【1】書式概要
この文書は、化粧品やスキンケア製品などの美容製品を使った後にアレルギー症状が出てしまったとき、被害を受けた消費者と製品を作った会社との間で賠償の話し合いをまとめるための雛形です。製品を使って肌に発疹が出たり、かゆみや腫れといった症状が現れてしまった場合、治療費や仕事を休んだ分の補償、精神的な苦痛に対する慰謝料などをどう支払うのか、今後同じようなトラブルが起きないために会社側がどんな対策をとるのかといった内容を、きちんと文書に残しておくためのものです。
実際の使用場面としては、消費者側からすれば製品による健康被害を受けた際に適正な補償を受けるため、企業側からすれば誠実に対応して紛争を早期に解決し、ブランドイメージを守るために活用できます。化粧品メーカーや販売店、エステサロンなど美容関連のビジネスを運営している方にとって、万が一のトラブル対応の備えとして手元に置いておきたい書式です。Word形式で提供されているため、具体的な金額や日付、会社名、症状の内容などを自由に編集でき、それぞれの状況に合わせてすぐに使うことができます。
【2】逐条解説
第1条(目的)
この条文は、示談書全体が何を目指しているのかを明らかにしています。つまり、製品を使ったことで起きたアレルギー症状について、お互いが争い続けるのではなく、話し合いで円満に解決しましょうという趣旨を確認するものです。例えば新しいファンデーションを使い始めて顔に赤みが出てしまったとき、裁判で長々と争うよりも、お互いが納得できる形で早く解決したいという双方の意思を示しています。
第2条(事実の確認)
ここでは、いつどこで製品を買って使い始めたのか、どんな症状がいつ頃から出たのか、医師の診断はどうだったのか、何日間通院したのか、仕事を何日休んだのかといった具体的な経緯を記録します。例えば「○月○日に駅前のドラッグストアで購入し、翌日から使い始めたところ、3日後に顔全体に発疹とかゆみが出て、皮膚科で○○成分によるアレルギーと診断された」といった事実関係を明確にしておくことで、後から「言った言わない」のトラブルを防ぎます。
第3条(因果関係の確認)
この条項は非常に重要で、会社側が「うちの製品を使ったことで症状が出たこと」を認めるという内容です。さらに、製品のパッケージや説明書に十分な注意書きがなかったことも認めています。例えば、特定の植物エキスがアレルギーを引き起こす可能性があるのに、その警告が小さな文字で書かれていただけだったり、まったく記載がなかったりした場合、会社側の責任を明確にするわけです。
第4条(損害賠償金)
実際にいくら支払うのかを決める条文です。治療にかかった費用、病院への交通費、仕事を休んだことによる収入の減少、精神的なつらさに対する慰謝料、その他の関連費用を項目ごとに分けて記載します。例えば、皮膚科に5回通院して治療費が合計3万円、電車代が往復で5,000円、1週間仕事を休んで収入が10万円減った、精神的苦痛に対して20万円、といった具合に内訳を明らかにすることで透明性が保たれます。
第5条(支払方法)
お金をいつまでにどうやって支払うのかを定めています。振込先の銀行口座を具体的に記載し、振込手数料は会社側が負担すること、もし期日までに支払われなかった場合は遅延損害金が発生することなども明記します。例えば「○月末日までに指定口座に振り込む。もし遅れたら年10%の遅延損害金を加算する」といった形で、支払いの確実性を担保します。
第6条(製品の回収及び対応)
単にお金を払って終わりではなく、今後の対応についても約束する条文です。パッケージに警告表示を追加する、ウェブサイトで注意喚起をする、同じような被害を受けた他の消費者にも適切に対応するといった内容を盛り込みます。例えば「今後販売する製品には『○○成分にアレルギーのある方はご使用をお控えください』と目立つ位置に記載する」といった具体的な改善策を約束し、その実施状況を報告することまで定めています。
第7条(医療記録の提出)
被害者側が、実際に病院で診断を受けた証拠となる診断書や領収書などを会社側に提出することを定めています。これにより、損害賠償の根拠が明確になります。例えば、○○クリニックの診断書、通院5回分の領収書、処方された薬のレシート、検査結果のコピーなどを提出することで、実際にどれだけの費用がかかったのかを証明します。
第8条(再発防止策)
