【1】書式概要
この書式は、不動産の購入を希望する方が売主に対して「この物件を買いたい」という意思を正式に伝えるための証明書です。一般的に「買付証明書」や「購入申込書」と呼ばれるもので、物件を気に入って購入したいと思った時に、まず最初に提出する大切な書類になります。
実際の使用場面としては、気に入った物件が見つかり、不動産会社を通じて購入の意思を示す際に利用します。特に人気のある物件では複数の購入希望者が現れることも珍しくありません。そんな時、この証明書を提出することで「私が本気で買いたいと思っています」という姿勢を売主に示し、優先的に交渉できる立場を確保することができます。
この書式には購入希望価格や支払い方法、物件の詳細情報などを記載します。また、銀行でローンの手続きを進めていることや、ローンが承認されるまでは他の人に売らないでほしいという約束事も盛り込まれています。さらに、もし約束を破った場合には違約金が発生するという取り決めも含まれており、お互いに真剣な取引であることを確認し合う役割も果たしています。
Word形式で提供していますので、パソコンで簡単に編集できます。物件の住所や金額、面積などの具体的な数字を入力するだけで、すぐにでも使える実用的な書式となっています。不動産取引の第一歩として、ぜひご活用ください。
【2】解説
日付と宛先
令和●●年●月●日
証明書を提出する日付を記入します。この日付は取引の記録として重要になりますので、実際に提出する日を正確に書いてください。宛先には売主の会社名や個人名を記載します。
買主情報
住所・氏名の記載
購入を希望する方(買主)の住所と氏名を記入する欄です。法人で購入する場合は会社の所在地と会社名、代表者名を記載します。この情報は売主があなたを特定し、後日正式な契約を結ぶ際の基礎情報となります。
本文(取引条件の確認)
ローン申請と物件の取り置き
この部分が証明書の核心部分です。「銀行にローンの申請書類を提出しました」という事実を伝え、「ローンの承認が下りるまで他の人に売らないでください、その代わりローンが通ったら必ず買います」という双方の約束を文書化しています。実際の不動産取引では、購入希望者がいてもローンが通らなければ取引が成立しないため、この「審査中の待機期間」をどう扱うかが重要なポイントになります。
例えば、売主としては「せっかく他の購入希望者を断ったのに、結局ローンが通らなくて買えませんでした」となると時間と機会を失うことになります。逆に買主としては「ローン審査中に他の人に売られてしまった」となれば困ります。この条項はそうした双方の不安を解消するためのものです。
違約金条項
約束を破った場合のペナルティ
もし売主が約束を破って他の人に売ってしまったり、買主がローンが通ったのに「やっぱり買いません」と言った場合、売買金額の1割に相当する金額を違約金として支払うという取り決めです。この書式では売買代金7,500万円となっていますので、違約金は750万円ということになります。
この金額設定は取引の重みを示すものであり、軽い気持ちで約束を破ることへの抑止力となります。実際の不動産市場では、この違約金条項があることで取引の信頼性が大きく高まります。
詳細条件の協議
記載のない事項について
すべての条件を最初から細かく決めるのは難しいため、「この証明書に書いていない細かい条件は、後日話し合って決めましょう」という柔軟性を持たせています。例えば、引き渡しの具体的な日時や、固定資産税の精算方法、設備の撤去費用の負担など、実務的な細部は追って決めていくことになります。
有効期限
証明書の期限設定
この買付証明書がいつまで有効なのかを明記します。不動産取引では時間が経過すると状況が変わることも多いため、期限を設けることで取引のスピード感を維持します。期限を過ぎれば自動的に無効になるため、売主は再び他の購入希望者を探すことができ、買主も他の物件を検討する自由が生まれます。
売買代金
1. 売買代金 金 七千五百万円
物件の購入希望価格を記載します。この金額は交渉の出発点となり、最終的な売買契約では多少変動する可能性もありますが、基本的にはこの金額での購入を希望するという意思表示になります。漢数字と算用数字の両方で記載することで、金額の誤読を防いでいます。
支払方法
2. 売買代金の支払方法
「別途協議にて決定する」としています。一般的には、契約時に手付金(売買代金の10%程度)を支払い、残りは引き渡し時に支払うという流れになりますが、詳細なスケジュールやローンの実行時期などは、後日具体的に決めていくことになります。
土地面積の確定方法
3. 土地面積の確定は、公簿売買とし土地測量図に従い売買する
これは不動産取引で非常に重要なポイントです。「公簿売買」とは、登記簿に記載されている面積で取引するという意味です。実際に測量してみると登記簿の面積と若干異なることもありますが、公簿売買の場合は測量による面積の差があっても売買代金は変更しないという取り決めです。
