与信管理規程

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与信管理規程

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 【1】書式概要

 

この書式は、企業が取引先との商取引を行う際に、焦げ付きのリスクを軽減し、安全に信用を供与するための基本ルールを定めたものです。簡単に言えば、「この取引先には最大いくらまで商品を掛けで渡していいのか」「そこまでに至るまでどんな手続きを踏むのか」を明確にするための書類です。

 

多くの企業では、取引先の経営状況に目を向けず、営業優先で無制限に売上を立てていることがあります。その結果、倒産した取引先へ高額な売掛金が残るという悲劇が起きています。この規程を導入することで、そうした事態を事前に防ぎ、経営を守ることができます。

 

売上を立てる営業部門、その売上を回収する事務部門、そして企業全体のリスクを見守る経営層まで、全員が同じルールに基づいて行動できるようになります。新規取引先の審査から、既存取引先の定期的な見直し、そして日々の債権残高チェックといった一連のプロセスを、この規程に沿って実行することで、組織としての統一性が生まれます。

 

実際の使用場面としては、新規取引先が営業部門から提案されたとき、継続取引の契約更新時期が到来したとき、取引先から大型の発注が入ったときなど、信用判断が必要なあらゆる場面で活用されます。本書式はWord形式で提供されており、企業の実情に合わせて自由に編集・カスタマイズが可能です。金額や部署名、承認者の名前など、組織固有の内容に置き換えることで、すぐに自社のルールとして機能します。与信管理に関する知識がない方でも、テンプレートの構造を理解することで、段階的に社内ルールを構築できるよう設計されています。

 

 

 

 

【2】条文一覧

 

第1条(目的)
第2条(疑義の発生)
第3条(与信限度額)
第4条(有効期限)
第5条(申請)
第6条(承認)
第7条(決裁)
第8条(与信限度額の遵守)
第9条(連絡)
第10条(所管および改廃)

 

 

 

 

【3】逐条解説

 


第1条(目的)

この規程が何のために存在するのかを明記した条文です。取引先に対して信用を供与する際に、企業が遵守すべき基準と手続きを統一することが目的です。これにより、営業部門が独断で取引先を増やすことを防ぎ、一定の安全基準を満たした企業としか取引をしないようにします。例えば、経営状況が不透明な小規模企業や、過去に支払い遅延があった企業に対しては、慎重な審査を経てから取引を開始することになります。新規営業が「今月中に何としても契約を取りたい」と焦って判断基準を無視することを防ぐ効果もあります。

 


第2条(疑義の発生)

規程を運用していると、「この場合はどう対応すればいいのか」という曖昧なケースが生じることがあります。そうした判断に迷う場面では、社長が最終的な判断を下すということを定めています。これにより、現場での判断バラつきを防ぎ、企業としての統一的な方針を保つことができます。例えば、与信限度額ぎりぎりの取引先が新しい商品の発注をしてきた場合、通常のルールでは認められませんが、社長判断で特例的に認めるといったケースが考えられます。定めのない状況では、各部門が独自の判断をして矛盾が生じるリスクを、このルールで防ぐわけです。

 


第3条(与信限度額)

与信限度額とは、各取引先に対して企業が貸し出せる信用の最大額のことです。この金額を超えて商品を掛けで渡してはならず、必ずこの枠内に収まるよう管理します。例えば、Aさんという商人の与信限度額が500万円と定められていれば、その時点での売掛金が450万円あれば、残り50万円分までしか新たに掛けで売却できないということです。取引形態によって限度額は異なります。通常の継続的な取引と、一度だけの臨時的な取引では、設定する金額や条件が変わる可能性があります。建設業者への前払い金、小売店への販売、製造業者への長期納入といったように、相手の業種や取引の性質に応じて柔軟に対応できるよう、この規程では複数の取引形態を想定しています。

 


第4条(有効期限)

与信限度額には有効期限があります。継続取引を想定した限度額は原則として1年間有効で、その後は改めて見直すということです。なぜなら、1年間で取引先の経営状況や業績が大きく変わる可能性があるからです。例えば、登録時には優良企業だった取引先でも、1年後には経営が傾いているかもしれません。だからこそ、定期的に見直しの手続きを経る仕組みになっているのです。もし与信限度額の有効期限が切れたまま商品を供与し続けた場合、未承認の信用供与となり、企業のリスク管理に穴が生じてしまいます。また、この条文では、取引先の信用状況が悪化した場合は、有効期限前であっても限度額を見直すことができると定めています。これは経営を守るための重要な逃げ道です。例えば、取引先が銀行から借入の返済不能を宣告されたなら、有効期限を待たず即座に与信限度を引き下げることができるのです。

 


第5条(申請)

