これにより、業務の質の確保と責任の所在の明確化を図っています。
第10条(秘密保持)
契約に関して知り得た相手方の秘密情報の取扱いについて定めています。目的外使用や第三者への開示・漏洩を禁止し、この義務が契約終了後も継続することを明記しています。これにより情報セキュリティを確保します。
第11条(反社会的勢力の排除)
反社会的勢力との関係遮断を明確にする条項です。当事者が反社会的勢力でないことの表明保証、違反時の無催告解除権、解除による損害賠償責任の免除を定めています。現代の契約では標準的かつ重要な条項となっています。
第12条(解約)
当事者の一方的な意思表示による契約終了(解約)の手続きを定めています。1ヶ月前の書面通知により解約できるとしており、契約関係からの離脱の自由を保障しつつ、一定の予告期間を設けることで相手方の不測の損害を防止しています。
第13条(契約の解除)
契約違反を理由とする契約終了(解除)の条件を定めています。相手方の契約違反と、相当期間を定めた催告にもかかわらず是正されないことを要件としており、契約の安定性と違反に対する対応のバランスを図っています。
第14条(損害賠償)
契約違反による損害賠償責任を明記しています。シンプルな規定ですが、民法の原則を確認的に規定することで、責任の所在を明確にしています。
第15条(協議事項)
契約に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合の解決方法として、当事者間の誠実な協議による解決を定めています。あらゆる事態を契約で予測することは不可能なため、このような協議条項は重要です。
第16条(管轄裁判所)
紛争が生じた場合の裁判管轄を特定の地方裁判所に限定する合意管轄条項です。これにより、紛争解決の場所が予測可能となり、特に甲(管理組合)にとっては地理的に便利な裁判所を指定できるメリットがあります。
締結文言
契約書の作成通数、署名捺印方法、各当事者の保有部数を定め、契約の成立を証するための形式を整えています。契約の成立日付と当事者の署名捺印欄を設けることで、契約の有効性を担保しています。