【1】書式概要
この契約書は、会社の取締役が辞任する際に発生しがちなトラブルを円滑に解決するための示談書テンプレートです。特に、取締役が在任中に競合会社の設立準備や顧客情報の持ち出し、従業員の引き抜きなどを行っていた場合の損害賠償や今後の関係について取り決めを行う場面で活用されます。
近年、経営陣の交代や独立開業に伴うトラブルが増加している中で、企業にとって重要な営業秘密や顧客基盤を守りながら、スムーズな問題解決を図ることは経営上の重要課題となっています。この文書は、そうした複雑な状況を整理し、双方が納得できる解決策を文書化するためのひな形として設計されています。
Word形式で提供されているため、自社の状況に合わせて金額や期間、具体的な業務内容などを簡単に編集・カスタマイズできます。専門用語についても平易な表現を心がけており、経営者の方が直接活用していただけるよう配慮されています。契約締結前の交渉材料としても、また実際の合意書作成時にも幅広くご利用いただけます。
【2】条文タイトル
第1条(目的) 第2条(当事者の確認) 第3条(事実関係の確認) 第4条(損害賠償金の支払義務) 第5条(支払方法) 第6条(分割払いの特約) 第7条(会社情報の返還) 第8条(秘密保持義務) 第9条(競業避止義務) 第10条(営業秘密保護義務) 第11条(引抜禁止義務) 第12条(表明保証) 第13条(権利放棄) 第14条(株式の取扱い) 第15条(反社会的勢力の排除) 第16条(合意の完全性) 第17条(分離可能性) 第18条(通知) 第19条(準拠法及び管轄) 第20条(誠実協力)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条文では、なぜこの合意書を作成するのかという根本的な目的を明確にしています。単なる退職処理ではなく、競業準備行為という特殊な問題を解決するための文書であることを宣言する重要な条項です。
第2条(当事者の確認)
合意の当事者である会社と元取締役の基本情報を整理する条文です。会社の事業内容や取締役の在任期間、辞任日などの基礎的な事実関係を記録することで、後々の争いを防ぐ役割があります。
第3条(事実関係の確認)
最も重要な条文の一つで、問題となった行為の具体的な内容を記載します。たとえば「顧客リストを持ち出して競合会社設立の準備をしていた」といった事実を双方が確認し、法的な評価についても触れています。完全に認めるのではなく「争う余地があるが和解する」という表現で、双方の面子を保つ工夫がされています。
第4条(損害賠償金の支払義務)
具体的な賠償金額を定める条文です。金額には得た利益の返還と会社が被った損害の両方が含まれることを明記し、弁護士費用なども含む包括的な解決を図っています。
第5条(支払方法)
賠償金の具体的な支払い方法を定めています。振込先口座の指定や振込手数料の負担、さらに支払いが遅れた場合の遅延損害金(年14.6%)まで詳細に規定されています。
第6条(分割払いの特約)
一括払いが困難な場合の救済措置として分割払いを認める条文です。ただし、1回でも支払いを怠れば残額を一括で支払わなければならないという厳格な条件が付いています。
第7条(会社情報の返還)
会社の重要な情報を確実に回収するための条文です。物理的な書類だけでなく、パソコンやスマートフォンに保存された電子データも対象とし、破棄した場合は報告書の提出を求めるなど、抜け道を防ぐ仕組みになっています。
第8条(秘密保持義務)
この合意書の内容や一連の問題について、第三者に口外することを禁じる条文です。企業の信用を守るとともに、当事者のプライバシーも保護します。違反した場合は高額な違約金が発生する仕組みです。
第9条(競業避止義務)
元取締役が今後一定期間、同じような事業を行うことを禁止する条文です。直接の競合だけでなく、競合企業で働くことも禁止し、違反すれば違約金と損害賠償の両方を請求できる強力な条項となっています。
第10条(営業秘密保護義務)
会社の重要な秘密情報を永続的に保護するための条文です。顧客情報や技術情報など、会社の競争力の源泉となる情報の漏洩を防ぐため、期間の制限なく義務が続きます。
第11条(引抜禁止義務)
元取締役が会社の従業員や取引先を引き抜くことを防ぐ条文です。人材流出や取引先の離反は会社にとって大きな損失となるため、一定期間この行為を禁止しています。
第12条(表明保証)
元取締役が約束する事項を明確にした条文です。情報の完全な返還や第三者への未開示、利益の全面開示などを保証させ、嘘があった場合は合意を解除できる強力な条項です。
第13条(権利放棄)
この合意により、双方が今回の問題についてこれ以上争わないことを約束する条文です。会社は約束が守られる限り追加請求をせず、元取締役も会社への請求権を放棄することで、完全な解決を図ります。
