【1】書式概要
この文書は、会社から給料や残業代などの賃金が支払われずに困っている労働者が、勤務先に対して未払い分の支払いを正式に求める際に使用する請求書の雛形です。
労働基準法の改正により、賃金の請求権は従来の2年から3年(将来的には5年)に延長されたため、退職後であっても一定期間内であれば未払い賃金を請求することができます。給料の支払いが遅れている、残業代がまったく支払われていない、退職時に最後の給料が振り込まれないといった状況で、口頭での催促では会社が応じてくれない場合に、この書面を使って正式な請求を行うことで問題解決への第一歩を踏み出せます。
特に中小企業では経営が苦しくなると従業員への給料支払いが後回しになることがあり、また、サービス残業が常態化している職場では退職時にまとめて残業代を請求するケースも少なくありません。この雛形を使用することで、個人でも会社に対して適切な請求を行うことができ、多くの場合、書面での正式な請求を受けた会社は支払いに応じることになります。
Word形式のファイルとして提供されているため、お客様のパソコンで簡単に編集することができます。会社名、氏名、金額、振込先口座などの必要事項を入力するだけで、すぐに使用できる実用的なテンプレートです。労働問題に詳しくない方でも、専門的な知識なしに適切な請求書を作成できるよう、必要な要素がすべて盛り込まれています。
【2】解説
日付欄の意義
文書作成日を明記することで、請求の時点を明確にし、その後の交渉や法的手続きにおける起算点となります。また、相手方が「いつ請求されたかわからない」と言い逃れることを防ぐ効果もあります。
宛先の重要性
株式会社名と担当者名を明記することで、請求の相手方を特定し、責任の所在を明確にします。人事部長や代表取締役など、賃金支払いに関して決定権を持つ人物を宛先にすることが効果的です。
勤務期間の明示
具体的な勤務開始日と終了日を記載することで、請求の根拠となる労働関係の存在を立証します。これにより、会社側が「そのような労働者は存在しない」といった反論をすることを防げます。
未払い賃金額の特定
「合計:●●万円」として具体的な金額を記載することで、請求の範囲を明確にします。基本給、残業代、賞与など、未払いとなっている賃金の内訳がある場合は、別途詳細な計算書を添付することも有効です。
改正労働基準法への言及
2020年の法改正により時効期間が延長された点に触れることで、会社側に対して「時効で請求権が消滅している」という反論を封じる効果があります。特に退職から2年以上経過している場合には、この記載が重要になります。
支払い期限の設定
「7日以内」という明確な期限を設けることで、会社側に迅速な対応を促します。この期間は法的に定められたものではありませんが、合理的な期間として広く受け入れられています。期限を設けることで、その後の法的手続きへの移行もスムーズになります。
振込先口座の詳細記載
銀行名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義のすべてを記載することで、会社側が「振込先がわからない」という理由で支払いを遅らせることを防ぎます。普通預金口座を指定するのが一般的です。
法的措置の警告
最後に「法的措置を取らせていただきます」と記載することで、会社側に対して真剣な請求であることを示し、任意の支払いを促進する効果があります。具体的には労働基準監督署への申告、労働審判の申立て、民事訴訟の提起などが考えられます。
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