【1】書式概要
この契約書は、隣接する土地の所有者同士が通行に関する権利を正式に取り決めるための重要な書面です。具体的には、公道に面していない土地の所有者が、隣の土地を通って道路にアクセスする権利を確保するために使用します。
現代の住宅地開発や土地分割により、袋地と呼ばれる公道に直接面していない土地が数多く存在します。こうした土地の所有者は、日常生活や事業活動のために必ず他人の土地を通行する必要があります。口約束だけでは後々トラブルになりかねないため、書面で明確に権利関係を定めておくことが賢明です。
この契約書が活用される場面としては、住宅を新築する際に建築資材の搬入路を確保したい場合、既存住宅の建て替えで工事車両の通行が必要な場合、日常的な車両や歩行者の通行路として利用したい場合などが挙げられます。また、土地の売買時に通行権を付けて価値を高めたい場合や、相続で取得した土地の有効活用を図りたい場合にも重宝します。
改正民法に対応した内容となっているため、現在の法制度に適合した安心できる契約書として、土地所有者の方々に長期間ご利用いただけます。通行料の支払い方法や契約解除の条件、反社会的勢力の排除条項まで含んだ総合的な内容で、実際の取引でそのまま活用できる実用性の高い書式となっています。
【2】条文タイトル
第1条(目的)
第2条(期間)
第3条(対価)
第4条(契約解除)
第5条(登記)
第6条(反社会的勢力の排除)
第7条(協議事項)
第8条(管轄裁判所)
【3】逐条解説
第1条(目的)について
この条項では契約の根幹となる内容を定めています。要役地と承役地という専門用語が出てきますが、簡単に言えば「恩恵を受ける土地」と「負担を負う土地」という意味です。例えば、角地に面した甲さんの土地を通って、奥にある乙さんの土地から道路に出られるようにする場合、乙さんの土地が要役地、甲さんの土地が承役地となります。土地の詳細情報を記載することで、権利の対象を明確化しています。
第2条(期間)について
地役権の存続期間を設定する重要な条項です。永続的な権利とするか、期間限定とするかは当事者の合意次第です。一般的には10年から30年程度で設定されることが多く、期間満了後は再契約するかどうかを改めて検討することになります。建物の建築期間中だけの短期契約や、住宅ローンの完済まで等、具体的な目的に応じて期間を調整できます。
第3条(対価)について
通行権の使用料について定めた条項です。年額での支払いが一般的ですが、月額や一時金での支払いも可能です。金額は土地の価値、通行頻度、通行する車両の種類などを考慮して決定します。例えば、週末のみ軽自動車で通行する場合と、平日毎日大型車両が通行する場合では、当然料金設定が変わってきます。前払い制にすることで、承役地所有者の安心感も確保できます。
第4条(契約解除)について
契約を終了させる条件を明記した条項です。公道への直接アクセスが可能になった場合など、通行の必要性がなくなったときの解除事由は合理的です。また、使用料の滞納に対する解除権も重要で、3ヶ月滞納や2回連続滞納など、具体的な基準を設けることもあります。催告なしで解除できる規定により、迅速な対応が可能になります。
第5条(登記)について
地役権を法的に確定させるための登記手続きに関する条項です。登記により第三者に対しても権利を主張できるようになり、土地が売却されても新しい所有者に権利が継承されます。登記費用の負担者を明確にしておくことで、後のトラブルを防げます。司法書士への報酬、登録免許税、測量費用など、意外に費用がかかる場合があるため、事前の取り決めが重要です。
第6条(反社会的勢力の排除)について
近年の契約書では必須となっている反社条項です。暴力団関係者との取引を防ぐための重要な規定で、金融機関や行政機関でも同様の条項が求められています。単に暴力団員でないことだけでなく、経営への関与や資金提供なども対象としており、幅広い関係を排除しています。この条項により、健全な取引環境の確保と社会的責任を果たすことができます。
第7条(協議事項)について
契約書に記載されていない事項が発生した場合の対処方法を定めた条項です。通行方法の変更、使用料の改定、新たな設備設置など、様々な状況変化に対応するための規定です。例えば、当初は歩行者のみの通行だったが車両通行も必要になった場合や、通行路の舗装工事が必要になった場合など、協議により柔軟に解決を図ることができます。
第8条(管轄裁判所)について
万が一紛争が発生した場合の裁判管轄を定めた条項です。通常は土地所在地を管轄する地方裁判所を指定します。管轄の合意により、どちらかが遠方に転居しても予測可能な場所で紛争解決ができ、時間と費用の節約にもつながります。第一審の専属管轄とすることで、他の裁判所での提訴を防ぎ、紛争解決の迅速化を図っています。