【1】書式概要
この連帯根保証契約書は、金融機関や事業者が貸付を行う際に、借主以外の第三者に保証人になってもらうための重要な契約書です。特に事業資金の融資において、銀行などが債権回収のリスクを軽減するために広く活用されています。
改正民法に完全対応しており、保証人の権利保護を強化した新しい規定が盛り込まれています。従来の保証契約では保証人が予想以上の負担を負うケースが多発していましたが、この契約書では極度額の設定や情報提供義務など、保証人を守る仕組みが整備されています。
実際の使用場面としては、中小企業の運転資金調達、設備投資資金の借入、個人事業主の事業資金調達などで重宝されます。また、親族や知人が事業を支援する際の保証契約としても使用できます。金融機関側では、個人保証を求める際の標準的な契約書として活用されており、適切な保証契約を締結することで後々のトラブルを防ぐことができます。
根保証という仕組みにより、一定期間内に発生する複数の債務をまとめて保証できるため、継続的な取引関係において非常に実用的です。改正民法の施行により、これまで以上に慎重な契約締結が求められる中、この雛形は実務で即座に使える完成度の高い内容となっています。
【2】逐条解説
第1条(目的)の解説
この条項では保証の対象となる債務の範囲を明確に定めています。根保証契約の最も重要な部分で、どのような債務を保証するのか、いくらまで保証するのかを具体的に記載します。
対象債務については、契約締結日から元本確定期日までの金銭消費貸借契約に基づく債務としており、期間を限定することで保証人の負担を予測可能にしています。例えば、運転資金として毎月借入と返済を繰り返す場合でも、この期間内の借入についてのみ保証責任を負うことになります。
極度額の設定は改正民法で義務化された重要な仕組みです。従来は青天井で保証責任を負う可能性がありましたが、現在は必ず上限額を定める必要があります。この上限には元本だけでなく利息や遅延損害金も含まれるため、保証人は最大でこの金額までしか責任を負いません。
元本確定期日は保証の終期を示し、この日以降は新たな債務は保証の対象外となります。また、強制執行手続の開始、破産手続開始決定、死亡といった事由が発生した場合は、期日前でも元本が確定される仕組みになっています。
第2条(保証債務の履行)の解説
保証債務の履行義務について定めた条項です。債権者から請求を受けた場合の保証人の対応を明確にしています。
「直ちに支払わなければならない」という表現は、保証人に猶予期間がないことを示しています。実際の取引では、主債務者が支払いを滞納した場合、債権者は保証人に対して即座に支払いを求めることができます。例えば、借主が月末の返済を怠った場合、翌日には保証人に請求が来る可能성があります。
連帯保証の場合、保証人は主債務者と同等の責任を負うため、債権者との関係では借主と同じ立場に置かれます。これは通常の保証契約よりも保証人にとって厳しい条件となりますが、その分債権者の保護が厚くなります。
第3条(検索の抗弁)の解説
この条項は連帯保証特有の規定で、保証人の抗弁権を制限しています。通常の保証では、主債務者に財産があり強制執行が可能な場合、保証人は「まず主債務者から取り立ててください」と主張できますが、連帯保証ではこの権利が認められません。
実務上は、借主に十分な資産があったとしても、債権者は保証人に直接請求できることを意味します。例えば、借主が不動産を所有していても、債権者はその処分を待たずに保証人に支払いを求めることができます。
この規定により債権回収の確実性が高まりますが、保証人にとっては重い負担となるため、契約締結時には十分な検討が必要です。
第4条(公正証書)の解説
事業債務の保証において改正民法で新設された重要な規定です。個人が事業者の債務を保証する場合、公正証書による意思確認が義務付けられました。
公正証書は契約締結前1か月以内に作成する必要があり、この手続きを怠ると契約自体が無効になります。例えば、会社経営者の親族が保証人になる場合、事前に公証役場で保証の意思を確認してもらう必要があります。
この制度は、十分な理解なしに保証人になることを防ぐ保護措置です。公証人による説明を受けることで、保証の重大性を理解した上で契約締結に臨むことができます。
第5条(債権者から保証人への情報提供)の解説
改正民法で強化された保証人保護の中核的な規定です。保証人は債権者に対して主債務の履行状況について情報提供を求めることができます。
第1項では、保証人の請求があれば債権者は借入残高、返済状況、延滞の有無などの情報を提供しなければなりません。これにより保証人は現在の状況を把握し、必要に応じて主債務者に注意喚起することができます。
第2項の期限利益喪失通知は特に重要で、借主が約定違反により一括返済を求められた場合、債権者は2か月以内に保証人に通知する義務があります。例えば、借主が3回連続で延滞し期限利益を失った場合、債権者は速やかに保証人に連絡しなければなりません。
この通知を怠ると、債権者は保証人に対する権利を制限される可能性があるため、実務上非常に重要な規定となっています。
第6条(費用負担)の解説
契約書作成に関する費用分担について定めています。印紙代、公正証書作成費用、弁護士費用などが該当し、原則として各当事者が自己負担することを明確にしています。
実際の取引では、債権者側が契約書を用意することが多いですが、この規定により費用の押し付けを防ぐことができます。例えば、銀行が融資する際の保証契約では、銀行側の事務費用と保証人側の公正証書作成費用をそれぞれが負担することになります。
第7条(協議)の解説
契約の解釈に疑義が生じた場合の解決方法を定めています。訴訟に発展する前に、当事者間で話し合いによる解決を図ることを求めています。
金融取引では長期間にわたる契約関係が続くため、途中で様々な問題が発生する可能性があります。例えば、経済情勢の変化により返済条件の見直しが必要になった場合、まずは当事者間で協議することが期待されています。
この条項があることで、建設的な話し合いの場を設けやすくなり、関係の維持にも役立ちます。
第8条(合意管轄)の解説
紛争が生じた場合の裁判所を事前に決めておく条項です。専属的合意管轄とすることで、他の裁判所での訴訟を制限し、紛争解決の場を一本化しています。
実務上は債権者の本店所在地の裁判所を指定することが多く、これにより債権者側の訴訟対応が効率化されます。例えば、東京の銀行が全国に融資している場合でも、トラブル時は東京地方裁判所で統一的に処理できます。
保証人にとっては遠方の裁判所での対応が必要になる可能性がありますが、紛争解決の予見可能性が高まるメリットもあります。