【1】書式概要
この包括保証約定書は、会社が銀行からお金を借りる際に、別の会社がその返済を保証するために使う重要な書類です。例えば、A社が事業拡大のために銀行から融資を受けたいけれど、まだ取引実績が浅い場合、親会社や関連会社のB社が「もしA社が返済できなくなったら、私たちが代わりに払います」と約束する時に使います。
実際の場面では、新しく設立した子会社が運転資金を借りる時や、グループ会社が設備投資のための融資を受ける際によく使われます。この書式の特徴は、今回の借入だけでなく、将来の追加借入についても自動的に保証対象になる「包括保証」という仕組みを採用している点です。
また、保証人が持つ権利に一定の制限を設けることで、銀行側の債権回収を確実にする工夫もされています。事業性の借入の場合は公正証書の作成も必要になるなど、2020年の民法改正に対応した最新の内容になっています。
この雛型はWord形式で提供されるため、会社名や金額、日付などを自由に編集でき、すぐに実務で活用できます。銀行との交渉時間を大幅に短縮でき、スムーズな資金調達を実現できる実用的な書式です。
【2】解説
保証人情報 ここには保証する側の会社の正式な情報を記載します。
実は銀行って、住所の書き方一つでも結構うるさいんですよね。登記簿謄本と一字一句違わないように書かないと、「これ、本当に同じ会社ですか?」なんて言われちゃうこともあります。代表者の印鑑も、必ず会社の代表印(丸印)を使います。認印だと受け付けてもらえません。
1. 保証の範囲 これが「包括保証」と呼ばれる部分です。
例えば、今日1000万円借りたとして、来月さらに500万円追加で借りたとしても、この保証契約一つで両方カバーされるんです。いちいち新しい保証契約を結ぶ必要がないので、グループ会社間の資金調達がスムーズになります。ただし、保証人にとってはリスクが大きくなるので、慎重な判断が必要です。
2. 代位権の制限
ちょっと難しい話に聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと「保証人が代わりに返済した後の権利」についての取り決めです。
普通なら、保証人が100万円払ったら、その分を借りた会社に「返して!」と言える権利(これを代位権といいます)が発生します。でも、この条項があると、銀行が「まだダメ」と言っている間は、その権利を使えないんです。なぜかというと、まだ他にも借金が残っている状態で保証人が取り立てを始めると、借りた会社が倒産しちゃう可能性があるからです。
3. 特別条項(事業性債務の場合) 2020年4月から始まった新しいルールです。
個人が会社の借金の保証人になる場合と違って、会社同士の保証でも「事業のための借金」の場合は公正証書が必要になりました。公正証書っていうのは、公証役場で作る特別な書類で、作成には数万円かかります。でも、これがあることで「本当に保証する意思があったんだ」という証明になるんです。
【3】活用アドバイス
この書式を使う際の最大のポイントは、事前の社内調整です。包括保証は将来の債務まで保証対象になるため、取締役会や株主総会での承認が必要になることがほとんどです。
まず、保証を引き受ける前に、相手会社の財務状況を必ずチェックしましょう。決算書を3期分は見て、売上や利益の推移、借入金の残高などを確認します。また、保証限度額を設定できないか銀行と交渉することも大切です。「上限5000万円まで」といった条件を付けられれば、リスクをコントロールできます。
実務的には、この約定書を提出する前に、銀行の担当者と十分に打ち合わせをしておくことをお勧めします。特に代位権の制限条項については、どういう場合に同意してもらえるのか、具体的な基準を聞いておくと後々トラブルを避けられます。
【4】この文書を利用するメリット
最大のメリットは、銀行が求める標準的な条件をすべて満たした書式であることです。金融機関は独自の書式を持っていることが多いですが、この雛型は一般的な銀行が要求する項目を網羅しているため、たたき台として使えば交渉がスムーズに進みます。
また、民法改正に対応した最新の内容になっているので、コンプライアンス面でも安心です。特に事業性債務の公正証書に関する条項は、多くの企業がまだ認識していない新しいルールなので、これを知っているだけでも銀行からの信頼度が上がります。
Word形式で編集可能なため、複数の銀行と取引がある場合でも、基本部分はそのままで、細かい部分だけ調整すれば使い回せるのも大きなメリットです。弁護士に一から作成を依頼すると数万円かかることもありますが、この雛型を使えば大幅にコストを削減できます。
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