【1】書式概要
この書式は、夫婦が協議離婚する際に作成する総合的な離婚給付契約公正証書の雛型です。離婚時に決めるべき重要事項を漏れなく取り決めることができ、後々のトラブルを防ぐ効果があります。
特に子どもがいるご夫婦にとって、養育費の支払い方法や金額、親権者の決定、面接交渉の取り決めは欠かせません。また、夫婦で築いた財産をどのように分けるか、不動産の名義変更、預貯金の分割、退職金の分与なども明確に定めておく必要があります。
慰謝料がある場合の支払い条件や、将来的な扶養として生活費の支援が必要な場合の取り決めも含まれています。年金分割の手続きについても具体的に記載されており、離婚後の生活設計に重要な役割を果たします。
この書式を使用する場面は、離婚を決意したご夫婦が公証役場で公正証書を作成する前の準備段階です。事前にお互いの合意内容を整理し、公証人との面談をスムーズに進めるために活用できます。また、離婚調停や協議の際の資料としても役立ちます。
【2】条文タイトル
第1条(離婚合意)
第2条(親権者)
第3条(養育費)
第4条(慰謝料)
第5条(不動産)
第6条(預貯金)
第7条(自動車)
第8条(退職金)
第9条(家財道具・家電製品)
第10条(扶養的財産分与)
第11条(生命保険)
第12条(年金分割)
第13条(面接交渉)
第14条(通知義務)
第15条(清算条項)
第16条(管轄裁判)
第17条(強制執行)
【3】逐条解説
第1条(離婚合意)
協議離婚の意思確認と離婚届提出の責任者を明確にしています。通常、夫婦のどちらかが市役所等に届け出ますが、この条文では妻が手続きを行うことになっています。実際の運用では、お互いが署名押印した後、どちらが届け出るかを事前に決めておくことでスムーズな手続きが可能になります。
第2条(親権者)
未成年の子どもの親権者を妻に定める条項です。日本では離婚時に単独親権制度を採用しているため、必ずどちらか一方を親権者として決める必要があります。監護養育も併せて妻が担うことが明記されており、子どもの日常的な世話や教育に関する決定権が妻にあることを示しています。
第3条(養育費)
最も重要な条項の一つで、子どもの生活費や教育費について詳細に定めています。毎月の基本的な養育費に加えて、高校や大学の学費を別途支払う仕組みになっています。例えば、大学進学しなかった場合や浪人・留年した場合の対応方法も含まれており、将来の様々な状況に備えています。物価変動への対応や再婚時の取り扱いも規定されています。
第4条(慰謝料)
離婚原因に基づく慰謝料の支払い方法を定めています。一括払いが困難な場合の分割払いの条件や、支払いが滞った場合の期限の利益喪失条項が含まれています。例えば、1回でも支払いを怠ると残額を一括で支払う義務が生じるため、支払う側にとっては重い責任を負うことになります。
第5条(不動産)
夫婦共有名義の不動産について、妻の持分を夫に財産分与する条項です。住宅ローンが残っている場合、夫が単独で債務を負担することも定められています。所有権移転登記の手続きや費用負担についても明確にしており、離婚後の不動産関係を整理できます。
第6条(預貯金)
夫名義の預金の一部を妻に分与する取り決めです。具体的な銀行名や口座番号、分与額が記載されるため、財産分与の透明性が確保されます。実際の運用では、離婚前に預金残高を確認し、分与額を決定する必要があります。
第7条(自動車)
自動車の所有権を妻に移転する条項です。名義変更手続きの責任者や費用負担が明確になっており、離婚後のトラブルを防げます。車検証や自動車税の名義変更も忘れずに行う必要があります。
第8条(退職金)
将来受け取る予定の退職金から一定額を財産分与として支払う取り決めです。退職金は婚姻期間中に築いた共有財産と考えられるため、離婚時の重要な分与対象となります。支払い時期を明確にすることで、将来の紛争を防げます。
第9条(家財道具・家電製品)
家庭内の動産について、妻が取得することを定めています。テレビや冷蔵庫、家具類など、日常生活に必要な物品の帰属を明確にしており、離婚後の生活基盤を確保できます。
第10条(扶養的財産分与)
妻の離婚後の生活を支援するための扶養的な給付です。養育費とは別に、妻自身の生活費として一定期間支払われます。例えば、専業主婦だった妻が離婚後に経済的自立を図るまでの期間をサポートする目的があります。
第11条(生命保険)
夫が契約者となっている生命保険の受取人を子どもに変更する条項です。万一の際に子どもの将来が保障されるよう配慮されており、親としての責任を果たす重要な取り決めです。
第12条(年金分割)
厚生年金の分割請求について定めています。按分割合を0.5とすることで、婚姻期間中の厚生年金記録を夫婦で等分することになります。妻が離婚後2か月以内に手続きを行う責任があることも明記されています。
第13条(面接交渉)
父親と子どもとの面会について定めています。月1回程度の面会を基本とし、子どもの福祉を最優先に考慮することが強調されています。具体的な日時や場所は事前協議で決めることになっており、柔軟な対応が可能です。
第14条(通知義務)
住所変更や再婚などの重要な変更事項について、お互いに書面で通知する義務を定めています。養育費や慰謝料の支払いを確実にするため、連絡先の把握は欠かせません。
第15条(清算条項)
この契約で全ての離婚関連事項が解決したことを確認し、将来的な追加請求を防ぐ条項です。お互いが納得して離婚することを明確にし、後日の紛争を防ぐ効果があります。
第16条(管轄裁判)
将来紛争が生じた場合の裁判所を妻の住所地に定めています。子どもを監護する母親の負担を軽減する配慮が見られます。
第17条(強制執行)
夫が金銭的義務を履行しない場合、裁判手続きを経ずに直接財産を差し押さえることができる条項です。養育費や慰謝料の確実な回収を可能にする重要な取り決めです。