会社側が今後同じようなトラブルを起こさないために何をするのかを約束する条文です。成分表示をもっと分かりやすくする、社員に対してアレルギー物質についての研修を行う、製品の安全管理体制を見直すといった対策を明記します。例えば「全社員を対象に年2回のアレルギー研修を実施する」「新製品発売前に必ず外部の専門機関でパッチテストを行う」といった具体的な取り組みを約束し、その実施状況も報告することになります。
第9条(秘密保持)
この示談の内容や関連する情報を、お互いに勝手に外部へ漏らさないという約束です。ただし、法律で開示が義務付けられている場合や、裁判所から命令された場合、弁護士などの専門家に相談する場合は例外として認められます。例えば、SNSで「○○社から○○円もらった」と投稿したり、記者会見を開いたりすることは原則として禁止されますが、警察や消費者庁から求められた場合は情報提供できるという内容です。
第10条(解決条項)
会社側が約束したことを全部実行したら、被害者側はもうこれ以上請求しませんという確認をする条文です。例えば、賠償金が支払われ、再発防止策も実施されたら、「もう一度慰謝料を請求する」といったことはできなくなります。これにより、双方が安心して先に進むことができます。
第11条(合意解除)
一度結んだ示談を勝手に取り消したり変更したりできないという条文です。もし変更する必要がある場合は、双方が書面で合意しなければなりません。例えば、後になって「やっぱり金額を増やしてほしい」と一方的に言うことはできず、お互いが納得して書面にサインしない限り内容は変わりません。
第12条(準拠法及び管轄)
この示談書は日本の法律に基づいて解釈され、もし争いになった場合はどこの裁判所で裁判をするのかを決めておく条文です。例えば、被害者が東京、会社が大阪にある場合、事前にどちらの裁判所で争うのかを決めておくことで、後々の混乱を避けられます。
第13条(協議事項)
この示談書に書かれていないことが起きたり、解釈について意見が分かれたりした場合は、お互いに誠意を持って話し合って解決しましょうという条文です。例えば、予想外の後遺症が出てきた場合なども、すぐに裁判にするのではなく、まずは話し合いで解決を試みることを約束しています。
【3】活用アドバイス
この文書を使う際は、まず被害の状況を正確に記録することから始めましょう。写真を撮っておく、症状が出た日をカレンダーに記録する、診断書や領収書を必ず保管しておくといった準備が大切です。会社側と話し合う前に、自分が受けた損害を項目ごとに整理しておくと、交渉がスムーズに進みます。
金額を決める際は、目に見える費用だけでなく、精神的な苦痛や今後の不安といった部分についても適正な評価を求めることが重要です。特に顔など目立つ部分に症状が出た場合、外出を控えざるを得なかったり、人前に出る仕事に支障が出たりすることもあるため、そうした事情もきちんと伝えましょう。
また、お金の支払いだけで終わらせず、再発防止策や今後の対応についても必ず盛り込んでください。同じような被害を受ける人を減らすためにも、会社側がきちんと改善に取り組むことを約束させることが、社会的にも意義のあることです。
示談書に署名する前には、できれば消費者問題に詳しい専門家や弁護士に一度目を通してもらうことをお勧めします。一度署名してしまうと後から変更するのは難しいため、内容に納得してから最終合意に進むことが大切です。
【4】この文書を利用するメリット
この文書を使う最大のメリットは、トラブルが起きたときに「どう対応すればいいのか」という道筋が明確になることです。特に初めて製品トラブルに直面する企業にとって、何を確認し、どんな項目について合意すべきかが一目で分かる構成になっているため、対応漏れを防げます。
消費者側にとっても、単に「謝罪してもらって終わり」ではなく、治療費や休業損害、慰謝料といった具体的な補償を文書で約束してもらえるため、泣き寝入りせずに済みます。口約束だけでは後から「そんなこと言っていない」と言われるリスクがありますが、書面に残すことで確実に権利を守れます。
また、再発防止策まで盛り込むことで、同じような被害者を減らすことにもつながります。企業側も真摯に対応することでブランドイメージを守ることができ、長期的には信頼回復にもつながります。
Word形式で編集できるため、それぞれの状況に合わせて柔軟にカスタマイズできる点も便利です。症状の種類や損害の内容、金額などを自由に変更でき、専門的な知識がなくても使いやすい設計になっています。
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