〔1〕書式概要
この文書は、会社が会計参与を設置する際に必要となる契約内容を定めた約款のひな型です。会社と会計参与の間で、職務の範囲や責任分担、情報の取り扱い、株主や債権者への開示手続き、さらに辞任・解任に関するルールを明確にするために作成されています。
特に、中小企業や非公開会社において、計算書類の信頼性を高め、金融機関や株主からの信用を確保する場面で活用されます。また、契約期間や報酬に関する取り決めも含まれているため、実務的に利用しやすい内容となっています。
本書式はWord形式で編集可能なので、会社ごとの事情に合わせて修正・追加が容易です。専門的な法律知識や会計知識がなくても理解しやすい表現となっており、安心して活用できるのが特徴です。
〔2〕条文タイトル一覧
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第1条(会計参与設置の基本方針)
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第2条(取締役と会計参与の基本的職務分担)
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第3条(職務実施の基準と手順)
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第4条(会計参与の法定権限の範囲)
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第5条(取締役の協力義務の内容)
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第6条(計算関係書類共同作成の確認手続)
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第7条(取締役による会計処理の適正性確認書面)
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第8条(法令違反等発見時の報告義務)
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第9条(業務上知得情報の取扱規則)
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第10条(補助者使用時の責任体制)
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第11条(取締役会出席義務)
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第12条(株主総会出席義務)
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第13条(会計参与報告書の管理方法)
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第14条(計算書類等の開示手続)
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第15条(報酬額変更の協議手続)
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第16条(臨時決算時の報酬決定方法)
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第17条(反社会的勢力排除の徹底)
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第18条(会計参与からの辞任事由と手続)
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第19条(会計参与の解任事由)
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第20条(辞任・解任発生時の報酬精算)
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第21条(契約終了後の継続適用事項)
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第22条(損害賠償責任の制限)
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第23条(未定事項の協議解決)
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第24条(契約の有効期間)
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第25条(管轄裁判所の合意)
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第26条(契約当事者)
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第27条(報酬の額及び支払方法)
〔逐条解説〕
第1条(会計参与設置の基本方針)
この条文では、取締役と会計参与が互いに信頼し合い、誠実に役割を果たすことが基本方針として掲げられています。実際の現場では、単なる書類上の契約ではなく、双方が協力して財務情報の透明性を守る姿勢が求められます。例えば、資金調達や税務申告の場面で、会計参与と取締役が共同して作業を進めることで、外部の利害関係者に対しても安心感を与える効果があります。
第2条(取締役と会計参与の基本的職務分担)
ここでは、取締役と会計参与の役割分担が明確にされています。取締役は日常的に会計帳簿を整備し、それを会計参与に提出する義務があります。一方で会計参与は、専門的な立場から会計処理をチェックし、計算関係書類を共同で作成する責任を負います。実務的には、経理担当者が準備した資料を会計参与が確認し、必要な修正や指摘を加えるイメージです。この仕組みによって、財務諸表の正確性が担保され、企業の信頼性が向上します。
第3条(職務実施の基準と手順)
会計参与の仕事は、「会計参与の行動指針」に基づいて進められます。これは公認会計士や税理士の団体が定めたルールで、会計参与が業務を遂行する際の道しるべになります。たとえば、会社の基礎資料を確認して帳簿残高との整合性を確かめることが求められます。つまり、単なる数字の確認ではなく、会社の実態と数字が一致しているかを検証する役割があるのです。
第4条(会計参与の法定権限の範囲)
会計参与が持つ権限について定めた条文です。帳簿の閲覧やコピー、取締役や従業員への質問、さらには株主総会で意見を述べる権利などが含まれています。例えば、取締役が作成した資料に疑問がある場合、会計参与はその場で異議を唱え、株主に直接説明することも可能です。これにより、経営陣だけでなく外部のステークホルダーに対しても健全性を保つ仕組みが整えられています。
第5条(取締役の協力義務の内容)
取締役は、会計参与がスムーズに仕事をできるように環境を整える義務があります。具体的には、必要な資料を速やかに提供し、質問には誠実に回答することが求められます。例えば、会計参与が決算作業のために追加資料を求めた際、取締役がこれに応じなければ、決算書の信頼性に影響が出てしまいます。この条文は、会計参与の活動を支えるための基盤を作るものです。
第6条(計算関係書類共同作成の確認手続)