例えば、登記簿では141.91㎡となっているけれど、実測したら142.50㎡だった場合でも、売買代金は141.91㎡を基準にした7,500万円のままということです。これにより測量の手間とコストを省き、スムーズに取引を進めることができます。
建物面積の確定
4. 建物面積の確定は後記面積とする
建物については物件目録に記載されている面積(合計308.88㎡)で確定するという意味です。建物も実測すれば多少の誤差が出る可能性がありますが、登記簿に記載されている面積を基準とすることで、取引を簡潔にしています。
建物の解体
5. 建物は売買契約と同時に解体し、滅失登記の申請予定とする
この条項は本件取引の特徴的な部分です。現在建っている建物(鉄骨造3階建ての作業所兼事務所)は契約後に解体され、建物の登記も抹消する予定であることを示しています。つまり、買主は建物には価値を見出しておらず、実質的には「土地だけ」を購入したいという意図が読み取れます。
実際の不動産市場では、古い建物が建っている土地を購入する場合、建物を解体して新しく建て直すケースは珍しくありません。この条項により、解体についての方針を明確にし、後々のトラブルを防いでいます。
物件目録
土地・建物の詳細情報
購入対象となる不動産の詳細を正確に記載する部分です。所在地、地番、地目(この場合は宅地)、所有権の形態、面積などが記されています。土地面積は141.91㎡(約42.9坪)で、建物は3階建てで合計308.88㎡(約93.4坪)となっています。
この情報は登記簿に記載されている内容と一致させる必要があり、間違いがあると後々大きな問題になる可能性があります。特に地番は住所とは異なる場合が多いので、登記簿謄本をしっかり確認して正確に記載することが大切です。
【3】活用アドバイス
この書式を使う際は、まず物件の登記簿謄本を取得して、所在地や地番、面積などの情報を正確に転記することから始めましょう。特に地番は住所と異なることが多いので、登記簿をそのまま見ながら入力することをお勧めします。
売買代金については、相場をよく調べた上で記載してください。不動産会社に相談すれば、周辺の取引事例や適正価格についてアドバイスをもらえます。最初から高すぎる金額を提示すると売主に真剣さが伝わりませんし、逆に安すぎると交渉のテーブルにすら着けないこともあります。
有効期限は通常1週間から2週間程度に設定することが多いです。ローンの事前審査にかかる時間を考慮して、現実的な期限を設定しましょう。あまり長すぎると売主が待ちきれなくなりますし、短すぎるとローン審査が間に合わない可能性があります。
また、この証明書を提出する前に、必ず金融機関でローンの事前審査を受けておくことをお勧めします。事前審査を通過していれば、売主も安心して物件を取り置きしてくれる可能性が高まります。
実際に記入する際は、●印の部分をすべて具体的な情報に置き換えてください。会社名、住所、氏名、日付、金額など、すべて正確に記入することが重要です。不明な点があれば、不動産会社や専門家に確認しながら進めると安心です。
【4】この文書を利用するメリット
まず第一に、口頭での約束だけでなく書面で購入意思を示すことで、売主に対する信頼性が格段に高まります。人気のある物件では複数の購入希望者が現れることも珍しくありませんが、この証明書を提出することで「本気で買いたい」という姿勢が伝わり、優先的に交渉できる立場を確保できます。
第二に、違約金条項が設けられていることで、双方が簡単に約束を破れない仕組みになっています。これにより、売主は安心して物件を取り置きでき、買主もローン審査中に他の人に売られてしまう心配が減ります。お互いに真剣な取引であることを確認し合えるのは大きな安心材料です。
第三に、取引条件が明文化されることで、後々のトラブルを防ぐことができます。「言った、言わない」の水掛け論を避け、証拠として残る形で合意内容を記録できます。特に不動産のような高額な取引では、この点が非常に重要になります。
第四に、Word形式で編集可能なため、何度でも使い回すことができます。一度使い方を覚えれば、次回以降は物件情報を入れ替えるだけで素早く作成できるようになります。複数の物件を検討している投資家の方にとっては、時間の節約にもなります。
最後に、この書式があることで取引全体の流れがスムーズになります。売主も買主も、次に何をすべきかが明確になり、ローン審査や契約準備といった次のステップに迷わず進めます。不動産取引の第一歩を確実に踏み出すための、心強い味方となってくれるはずです。
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