【1】書式概要
この治験参加規約兼同意書テンプレートは、医薬品や医療機器の臨床試験に参加する被験者の権利と義務を明確に定めた包括的な法的文書です。医療機関や製薬会社が臨床試験を実施する際に必要となる重要な同意文書として設計されています。
このテンプレートは、第1条から第20条まで、治験の目的、個人情報保護、参加者の適格性と義務、有害事象の報告体制、健康被害に対する補償制度など、臨床試験に関わる全ての重要事項を網羅しています。特に参加者の自発的参加と撤回の権利、個人情報の厳格な管理、新たな情報の提供義務といった倫理的配慮に関する条項が充実しており、国内の医薬品医療機器等法や個人情報保護法に準拠した内容となっています。
使用者は機関名や補償内容、連絡先などの各種情報を自施設の状況に合わせてカスタマイズするだけで、すぐに実務で活用できます。これにより、臨床試験実施の際の文書作成の手間と時間を大幅に削減し、規制要件に適合した質の高い同意取得プロセスを確保できます。
治験を実施する医療機関、CRO(医薬品開発業務受託機関)、製薬企業の臨床開発部門などにとって、コンプライアンスを確保しながら効率的に臨床試験を進めるための必須ツールとなるでしょう。このテンプレートを基に、各施設の特性や治験の性質に応じたカスタマイズが可能な点も大きな魅力です。
〔条文タイトル〕
第1条(目的)
第2条(定義)
第3条(治験の目的及び内容)
第4条(自発的参加及び撤回の権利)
第5条(個人情報の保護)
第6条(参加者の適格性)
第7条(参加者の義務)
第8条(治験の実施体制)
第9条(リスク及び不快感)
第10条(有害事象の報告及び対応)
第11条(健康被害に対する補償)
第12条(費用及び謝礼)
第13条(新たな情報の提供)
第14条(治験の中止又は終了)
第15条(結果の通知及び公表)
第16条(知的財産権)
第17条(秘密保持)
第18条(質問及び連絡先)
第19条(規約の変更)
第20条(効力発生及び適用法)
【2】逐条解説
第1条(目的)
本条は規約全体の目的を明確に規定しています。治験実施機関と被験者(参加者)間の権利義務関係を明確にすることで、治験の適正な実施と参加者の保護を図る基本方針を示しています。この規定により、本規約が単なる同意書ではなく、法的拘束力を持つ契約としての性質を持つことを明らかにしています。
第2条(定義)
本条は規約内で使用される重要な用語の定義を明確にしています。特に「治験」「治験薬」「有害事象」「重篤な有害事象」といった専門的な用語について、法令に準拠した形で定義しています。これにより、医学的・法的な専門知識がない参加者でも規約の内容を正確に理解できるようにしています。特に重篤な有害事象の定義は、薬機法(医薬品医療機器等法)の規定に沿った内容となっています。
第3条(治験の目的及び内容)
本条は当該治験の具体的な目的と内容について規定しています。特に第2項と第3項では、別途用意される説明文書の位置づけと、インフォームド・コンセント(説明と同意)の手続きについて明確にしています。参加者が治験の詳細を理解した上で参加を決定できるよう、担当医師からの十分な説明を受ける権利を保障しています。
第4条(自発的参加及び撤回の権利)
本条は治験参加の任意性と撤回の権利を保障する重要な条項です。倫理的観点から、参加者の自己決定権を最大限尊重し、参加拒否や途中撤回による不利益を受けないことを明確にしています。特に第4項では、撤回後のデータ取扱いについても規定し、参加者の権利と研究の継続性のバランスを図っています。
第5条(個人情報の保護)
本条は参加者の個人情報保護について規定しています。個人情報保護法を含む関連法規の遵守義務、アクセス制限、匿名化による公表、第三者提供の制限など、個人情報の取扱いに関する包括的な保護措置を定めています。特に第4項では個人情報の第三者提供が認められる例外的な場合を法令に沿って明確に列挙しており、参加者のプライバシー権と公益のバランスを図っています。
第6条(参加者の適格性)
本条は治験に参加できる者の条件(適格基準)を規定しています。治験実施計画書に定める選択・除外基準への適合性、参加者の理解能力と自由意思の確認、治験期間中の適格性変化に対する対応など、治験の科学的妥当性と参加者保護の両立を図るための規定となっています。
第7条(参加者の義務)
本条は治験参加者が遵守すべき義務を列挙しています。来院義務、副作用報告義務、治験薬の適正使用、併用薬の報告、生活様式や食事制限の遵守、妊娠回避措置など、治験の科学的妥当性を確保し、参加者の安全を守るために必要な義務が明確に規定されています。これらの義務は治験の信頼性と参加者の安全を確保するための基本的要件です。
