【1】書式概要
この駐車場経営委託契約書は、土地所有者が自分の所有する駐車場の経営・管理業務を専門業者に委託する際に使用する契約書です。所有している土地を有効活用したいけれど自分で管理する時間がない方や、専門知識を持つ業者に任せたい方にぴったりの内容となっています。
駐車場経営は土地活用の有効な方法の一つですが、賃借人の募集や契約管理、日常の施設維持など、意外と手間がかかるものです。この契約書を使えば、これらの業務を専門業者に委託する際の条件や責任範囲、報酬体系などを明確にできます。
特に改正民法に対応した内容となっているため、最新の法制度に沿った安心の書式です。駐車場オーナーになったばかりの方でも安心して使える分かりやすい文言で構成されており、委託する業務内容や費用負担、トラブル発生時の対応なども詳細に規定されています。
土地の有効活用を考える方、駐車場経営で安定収入を得たい方にとって、業者との関係を適切に構築するための重要な一歩となるでしょう。
【2】条文タイトル
第1条(委託・受託)
第2条(本件業務)
第3条(対価)
第4条(費用の負担等)
第5条(秘密保持)
第6条(紛争等)
第7条(契約期間)
第8条(解除)
第9条(期限の利益の喪失)
第10条(権利義務の譲渡禁止)
第11条(管轄裁判所)
第12条(協議事項)
【3】逐条解説
第1条(委託・受託)
この条文では、契約の基本となる土地所有者(甲)と管理業者(乙)の関係性を定めています。駐車場の所在地や名称、地番、面積、駐車可能台数など具体的な情報を記載する箇所があるので、実際の駐車場の詳細情報をしっかり入れましょう。例えば「東京都新宿区西新宿1丁目1番1号」といった住所や「サンシャイン駐車場」のような名称、「宅地」などの地目、「200平方メートル」のような面積、「10台」といった駐車台数など、正確な情報を記入することが重要です。
第2条(本件業務)
駐車場管理業者が行う業務内容を細かく規定しています。新規募集、契約締結、日常管理、退去精算の4つの大きな業務に分かれており、それぞれ具体的な作業内容が明記されています。例えば、駐車場の定期清掃や賃料集金、契約手続きの代行など実務的な内容が詳細に書かれています。
特に重要なのは修繕工事の費用負担に関する部分で、一定金額(例えば5万円)を超える修繕は事前に所有者の同意を得る必要がある点です。また業者は善管注意義務を負うこと、法令遵守義務があること、第三者への再委託には制限があることなども規定されています。
第3条(対価)
管理業者への報酬に関する条項です。典型的には賃料総額の10〜15%程度となることが多いですが、契約書では具体的な数字を入れる必要があります。業者は翌月分の賃料を毎月末までに集金し、翌月15日までに自分の報酬を差し引いた額を所有者に送金する流れとなっています。報告義務も規定されているので、どの駐車場スペースがいくらで貸し出されているかなどの詳細情報も共有されます。また、周辺の相場が大きく変動した場合には報酬額を見直せる規定も入っていて、長期契約でも柔軟に対応できるようになっています。
第4条(費用の負担等)
業務に関わる費用の負担について定めています。基本的には管理業者が自分の業務に関わる費用(広告費や人件費など)を負担しますが、第2条で別途定められた費用(大きな修繕費など)は所有者負担となります。また、新規契約者を見つけた場合には、業者は借主から仲介手数料(賃料1か月分まで)を別途もらうことができるという規定です。実際の例でいえば、月額2万円の駐車場スペースを新たに貸し出す場合、業者は借主から2万円の仲介手数料を取ることができます。
第5条(秘密保持)
管理業者が契約を通じて知った所有者の情報を外部に漏らさないよう義務付ける条項です。駐車場経営に関する収益情報や所有者の個人情報など、様々な機密事項を業者は知ることになります。例えば「この駐車場は月に30万円の収益がある」といった情報や、所有者の資産状況などを第三者に話すことは禁止されています。ただし、すでに公知の情報や業者が独自に持っていた情報などについては例外とされています。
第6条(紛争等)
駐車場の運営に関連して第三者とのトラブルが起きた場合の責任を定めています。例えば、駐車場利用者どうしのトラブルや、近隣住民からの苦情(音や振動、違法駐車など)は基本的に管理業者が対応することになります。ただし、所有者の指示に基づく行為や、地震などの不可抗力による問題については例外とされています。実際の例でいえば、管理業者の清掃不足で駐車場内の排水溝が詰まり、隣接地に水漏れが起きた場合などは管理業者の責任で対応することになります。
第7条(契約期間)
契約の有効期間と更新・解約について定めています。基本的には1年契約で、特に申し出がなければ自動更新される形です。ただし所有者側からはいつでも解約できる規定となっており、その場合は日割り計算で業者への報酬が支払われます。例えば6か月経過後に解約する場合、その時点までの業務に対する報酬は保証されています。また契約が終了しても、秘密保持義務などの一部条項は効力を維持する点も重要です。
第8条(解除)
契約を即時解除できる事由を列挙しています。契約違反が30日以上是正されない場合や、破産手続開始、支払停止など経営状態の悪化、反社会的勢力との関係などが該当します。例えば管理業者が3か月連続で賃料送金を怠った場合や、暴力団員であることが判明した場合などには、所有者は直ちに契約を解除できます。この解除は損害賠償請求を妨げないので、解除によって生じた損害の補償を求めることも可能です。
第9条(期限の利益の喪失)
前条の解除事由が発生した場合、相手方に対する債務の支払い猶予(期限の利益)を失うことを定めています。例えば、毎月15日に支払うことになっている賃料があるとして、解除事由が生じれば、たとえ15日前であっても直ちに支払う義務が生じるということです。これは契約の安全性を高める条項で、トラブルが起きた際に迅速に債権を回収できるようにするためのものです。
第10条(権利義務の譲渡禁止)
契約上の権利や義務を第三者に譲渡することを禁止する条項です。例えば管理業者が、所有者の同意なく別の会社に業務を丸投げすることはできません。また、この契約から生じる将来の報酬債権を担保に入れて融資を受けるようなことも禁止されています。これは契約が特定の相手との信頼関係に基づくものであることを反映した条項です。
第11条(管轄裁判所)
万一裁判になった場合の管轄裁判所を定めています。通常は不動産所在地の地方裁判所や、契約当事者の住所地の裁判所が選ばれます。例えば「東京地方裁判所」や「大阪地方裁判所」などと具体的に記載します。これにより、遠方の不便な裁判所で訴えられるリスクを避けることができます。
第12条(協議事項)
契約書に書かれていない事項や解釈に疑義が生じた場合の対応について定めています。当事者間の誠実な協議によって解決を図ることを原則としています。例えば、駐車場内で電気自動車用の充電設備を設置したい場合など、契約時には想定していなかった新たな課題が生じた際に、この条項に基づいて話し合いで解決することになります。この条項があることで、契約書に細かく書かれていないことでも柔軟に対応できるようになっています。