【1】書式概要
この「改正民法対応版 遺言書(汎用版)」は、ご自身の遺言を確実に残したい方のための充実した雛型です。本テンプレートは現行の民法に準拠しており、相続に関する法的要件を満たした正式な遺言書の作成をサポートします。
不動産や株式、預金口座などの財産を配偶者や子供たちに適切に分配するための条項が整理されており、どなたでも理解しやすい構成になっています。また、祭祀の主宰者の指定や遺言執行者の選任など、相続において重要となる事項もカバーしています。
各項目には記入例が示されており、ご自身の状況に合わせて簡単にカスタマイズできます。相続トラブルを未然に防ぎ、大切な家族に安心を届けるための第一歩として、この遺言書雛型をご活用ください。ご家族の将来を守るための明確な意思表示は、残された方々への最後の思いやりとなるでしょう。
法的効力を確実にするためには、作成後に専門家による確認をお勧めいたします。あなたの大切な資産と想いを次世代へ確実に繋ぐための頼れるツールとしてお役立てください。
〔条文タイトル〕
第1条(配偶者への財産)
第2条(子供への財産その1)
第3条(子供への財産その2)
第4条(その他の財産)
第5条(祭祀の主催者)
第6条(遺言執行者)
【2】逐条解説
第1条(配偶者への財産)
この条項では、遺言者が配偶者に相続させる不動産について詳細に規定しています。不動産は土地と建物に分けて記載されており、それぞれの法的識別に必要な情報を明記する欄が設けられています。
土地については所在地、地番、地目、地積(面積)を記入します。これらは法務局の登記簿謄本に記載されている正確な情報を転記することが重要です。建物については所在地、種類(居宅、店舗など)、構造(木造、鉄筋コンクリート造など)、床面積を階ごとに記入します。
この条項によって、配偶者への不動産の相続が明確に指定され、相続登記の際にもスムーズな手続きが可能となります。
第2条(子供への財産その1)
長男への財産分配を規定する条項です。主に金融資産を対象としており、株式と預金が例示されています。株式については会社名と株数、預金については金融機関名、支店名、口座番号を明記します。
相続財産を特定の相続人に「相続させる」という表現を用いることで、遺贈とは異なり、相続開始と同時に当該財産の権利が移転する効果があります。これにより、遺言執行者がいなくても相続人自身が金融機関などで名義変更手続きを行うことが可能になります。
第3条(子供への財産その2)
長女への財産分配を規定する条項で、構成は第2条と同様です。このように子供ごとに条項を分けることで、相続人それぞれへの分配を明確にし、相続争いを防止する効果があります。
株式や預金など、価値変動や残高変動がある財産については、遺言作成時点での概数を記載しておくことが望ましいでしょう。なお、遺言作成後に処分された財産は当然ながら相続対象から外れます。
第4条(その他の財産)
この条項は、第1条から第3条で明示的に指定した以外の一切の財産(包括的財産)を配偶者に相続させることを規定しています。これは「包括遺贈」に近い効果を持ち、遺言作成時には想定していなかった財産や、遺言作成後に取得した財産についても対象となります。
この条項があることで、すべての財産について網羅的に記載する必要がなく、遺言の作成が容易になるとともに、遺言から漏れる財産をなくし、法定相続による紛争を防止する効果があります。
第5条(祭祀の主催者)
この条項は日本の伝統的な祖先祭祀について定めるもので、民法第897条に基づいています。祭祀財産(位牌、墓地、仏壇など)は特殊な財産として扱われ、分割対象とはならず、遺言者が指定した者が単独で承継します。
祭祀承継者の指定がない場合は慣習に従って決定されますが、明確に指定しておくことで、将来の紛争を防止する効果があります。なお、祭祀承継者は必ずしも相続人である必要はありませんが、本テンプレートでは長男を指定する例を示しています。
第6条(遺言執行者)
遺言の内容を確実に実行するための重要な役割を担う遺言執行者を指定する条項です。遺言執行者には、遺言の内容を実現するための法的権限が与えられ、相続財産の管理や名義変更などの手続きを行います。
遺言執行者の指定は必須ではありませんが、複雑な財産がある場合や相続人間の関係が良好でない場合には、中立的な立場で遺言を執行する人物を指定しておくことが望ましいでしょう。遺言執行者には弁護士や司法書士などの専門家を指定することも可能です。
遺言執行者を特定するため、住所、職業、氏名、生年月日といった基本情報を記載する欄が設けられています。
この遺言書テンプレートは、改正民法に対応した形で、相続に関する基本的な事項を網羅しています。各条項の記載内容を適切に設定することで、遺言者の意思を明確に伝え、相続トラブルを未然に防ぐことができます。特に重要な財産については具体的に記載し、それ以外の財産については包括条項を設けるという構成は、実務的にも合理的な方法といえるでしょう。