第8条(治験の実施体制)
本条は治験の実施体制と責任の所在を明確にしています。治験責任医師、治験分担医師、治験コーディネーター、実施機関の長それぞれの役割と責任について規定しており、治験の適正な実施と参加者の安全確保のための組織体制を明らかにしています。
第9条(リスク及び不快感)
本条は治験参加に伴うリスクと不快感、およびその対応について規定しています。説明文書によるリスク開示義務、予期せぬ有害事象発生時の医療措置の提供、参加者の異常報告義務など、リスク管理と参加者保護に関する重要事項を定めています。特に第2項は、有害事象発生時の適切な医療提供を保証する条項として重要です。
第10条(有害事象の報告及び対応)
本条は有害事象の報告体制と対応手順を詳細に規定しています。参加者の報告義務、医師による評価と対応、重篤な有害事象の報告体制、治験継続の判断基準など、有害事象管理のための包括的な規定となっています。これは参加者の安全を最優先する治験の基本原則を具体化した条項です。
第11条(健康被害に対する補償)
本条は治験に起因する健康被害に対する補償について規定しています。医療の無償提供、重大被害に対する金銭補償、補償対象外となるケース、請求手続きなど、補償制度の詳細を明確にしています。これにより参加者は万一の健康被害に備えた保障を得ることができます。ただし、因果関係否定事例や参加者の重大な過失事例などが補償対象外となる場合があることも明示されています。
第12条(費用及び謝礼)
本条は治験関連費用の負担と参加者への謝礼について規定しています。治験関連費用の実施機関負担、交通費の支給、治験完了時の謝礼、途中中止時の按分支払いなど、経済的側面に関する取決めを明確にしています。特に謝礼は参加者の負担に対する適正な対価であり、過大な謝礼による不当な誘引とならない水準であることが重要です。
第13条(新たな情報の提供)
本条は治験中に得られた新情報の提供義務について規定しています。参加者の継続意思に影響を与える情報の迅速な提供義務、口頭・文書による説明、再同意の機会提供など、参加者の自己決定権を尊重するための重要条項です。これは「動的同意」の概念を取り入れた、継続的なインフォームド・コンセントのプロセスを保証するものです。
第14条(治験の中止又は終了)
本条は治験参加の中止・終了事由とその手続きについて規定しています。計画書違反、有害事象発生、健康状態変化、治験全体の中止といった中止事由の列挙、中止・終了時の説明義務、安全性確認のための追跡調査など、治験の適切な終結に関する規定を設けています。これにより、科学的妥当性の確保と参加者保護の両立を図っています。
第15条(結果の通知及び公表)
本条は治験結果の通知と公表について規定しています。結果の要約通知、匿名化された形での公表、参加者のデータ開示請求権など、治験の透明性と参加者の知る権利に関する規定です。ただし、盲検性維持のため治験期間中は一部情報の開示が制限される場合があることも明示されています。
第16条(知的財産権)
本条は治験から生じる知的財産権の帰属について規定しています。知的財産権が治験依頼者に帰属すること、参加者が知的財産権を主張できないことを明確にしており、将来的な権利関係の紛争を予防するための条項です。これは治験が本質的に依頼者による研究開発活動の一環であることを反映しています。
第17条(秘密保持)
本条は参加者の秘密保持義務について規定しています。治験内容や治験薬に関する情報の守秘義務を定めていますが、学術・教育目的での匿名化情報の共有は例外としており、科学的知見の普及と秘密保持のバランスを図っています。
第18条(質問及び連絡先)
本条は参加者からの質問や懸念事項に対する連絡先を明示しています。治験責任医師の連絡先、緊急時連絡先、参加者の権利に関する問い合わせ先(倫理審査委員会)など、参加者が必要時に適切に連絡できる体制を保証する条項です。これにより、参加者の疑問や不安に迅速に対応できる体制を整えています。
第19条(規約の変更)
本条は規約内容の変更手続きについて規定しています。変更内容の説明義務、再同意の取得、参加者の権利や安全に関わる重大な変更時の判断権、一部無効の場合の残部有効性など、規約変更に関する包括的な規定を設けています。これにより、治験の進行中に生じる状況変化に柔軟に対応しつつ、参加者の権利保護を図っています。
第20条(効力発生及び適用法)
本条は規約の効力発生時期、準拠法、紛争解決方法について規定しています。同意書署名時からの効力発生、日本法の準拠、管轄裁判所の指定など、法的側面に関する基本的事項を定めており、本規約が法的拘束力を持つ契約であることを明確にしています。