決算書類を取締役と会計参与が共同で作成したことを確認し、署名して合意書を交わす手続きを定めています。これは、後から「誰が責任を持ったのか」という争いを避けるためのものです。実務では、署名入りの合意書を残すことで、金融機関や株主に対しても「この決算は両者が責任を持って確認した」という証明になります。
第7条(取締役による会計処理の適正性確認書面)
取締役が、自らの会計処理が正しく行われたことを文書で表明する制度です。会計参与がチェックを行うにしても、元となる資料が虚偽であれば意味がありません。そのため、取締役が「不正がないこと」を確認することで、会計参与の業務が信頼できるものになります。例えば、売上の数字を実際より多く見せるような行為を防ぐための仕組みでもあります。
第8条(法令違反等発見時の報告義務)
会計参与が不正や法令違反を発見した場合、株主などに報告する義務があると定めています。これは「内部告発」のような役割を制度的に担保したものです。例えば、粉飾決算の兆候を見つけたときに、それを見過ごすのではなく、株主に知らせることで会社全体の透明性を守る効果があります。
第9条(業務上知得情報の取扱規則)
会計参与が業務で知り得た会社の秘密情報を外部に漏らしてはならないことを定めています。守秘義務の徹底です。ただし、裁判や監督官庁からの要請に応じる場合など、正当な理由があれば情報提供が認められています。実際には、経営戦略や顧客情報など、外部に漏れると大きな影響がある情報を扱うため、厳格な取り扱いが必要となります。
第10条(補助者使用時の責任体制)
会計参与が業務を行う際に補助者を使うことができると定めています。ただし、その補助者にも守秘義務を課し、責任は最終的に会計参与自身が負うことになります。実務では、大規模な企業の決算では一人で全てを処理するのは困難なため、スタッフを補助者として利用するケースが多いです。
第11条(取締役会出席義務)
決算書類を承認する取締役会には、会計参与が出席し、必要があれば意見を述べる義務があります。これにより、取締役会での議論に専門的な視点が加わり、誤った判断を防ぐ効果が期待されます。
第12条(株主総会出席義務)
株主総会において、株主から説明を求められた場合には、会計参与が直接答える義務があります。これにより、株主が会社の財務状況について正しい情報を得られる仕組みが整えられています。たとえば、決算の数字に疑問を持った株主が質問した場合、会計参与が説明することで透明性が確保されます。
第13条(会計参与報告書の管理方法)
会計参与が作成した報告書は、会計参与が指定した場所に保管され、株主や債権者から請求があった際に提供されると定めています。つまり、会社に提出する書類ではなく、あくまで外部の利害関係者に対する開示資料としての性格を持ちます。
第14条(計算書類等の開示手続)
決算書類や会計参与報告の開示手続について細かく定めています。株主や債権者が正しく請求できるように資格証明書の確認方法なども規定されており、制度的な透明性を担保しています。たとえば、株券を提示すれば請求できるなど、実務上の手続きが明文化されています。
第15条(報酬額変更の協議手続)
会社の体制が変わり、会計参与の仕事量が大幅に増えた場合には、報酬について協議できるとしています。例えば、会社が急成長して支店が増えた場合、チェックすべき資料も増えるため、報酬を見直す必要が出てきます。
第16条(臨時決算時の報酬決定方法)
通常の決算とは別に臨時の決算を行う場合、追加で報酬を協議して決めることができます。これは、会社の特別な事情に対応するための柔軟な規定です。
第17条(反社会的勢力排除の徹底)
会社や会計参与が暴力団などの反社会的勢力と関わりを持たないことを定めています。実務的には、契約時に相手が適法な存在であることを確認し、違反があれば即時契約解除できる仕組みです。企業の社会的信用を守るために必須の条項です。
第18条(会計参与からの辞任事由と手続)
会計参与が辞任できる場合や手続きを規定しています。たとえば、取締役が協力せず必要な資料を出さない場合や、不正が発覚した場合などに辞任が認められます。これは会計参与の独立性を守るための仕組みです。
第19条(会計参与の解任事由)
会社が会計参与を解任できる場合について定めています。株主総会の決議で解任できますが、反社会的勢力との関与が発覚した場合などは即時解任が可能です。
第20条(辞任・解任発生時の報酬精算)
辞任や解任があった場合に、報酬をどのように精算するかを定めています。会社に責任がある場合は全額支払い、会計参与に責任がある場合は返還するという形です。これにより、トラブル時の金銭面の処理が明確になります。
第21条(契約終了後の継続適用事項)
契約終了後もなお効力を持ち続ける条項について定めています。たとえば守秘義務や損害賠償責任などは、契約が終わっても残るとされています。
第22条(損害賠償責任の制限)
会計参与が職務を怠って損害が生じた場合、原則として賠償責任を負いますが、一定の場合には責任を免除できることが定められています。株主総会の決議などが必要となるため、実務では慎重に扱われる部分です。
第23条(未定事項の協議解決)
契約書に定めがない事項は、当事者が誠意をもって協議し解決することを定めています。契約実務における柔軟性を担保する条項です。
第24条(契約の有効期間)
契約の有効期間や自動延長のルールを定めています。例えば1年間の契約を結んでも、特に異議がなければさらに延長される仕組みです。
第25条(管轄裁判所の合意)
契約に関する紛争が発生した場合、どの裁判所に持ち込むかをあらかじめ定めています。これにより、トラブルが起きたときの解決手続きがスムーズになります。
第26条(契約当事者)
契約の当事者を明記する条項です。会社名や代表取締役、会計参与の氏名や住所などを記載することで、契約の当事者を明確にします。
第27条(報酬の額及び支払方法)
会計参与の報酬額や支払方法を規定しています。実務では、報酬を分割払いにするか、一括払いにするかをここで定めます。金銭トラブルを避けるための重要な条項です。
〔4〕活用アドバイス
この文書は、会社法に基づいて会計参与を設置する会社にとって、契約内容を整備するための標準的なひな型として活用できます。利用する際には、自社の業務規模や組織体制に合わせて条項を調整することが重要です。
特に、報酬額や支払方法、契約期間は会社ごとに異なるため、実情に即した修正を行うと良いでしょう。さらに、弁護士や税理士などの専門家に確認してもらうことで、より安心して利用できます。
〔5〕この文書を利用するメリット
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会計参与制度に必要な取り決めを網羅しており、実務でそのまま利用できる
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Word形式で編集可能なので、会社の実情に合わせて簡単にカスタマイズ可能
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契約内容が明文化されることで、取締役と会計参与の間での誤解やトラブルを防止できる
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銀行や投資家に対して透明性を示すことで、会社の信用力を高められる
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