【1】書式概要
この「AI・データ分析業務委託基本契約書」は、AI・データ分析に特化した業務委託の基本的な取り決めを簡潔かつ明確に規定した契約書雛型です。AI技術やデータ分析業務の発注が急増する現代ビジネスにおいて、企業(甲)と専門家(乙)の間の法的関係を適切に構築するための土台となります。
本雛型は、業務内容の定義から知的財産権の帰属、機密情報の取り扱い、個人情報保護に至るまで、AI・データ分析業務特有の重要ポイントを網羅しています。さらに民法改正に対応しており、最新の法律環境にも適合しています。
各条項は実務上の課題を想定して設計されており、特に第9条の知的財産権条項ではAI開発の成果物帰属を明確化し、第7条では機密保持義務を厳格に定めています。また第8条では個人情報保護法への準拠を明記し、データ取扱いの適法性を担保しています。
シンプルながらも法的保護と実務的柔軟性のバランスを考慮した構成で、個別契約と組み合わせることで様々なAI・データ分析プロジェクトに対応可能です。必要に応じて条項のカスタマイズができるため、スタートアップから大企業まで幅広くご活用いただけます。
〔条文タイトル〕
第1条(目的)
第2条(定義)
第3条(適用範囲)
第4条(業務内容)
第5条(業務遂行)
第6条(報酬)
第7条(機密保持)
第8条(個人情報保護)
第9条(知的財産権)
第10条(第三者の権利侵害の防止)
第11条(再委託の禁止)
第12条(契約解除)
第13条(損害賠償)
第14条(反社会的勢力の排除)
第15条(協議解決)
第16条(管轄裁判所)
【2】逐条解説
第1条(目的)
この条項は契約書の基本的な目的を明示しています。AI・データ分析業務の委託に関する基本事項を定めることを明確にし、契約全体の方向性を示します。契約の解釈において重要な指針となります。
第2条(定義)
ここでは契約書における「乙」の定義を行っています。データエンジニア、データアナリスト、データサイエンティストなど、AI・データ分析業務を請け負う個人または法人を指すと明確化しています。当事者の範囲を特定することで、契約の適用対象を明確にしています。
第3条(適用範囲)
この条項は本基本契約と個別契約の関係性を規定しています。第1項で基本契約がすべての個別契約に適用されることを示し、第2項では個別契約の内容が基本契約に優先することを明確にしています。これにより、基本的枠組みを保ちながら、個別案件ごとの柔軟性を確保しています。
第4条(業務内容)
具体的な業務内容や期間、報酬などは個別契約で定めることを規定しています。第2項では、本契約が請負型業務と委任型業務の両方に適用されることを明示し、多様なAI・データ分析業務形態に対応できる柔軟性を持たせています。
第5条(業務遂行)
乙の業務遂行責任と遵守すべき事項を規定しています。第1項で自己責任原則を明確にし、第2項では関連法令や甲の指示・ガイドラインの遵守義務を定めています。これにより業務の質と法令準拠性を担保しています。
第6条(報酬)
報酬に関する基本的な枠組みを規定しています。具体的な金額や支払方法は個別契約に委ねられますが、甲の支払義務を明確にしています。
第7条(機密保持)
AI・データ分析業務で特に重要となる機密情報の取扱いについて規定しています。契約期間中だけでなく契約終了後も機密保持義務が継続することを明示し、無断複製・複写の禁止も含めることで、情報漏洩リスクを低減しています。
第8条(個人情報保護)
個人情報の取扱いに関する条項です。個人情報保護法など関連法令の遵守義務を明記し、AI・データ分析で扱う可能性のある個人データのコンプライアンスを確保しています。
第9条(知的財産権)
AI・データ分析業務の成果物に関する知的財産権の帰属を規定する重要な条項です。原則として成果物の知的財産権は甲に帰属することを明示し、乙の著作者人格権不行使も定めています。これによりAIモデルや分析結果の権利関係を明確化しています。
第10条(第三者の権利侵害の防止)
乙が業務遂行において第三者の知的財産権を侵害しないよう注意義務を課しています。AI開発では既存特許や著作権との関係が問題になりやすいため、この条項は重要な意味を持ちます。
第11条(再委託の禁止)
甲の事前承諾なしに業務を第三者に再委託することを禁止しています。これにより、品質管理やセキュリティリスクの低減を図っています。
第12条(契約解除)
契約違反があった場合の解除権について規定しています。相当期間を定めた催告を要件としており、即時解除ではなく改善の機会を与える配慮がなされています。
第13条(損害賠償)
契約違反による損害が生じた場合の賠償責任を規定しています。シンプルながら、契約不履行に対する責任の所在を明確にしています。
第14条(反社会的勢力の排除)
いわゆる暴排条項です。両当事者が反社会的勢力でないことの表明保証と、違反時の無催告解除権を定めています。現代の契約書では標準的な条項となっており、コンプライアンス上重要です。
第15条(協議解決)
契約書に定めのない事項や解釈の疑義については、当事者間の誠実な協議により解決することを定めています。これにより、予期せぬ状況や解釈の相違に柔軟に対応する余地を残しています。
第16条(管轄裁判所)
紛争が生じた場合の管轄裁判所を定めています。具体的な裁判所名は空欄となっており、当事者間で合意した裁判所を記入する形式になっています。
本契約書は、AI・データ分析という専門性の高い業務の委託において、法的リスクを適切に管理しながら、両当事者の権利義務関係を明確化する内容となっています。特に知的財産権、機密情報、個人情報の取扱いに関する条項は、AI・データ分析業務特有の重要事項を押さえています。