新しく取引先と付き合い始めるには、営業部門が主導して与信限度の登録手続きを行わなければなりません。申請が完了し、きちんと承認されるまでは、まだ正式な信用供与を行ってはいけないというルールです。これは企業を守るための重要な仕組みで、審査を経ずに取引を始めてしまうと、不健全な企業への過度な貸付けに繋がるリスクがあります。継続取引の場合、1年ごとの更新が必要です。更新申請には時間がかかることもあるため、有効期限が切れる前に、余裕を持って手続きを開始することが求められます。例えば有効期限が3月末なら、1月中には更新申請を提出しておくといった具合です。更新申請が遅れて有効期限切れのまま取引を続けてしまうことは、コンプライアンス上の問題にもなりかねません。

 


第6条(承認)

営業部門からの申請に基づいて、与信限度額の新規設定や増額を行う前に、その取引先が本当に信用できるか、きちんと調べるということです。具体的には、取引先の財務状況、過去の支払い実績、他の企業との取引状況などを調査し、承認権を持つ者が判断します。この段階では、営業部門が希望した金額が適切かどうか、第三者的視点からチェックされます。例えば、ある企業の年間売上が5000万円なのに、与信限度額を3000万円設定してほしいという申請があったとすれば、それは売上の60%を占める過度な与信となるため、調査の結果として限度額を減額する判断が下されるかもしれません。この承認プロセスを経ることで、営業部門の楽観的な判断だけで与信が行われることを防げるのです。

 


第7条(決裁)

与信額の決裁という最終的な承認を行う権限者を定めたものです。与信限度額の大きさに応じて、事業部長、社長、取締役会といったように決裁権が分かれます。これにより、小さな金額は現場管理者がすぐに判断でき、大きな金額は上層部が慎重に検討することになります。組織の効率性と安全性のバランスを取った仕組みになっています。例えば、500万円未満の与信限度は事業部長が決裁でき、1000万円以上になると社長や取締役会が決裁するといった具合です。

 


第8条(与信限度額の遵守)

与信限度額を決めたら、その後は実際の運用段階に入ります。営業部門は、各取引先に対する売掛金がいま幾ら残っているのか、常に把握しておかなければなりません。限度額を超えた状態で商品を供与することは、規程違反になります。例えば、与信限度額が1000万円なのに、すでに1200万円の売掛金が発生していれば、新たな商品供与はできません。回収を優先し、残高を限度額以下に戻してから、新しい受注に応じるという流れになります。この条文がなければ、与信限度額はただの飾りになり、実質的な意味を失ってしまいます。

 


第9条(連絡)

営業部門は月に一度、総務部長に各取引先の与信限度額と現在の債権残高を報告することが定められています。これにより、経営層は常に企業全体の与信状況を把握できます。例えば、月間レポートを見ると、A取引先への債権が600万円に膨らんでいることに気づき、その理由を調査するといったことが可能になります。また、複数の部門が同じ取引先と取引している場合、この報告制度によって、意図せず限度額を超過していないかチェックすることもできます。情報の透明性と一元管理が、企業全体のリスク軽減に繋がるのです。

 

 


第10条(所管および改廃)

この規程は事業本部が管理し、改廃は取締役会で決定するということです。つまり、営業部門や総務部門の独断で、このルールを変えることはできません。重要な方針は経営層の判断を経るという、企業統治の基本原則が示されています。もし取引先の支払い条件が業界全体で変わった場合や、新しい金融商品に対応する必要が生じた場合、ルール自体を見直すこともあるでしょう。しかしそうした変更は、全社的な影響を踏まえて慎重に進める必要があるため、取締役会を通すという仕組みになっているのです。

 

 

 

 

【4】FAQ

 

Q1. この規程を導入するのに、特別な専門知識が必要ですか?

A. いいえ、不要です。この書式はビジネス文書の基本構造に従っており、金融知識や会計知識がなくても理解できるように作られています。企業の実情に合わせて、金額や部署名を置き換えるだけで機能します。不明な部分については、顧問税理士や中小企業診断士に相談することもできます。

 


Q2. すでに取引している先との与信限度をいきなり設定してもいいですか?

A. 本来は、新規取引開始前に与信限度を設定し、承認を得るのが正しい流れです。しかし実務的には、既に取引がある場合は過去の実績をベースに遡及適用することになります。この場合、過去の売掛金実績がその取引先の実力を示す参考値となります。ただし、有効期限の設定からはここからの新規取引に対して厳密に運用することが重要です。

 


Q3. 与信限度額はどのように決めればいいですか?

A. 一般的には、取引先の年間売上、財務体質、業界内での評判、過去の支払い実績などを総合的に判断して決めます。目安としては、取引先の月間売上の3~6カ月分程度とする企業が多いです。銀行の信用格付けや商工会議所の情報なども参考になります。業界慣行も考慮してください。

 


Q4. 与信限度額を超えてしまいました。すぐに返却してもらう必要がありますか?

A. 一度超えた状態になってしまったら、新たな商品供与を停止し、既存債権の回収を優先させます。急に全量返却を要求すると、取引先の経営を圧迫し、結果として回収がより困難になる可能性もあります。状況に応じて、返却スケジュールを協議することになります。

 


Q5. 取引先の信用状況が悪化したらどうしますか?