第14条(株式の取扱い)
元取締役が会社の株主でもある場合の株式処理を定める条文です。関係を完全に清算するため、保有株式の譲渡を義務付け、価格決定の方法も明確にしています。
第15条(反社会的勢力の排除)
昨今のコンプライアンス要請に応える条文で、当事者が反社会的勢力と関係がないことを相互に保証します。関係が判明した場合は即座に合意を解除できる仕組みです。
第16条(合意の完全性)
この文書がすべての約束事を含んだ完全な合意であることを確認し、後から「別の約束があった」といった主張を防ぐ条文です。変更は必ず書面で行うことも定めています。
第17条(分離可能性)
万が一、一部の条項が無効と判断されても、他の条項は有効に存続することを定める条文です。契約全体が無効になることを防ぎ、可能な限り合意を維持する仕組みです。
第18条(通知)
今後の連絡方法を定める条文です。住所変更時の通知義務も含め、確実な連絡体制を構築します。
第19条(準拠法及び管轄)
この合意書は日本の法律に基づいて解釈され、トラブルが発生した場合の裁判所も事前に決めておく条文です。争いになった際の手続きを明確化します。
第20条(誠実協力)
最後に、双方が誠実に協力して合意の目的を達成することを約束する条文です。形式的な義務履行だけでなく、建設的な関係構築を目指す精神規定といえます。
【4】活用アドバイス
この文書を効果的に活用するためには、まず自社の状況に合わせたカスタマイズが重要です。業種や企業規模、具体的な問題の内容によって重要度の異なる条項があるため、優先順位を明確にして交渉に臨みましょう。
金額の設定では、実際の損害額の算定根拠を事前に整理しておくことが大切です。感情的な要求ではなく、具体的な数字に基づいた合理的な金額提示が円滑な合意につながります。また、相手方の支払能力も考慮し、現実的な解決策を模索することが重要です。
競業避止義務の期間や範囲については、過度に厳しい条件は無効とされる可能性があるため、業界の慣行や判例を参考にした妥当な内容にとどめることをお勧めします。特に地理的範囲や禁止される業務の具体性は、後々の紛争を避けるため詳細に検討しましょう。
交渉の進め方としては、まず事実関係を整理し、双方の言い分を冷静に聞く姿勢が大切です。感情的な対立を避け、ビジネスライクな解決を心がけることで、より良い合意に到達できます。必要に応じて、弁護士などの専門家のアドバイスを求めることも検討してください。
【5】この文書を利用するメリット
この契約書テンプレートの最大のメリットは、複雑な取締役退任トラブルを体系的に解決できる包括的な仕組みが整っていることです。損害賠償から今後の競業制限まで、必要な要素がすべて網羅されているため、抜け漏れのない合意形成が可能になります。
時間的なメリットも大きく、ゼロから契約書を作成する場合と比べて大幅な時間短縮が実現できます。通常であれば数週間から数ヶ月かかる文書作成作業が、数日程度で完了するため、迅速な問題解決が可能です。
費用面でも、専門家に依頼した場合と比較して大幅なコスト削減効果があります。弁護士に一から作成を依頼すると数十万円の費用がかかることも珍しくありませんが、このテンプレートを活用することで、その費用を大幅に圧縮できます。
さらに、実務経験に基づいた実践的な内容となっているため、机上の空論ではない現実的な解決策を提示できます。よくあるトラブルパターンを想定した条項構成により、後々の紛争リスクを最小限に抑えることができます。
編集の自由度が高いことも重要なポイントです。Word形式で提供されているため、自社の事情に合わせて柔軟にカスタマイズでき、業種や企業規模を問わず幅広く活用していただけます。
【6】価格・コスト比較での安心感
弁護士に取締役退任合意書の作成を依頼した場合、通常は15万円から30万円程度の費用が必要になります。さらに交渉が長期化すれば、その分だけ追加費用も発生します。コンサルティング会社に依頼した場合も、類似の費用水準となることが一般的です。
一方、このテンプレートを活用すれば、専門家レベルの高品質な契約書を格安で即座に入手できます。緊急性の高い案件でも、すぐに交渉を開始できるため、ビジネスチャンスを逃すリスクも回避できます。
さらに、一度購入すれば将来的に類似の問題が発生した際にも繰り返し活用できるため、長期的な視点で見れば極めてコストパフォーマンスの高い投資といえます。中小企業の経営者の方にとっては、特に大きなメリットを実感していただけるでしょう。
専門家に相談する前の叩き台としても活用でき、相談時間の短縮により専門家費用の節約にもつながります。このように、直接的なコスト削減だけでなく、間接的な効果も含めて大きな経済的メリットを提供します。
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