【1】書式概要
この協定書は、会社が従業員の給与や賞与を銀行口座に直接振り込む際に必要となる重要な書類です。現在多くの企業で採用されている給与の口座振込制度ですが、実は労働基準法により、現金払いが原則とされているため、口座振込を行うには必ず労使間での書面による協定締結が義務付けられています。
この書式は改正労働基準法に完全対応しており、給与計算業務の効率化を図りたい経営者や人事担当者にとって必須のテンプレートといえるでしょう。特に新規事業立ち上げ時や既存の給与システムを見直す際、また労働基準監督署からの指導を受けた場合などに活用いただけます。
協定書には振込対象となる従業員の範囲、対象となる賃金の種類、金融機関の変更手続き、実施開始日などが明確に定められており、労使双方の権利と義務を適切に規定しています。Word形式で提供されるため、貴社の実情に合わせて社名や日付、具体的な条件などを簡単に編集・カスタマイズすることが可能です。
人事労務の専門知識がない方でも安心してご利用いただけるよう、実務で使いやすい内容に仕上がっています。給与事務の近代化と法令遵守を同時に実現できる実用性の高い書式として、多くの企業でご活用いただいております。
【2】逐条解説
第1項(賃金口座振込の実施要件)
この項目では、会社が従業員の同意を得た上で指定口座への振込ができることを定めています。ここで重要なのは「各人の同意」という表現で、これは一人ひとりから個別に同意を取得する必要があることを意味します。例えば、新入社員が入社する際に給与振込先を届け出てもらう場面や、既存社員が振込開始を希望する場合に個別の同意書を取得するケースが該当します。
第2項(対象従業員の範囲)
対象となる従業員の範囲を明確にする条項です。この書式では「すべての従業員」としていますが、実際の運用では正社員のみ、契約社員を含む、パートタイマーは除くなど、会社の方針に応じて調整されることが多くあります。人材派遣会社であれば派遣スタッフも含めるか検討が必要ですし、管理職は別途規定を設ける企業もあります。
第3項(振込対象賃金の種類と金額)
振込対象となる賃金の種類と、その金額設定について規定しています。毎月の基本給だけでなく、賞与や退職金まで含めているのが特徴的です。実務では、従業員が「全額振込」「一部現金受取希望」など、個々のニーズに応じて申し出ることができます。子育て中の社員が家計管理のために一部を現金で受け取りたい場合や、高齢の従業員が慣れ親しんだ現金支給を希望する場合などに配慮した規定といえます。
第4項(金融機関の指定と変更手続)
従業員が自由に金融機関を選択できる権利と、変更時の手続きを定めています。15日前の事前申出期間は、給与計算システムの変更作業や金融機関との手続きに必要な実務上の期間を考慮したものです。転居により取引銀行を変更する場合や、より条件の良い金融機関に変更したい場合などに適用されます。
第5項(実施開始日)
口座振込制度の開始時期を明記する項目です。新制度導入時の準備期間や、システム構築の完了時期に合わせて設定されます。例えば、4月の新年度から開始する場合や、給与システムの更新に合わせた特定の月から実施する場合などがあります。
第6項(協定の効力発生と存続期間)
協定の法的効力がいつから始まり、どのような条件で終了するかを規定しています。60日前の破棄通告期間は、新たな協定への移行準備や、現金支給への切り替え作業に必要な期間として設定されています。労働組合との関係変化や、会社の方針転換などにより協定を見直す必要が生じた際の手続きを明確にしたものです。
|