A. 第4条に「有効期限前であっても与信限度額を見直すことができる」と定められています。支払い遅延が増えたり、業績が悪化したという情報を得たら、限度額を引き下げるか、最悪の場合は新規取引を中止します。これ以上の貸付けが損失拡大を招くことを防ぐためです。

 


Q6. 社長判断で限度額を超えて取引することはできますか?

A. 第2条で「疑義の発生時は社長裁定による」と定められているため、社長判断で特例的に認めることは可能です。しかし、これは例外的な措置です。頻繁に超過する状況は、そもそも限度額の設定が不適切だということ。定期的に見直す必要があります。

 


Q7. 臨時取引と継続取引の区別は誰が判断しますか?

A. 最初の申請段階で、営業部門が提案し、承認者が判断します。一度限定的な供給で終わる予定なら臨時取引、今後継続的に取引する予定なら継続取引となります。その後、取引が継続したら記録を更新します。

 


Q8. 複数の部門が同じ取引先と取引している場合、与信限度額はどうなりますか?

A. 与信限度額は取引先ごと、かつ企業全体で統一されるべきです。複数部門からの売掛金を合算しても、その取引先に対する総与信限度を超えてはなりません。そのため、月次報告(第9条)で全部門の債権残高を統括する仕組みが重要なのです。

 


Q9. 決裁権者が不在の場合、申請はどうなりますか?

A. 決裁権者が不在であれば、その期間は申請手続きが保留されます。代理決裁の仕組みを別途定めることも方法です。ただし、新規契約を急ぐあまり、決裁を飛ばしたり、権限以下の者が決裁することは避けなければなりません。

 


Q10. この規程を従業員全員に周知する必要がありますか?

A. はい、重要です。特に営業部門と事務部門には、このルールが何のために存在し、どういった場面で適用されるのかを理解させておくことが重要です。定期的な研修や社内通知を通じて、ルールの浸透を図ってください。

 

 

 

 

【5】活用アドバイス

 

この書式を最大限に活用するには、単にファイルをしまい込むのではなく、組織全体の運用ルールとして機能させることが重要です。

 

【実装のステップ】

まず、経営層が規程の重要性を理解し、導入の決定を行うことが第一歩です。その後、営業部門、事務部門、総務部門の担当者を集めて、ルール説明会を開いてください。ここで誰が何をするのか、各部門の責務を明確にします。特に営業部門は「売上をとりあえず立てる」のではなく「審査を通った取引先からのみ売上を立てる」という意識改革が必要です。

 

次に、現在取引している全ての先に対して、過去実績をベースに遡及的に与信限度を設定します。この作業は手間がかかりますが、ここで一度整理しておくと、その後の運用がぐっと楽になります。金融機関の信用格付けや商工会議所の情報を活用してください。

 

実装の際には、別表の決裁者一覧を自社の組織構造に合わせて修正することが重要です。金額の基準や決裁権者は、企業規模に応じて調整が必要です。小規模企業なら社長一人が全て決裁するかもしれませんし、大企業なら複数レベルの決裁ラインが必要かもしれません。

 

【運用のコツ】

月次報告(第9条)を習慣づけることが、この仕組みを活かすカギです。単に数字を報告するのではなく、そこから「あの取引先の残高が増えている」「新規の大型案件が入っている」といった情報を読み取り、必要に応じて対応する癖をつけてください。

 

回収遅延が出た場合は、即座に情報を共有してください。延滞が3カ月続けば、与信限度の引き下げを検討する段階です。「今月は忙しいから放っておこう」という甘い判断が、やがて焦げ付き債権に変わります。

 

新規取引先の審査では、複数の情報源を活用してください。決算書だけでなく、業界内での評判、商工会議所の信用情報、銀行の反応など、多角的に調査することで、より正確な判断ができます。

 

定期的(例:半年ごと)に、全ての取引先に対する与信限度の妥当性を見直してください。ビジネス環境は変わり、取引先の経営状況も変わります。時代に合わせたルール運用が重要です。

 

【トラブル防止のポイント】

与信管理は地味な業務ですが、企業の経営を守る最後の砦です。営業部門から「この案件は特例で通してほしい」という要望が来ても、むやみに例外を認めないことが大切です。例外が増えれば、ルール自体の価値が失われます。

 

ただし、完璧さを求めすぎて、ビジネスチャンスを逃すのも本末転倒です。与信限度を厳格に守りながらも、成長の機会は逃さないバランス感覚を持つことが、経営判断として求められます。

 

もし重大な問題が生じた場合(例えば、与信限度を大幅に超過したまま取引が続いていた場合)は、その原因を徹底的に調査し、ルール運用のどこに穴があったのかを検証してください。そこから得られた教訓を、次の改善に活かすことが重要です。

 

 

 

 

 

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