【1】書式概要
このスポーツジム向けインストラクター業務委託契約書は、ジム経営者が外部インストラクターと円滑な業務関係を構築するための法的基盤となる雛型です。改正民法に対応しており、インストラクター業務の範囲や報酬体系、評価期間の設定など実務的な内容を網羅しています。
特にジム経営者の立場に配慮した条項が含まれており、顧客の引き抜き防止や秘密情報・個人情報の保護、業務品質の維持に関する規定が盛り込まれています。
また、有効期間の設定や契約解除条件、不可抗力時の対応など、トラブル発生時の対処方法も明確に定められているため、ジム経営者とインストラクター双方の権利と義務を明確にし、安心して業務を委託できる環境を整えることができます。
反社会的勢力の排除条項も備わっており、コンプライアンス面でも安心です。この雛型を活用することで、個別の状況に応じた調整が容易になり、法的リスクの低減とビジネス関係の安定化に貢献します。
〔条文タイトル〕
第1条(目的)
第2条(乙の義務)
第3条(有効期間)
第4条(委託料)
第5条(支払日・支払方法)
第6条(権利義務の譲渡)
第7条(秘密情報)
第8条(個人情報)
第9条(損害賠償)
第10条(契約の解除と期限の利益の喪失)
第11条(不可抗力免責)
第12条(裁判管轄)
第13条(反社会的勢力の排除)
第14条(規定外事項)
【2】逐条解説
第1条(目的)
この条項では契約の基本的な目的を定めています。スポーツジムの経営者(甲)がインストラクター(乙)に業務を委託する関係性を明確にしています。特に重要なのは、この契約が民法上の「委任契約」ではなく「請負契約」であると明記している点です。これにより、指揮命令関係が生じにくくなり、雇用関係と誤解されるリスクを軽減しています。ただし、日時・場所・指導方針は甲が決定する一方で、指導の細則は乙に委ねられていることで、業務委託の実態を担保しています。
第2条(乙の義務)
インストラクター(乙)の義務について定めています。この条項は3つの重要な点を規定しています。
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ジムの設備利用に関する条件と乙の管理責任
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業務放棄時の賠償責任
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顧客の引き抜き禁止と違反時の違約金
特に3点目は甲(ジム経営者)の事業継続を守るための重要な条項で、「甲の顧客」の定義を広く捉えることで保護範囲を拡大しています。引き抜き行為があった場合の違約金も明確に定められており、抑止効果が期待できます。
第3条(有効期間)
契約期間とその更新方法を定めています。特徴的なのは、自動更新条項と評価期間中の解約権です。書面による意思表示がなければ自動的に6ヶ月間更新される仕組みになっていますが、評価期間中は甲がインストラクターの能力に疑義を感じた場合に解約できる権利を留保しています。これにより、甲は新しいインストラクターの能力を見極める機会を確保できます。
第4条(委託料)
報酬額とその支払条件を規定しています。以下の3つの重要ポイントがあります。
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時間単価の明示(消費税込み)
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評価期間中の報酬減額
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不可抗力や顧客の不参加時の対応
特に評価期間中は報酬が通常より減額される点と、顧客が参加しなかった場合は報酬が支払われない点は、甲側に有利な条件設定となっています。
第5条(支払日・支払方法)
報酬の精算タイミングと支払方法を具体的に定めています。月末締め翌月10日までに請求、翌月末までに支払うという一般的なサイクルを採用しています。振込手数料を乙負担としている点は、甲側に有利な条件です。
第6条(権利義務の譲渡)
契約上の権利義務を第三者に譲渡することを禁止しています。これにより、契約当事者間の信頼関係を基礎とした関係性を維持し、予期せぬトラブルを防止します。
第7条(秘密情報)
秘密情報の定義と、その取扱いについて詳細に規定しています。秘密情報の定義を明確にしつつ、秘密情報に該当しない例外も明記しています。さらに、秘密情報の開示方法や第三者への非開示義務についても言及しており、情報管理の枠組みを包括的に定めています。
第8条(個人情報)
個人情報保護法に基づく個人情報の取扱いを義務付けています。簡潔な条文ですが、乙に対して法令遵守を求めることで、顧客情報の適切な管理を確保しています。
第9条(損害賠償)
契約違反による損害発生時の賠償責任を定めています。シンプルな条文ですが、相互の責任を明確にし、契約順守のインセンティブとなります。
第10条(契約の解除と期限の利益の喪失)
契約解除の条件と、その場合の金銭債務の取扱いについて定めています。以下の場合に催告なしで契約解除できることを明記しています。
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重大な過失や背信行為
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支払停止
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各種法的整理手続きの申立て
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手形取引停止
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税金滞納
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契約違反
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その他重大事由
また、これらの事由が発生した場合、期限の利益を喪失し、債務を直ちに全額弁済する義務が生じることも規定しています。
第11条(不可抗力免責)
天災地変や戦争、法令変更、労働争議など、当事者の責めに帰さない事由による履行遅延や不能の場合の免責を定めています。感染症の流行も明記されており、コロナ禍などの状況にも対応できる現代的な条項となっています。
第12条(裁判管轄)
紛争発生時の管轄裁判所を甲の住所地の裁判所と定めています。甲にとって利便性の高い条件設定となっています。
第13条(反社会的勢力の排除)
反社会的勢力との関係遮断を明確にしている条項です。両当事者が反社会的勢力に該当しないことの表明保証と、該当した場合の契約解除権について規定しています。コンプライアンス面で重要な条項であり、現代の契約書では必須の条項となっています。
第14条(規定外事項)
契約書に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合の対応方法を定めています。当事者間の協議により解決するという一般的な規定ですが、予期せぬ問題が発生した際の対応の指針となります。