【1】書式概要
この退職合意書は、会社と従業員が円満に労働契約を終了させるための公式な合意文書です。改正民法に準拠しており、退職日の設定から退職金の支払い、秘密保持義務や競業避止義務まで、退職に関わる重要事項を漏れなく網羅しています。
特に労使間のトラブルを未然に防ぐための清算条項も含まれているため、将来的な紛争リスクを軽減できます。中小企業のオーナーや人事担当者が従業員との退職合意を交わす際に役立ちます。「●●●●」の箇所に必要事項を記入するだけで、すぐに使える実用的な書式となっています。
退職の意向が示されたとき、または会社側から退職を打診する場面で活用できます。両者の権利義務を明確にし、退職プロセスをスムーズに進めるのに最適な文書です。
【2】条文タイトル
第1条(合意解約)
第2条(退職金等)
第3条(離職事由)
第4条(秘密保持)
第5条(競業避止義務)
第6条(本合意書に関する秘密保持)
第7条(清算条項)
【3】逐条解説
第1条(合意解約)
この条項では、労働契約を終了させる具体的な日付(退職日)を定めています。また、退職日以降に会社内に残された個人の持ち物について、会社側が処分できる権限を明記しています。
例えば、デスクに置き忘れた文房具や書類などが該当します。これにより、退職後に「自分の物が勝手に捨てられた」などのトラブルを防止できます。退職日はきちんと合意の上で設定し、引継ぎや最終出勤日なども考慮して決めることが大切です。
第2条(退職金等)
退職に伴う金銭的な精算事項を定める重要な条項です。退職金の金額だけでなく、解雇予告手当やその他の支払いについても明確に規定しています。
また、支払い方法として銀行振込を指定し、振込手数料は会社負担とする点も明記されています。実務では、未消化の有給休暇分の買取金や、最終月の給与精算などもここに含めることがあります。金額は必ず税金や社会保険料の控除を考慮した上で正確に記載しましょう。
第3条(離職事由)
雇用保険手続きにおける離職事由を明確に記載する条項です。離職事由の記載は、その後の失業給付の受給資格や給付日数に大きく影響するため、双方で確認しておくことが重要です。
例えば「会社都合」か「自己都合」かによって給付開始時期や期間が異なります。実際には、円満退職の場合でも「会社都合」として記載されることもあり、この点は交渉の余地がある部分でもあります。
第4条(秘密保持)
退職後も継続する秘密保持義務について定めています。在職中に知り得た会社の事業情報や顧客情報、技術情報などを外部に漏らさないことを約束する内容です。例えば、取引先リストや製品の開発情報、営業戦略などが該当します。
この義務に違反すると損害賠償請求の対象となることもあるため、退職者は十分に注意する必要があります。期間の定めがない場合は永続的な義務として解釈されることが一般的です。
第5条(競業避止義務)
退職後一定期間、同業他社への就職や独立開業などを制限する条項です。期間は明確に定められており、その間は会社と競合する事業に関わることを禁止しています。例えば、同じ商圏内での類似店舗の開業や、直接の競合企業への転職などが制限されます。
ただし、この条項は職業選択の自由との兼ね合いがあるため、期間や地域、業種などが合理的な範囲内である必要があります。過度に広範な制限は裁判で無効とされる可能性もあります。
第6条(本合意書に関する秘密保持)
合意書そのものの存在や内容を秘密として保持することを定めています。退職条件や金銭的な合意内容などが他の従業員に知られることで不公平感や混乱を招く可能性があるため、この条項が設けられています。
例えば、特別な退職条件で合意した場合などは、他の従業員に知られないよう配慮する必要があります。SNSなどで退職の詳細を公開することも控えるべきでしょう。
第7条(清算条項)
この条項は、本合意書に記載された事項以外に双方の間に債権債務関係がないことを確認し、将来的な紛争の可能性を排除するためのものです。これにより、後日になって「実は未払いの残業代がある」などの主張をされるリスクを減らすことができます。
例えば、退職金の上乗せ交渉の際に、この清算条項を含めることで、会社としては追加の金銭的リスクを遮断できます。労働審判や訴訟などあらゆる法的手段を放棄する旨も明記されており、最終的な合意であることを強調しています。