第1条(業務内容)
第2条(手数料及び費用)
第3条(委託業務に関わる責任)
第4条(顧客の限定)
第5条(競合品取扱の制限)
第6条(債権回収の禁止)
第7条(再委託の禁止)
第8条(信用の維持)
第9条(秘密保持)
第10条(代理行為の禁止)
第11条(名刺の使用)
第12条(雇用および災害補償)
第13条(表示行為の禁止)
第14条(製造物責任)
第15条(期限の利益の喪失、履行の停止、即時解除)
第16条(相殺)
第17条(遅延損害金)
第18条(有効期間)
第19条(合意管轄)
第20条(別途協議)
【3】逐条解説
第1条(業務内容)
この条文では、どんな商品を誰に売るために、具体的にどんな仕事を任せるのかを決めます。市場調査から販売方法のアドバイス、顧客との関係づくりまで、委託する業務の範囲を明確にしておくことで、後から「これはやってくれると思っていた」というすれ違いを防げます。また、委託先は勝手に動くのではなく、必ず依頼主の指示や了承を得てから仕事を進めるルールになっています。進捗状況の報告義務も定めているため、依頼主側は常に状況を把握できる仕組みです。
第2条(手数料及び費用)
報酬の計算方法と支払いのタイミングを定めています。重要なのは、顧客から商品代金が全額入金された場合のみ手数料が発生する点です。つまり、いくら営業活動を頑張っても、実際にお金が入ってこなければ報酬はありません。これによって、委託先にも確実な売上回収に協力してもらう仕組みになっています。また、営業活動にかかる交通費や通信費などの経費は全て委託先の負担という点も明記されており、予想外の費用請求を防ぐ効果があります。
第3条(委託業務に関わる責任)
委託先が勝手な判断で動いたり、トラブルを起こしたりした場合の責任について定めています。例えば、承認なしに大口の取引を進めて相手とトラブルになった場合、その損害は委託先が補償することになります。この条文があることで、委託先に慎重な行動を促す効果があります。
第4条(顧客の限定)
どの顧客にいくらまで売り込んでいいかを事前に決めておく規定です。委託先が勝手に信用調査もせずに大量の商品を販売してしまい、後で代金が回収できなくなるリスクを防ぎます。販売先の選定と金額設定は、依頼主の承認を得る必要があるということです。
第5条(競合品取扱の制限)
委託先が同じような商品を扱えないようにする条文です。せっかく自社商品の販売を任せているのに、裏では競合他社の商品も扱われていたら困りますよね。この規定によって、委託先には専念して自社商品の販売に注力してもらえる環境を作ります。
第6条(債権回収の禁止)
商品代金の回収は委託先がやってはいけないというルールです。お金の管理を委託先に任せてしまうと、不正やトラブルのリスクが高まります。販売活動は任せても、代金回収は必ず依頼主が直接行うことで、金銭管理の透明性を保ちます。
第7条(再委託の禁止)
委託先が勝手に別の会社に仕事を丸投げできないようにする条文です。信頼して任せた相手が、知らないところで第三者に業務を流してしまうと、品質管理も情報管理もできなくなってしまいます。契約上の権利を勝手に譲渡することも禁止されています。
第8条(信用の維持)
委託先の行動が自社の評判に直結するため、会社の名前や信用を傷つける行為を禁止しています。たとえば、無理な営業で顧客に迷惑をかけたり、不適切な発言で会社のイメージを損なったりする行為は、この条文によって防止します。
第9条(秘密保持)
契約期間中だけでなく、契約が終わった後でも、業務を通じて知った営業情報や経理情報を漏らしてはいけないというルールです。顧客リストや価格設定、販売戦略などの重要情報が外部に漏れるのを防ぎます。この規定は契約終了後も永続的に有効なので、非常に強力な守秘義務となっています。
第10条(代理行為の禁止)
委託先はあくまで販売活動のサポートをするだけで、会社を代表して契約を結ぶ権限はないことを明確にしています。例えば、委託先が勝手に「弊社の代理として契約します」と言って取引をしても、それは無効だということです。会社の名前を使ったパンフレットなども勝手に作れません。これによって、予期しない契約に会社が縛られるリスクを回避します。
第11条(名刺の使用)
業務を進める上で、委託先のスタッフが名刺を使うことは認めますが、それでも代理権はないことを確認しています。名刺の枚数も管理し、勝手に複製されないようにする仕組みです。契約が終わったら、使っていない名刺は全部返却してもらうルールになっており、終了後の不正使用も防ぎます。
第12条(雇用および災害補償)
委託先のスタッフと依頼主との間に雇用関係はないことを明記しています。つまり、委託先の社員が仕事中にケガをしても、依頼主には補償の義務がないということです。あくまで独立した会社同士の取引であり、労働者としての保護を求められる関係ではないことを確認する重要な条文です。
第13条(表示行為の禁止)
委託先が勝手に「製造元」や「総販売代理店」といった肩書きを名乗って商品を売ることを禁止しています。そうした表示は顧客に誤解を与え、後々のトラブルの原因になります。依頼主が書面で許可した場合のみ、そうした表現を使えるという厳格なルールです。
第14条(製造物責任)
商品に欠陥があって事故が起きたり、その可能性がある場合、依頼主の判断で契約を即座に停止または解除できるという条文です。製品事故は企業の存続に関わる重大事なので、迅速な対応を可能にする規定が設けられています。委託先は、そうした事態を把握したら直ちに報告する義務があります。
第15条(期限の利益の喪失、履行の停止、即時解除)
委託先の経営状態が悪化した場合や、契約違反があった場合に、すぐに契約を解除できる規定です。例えば、破産申立があったり、手形が不渡りになったりした場合、待っている余裕はありません。この条文によって、リスクが顕在化した瞬間に取引を止められるため、被害を最小限に抑えられます。
第16条(相殺)
もし委託先がお金を払わなければならない状況になった時、依頼主側が払うべきお金と差し引きできるという規定です。お互いに債権債務があるなら、わざわざ両方とも現金でやり取りせず、相殺で処理できるので効率的です。特に手形の場合でも、わざわざ現物を渡さなくても相殺できるというのが実務的な配慮になっています。
第17条(遅延損害金)
支払いが遅れた場合、年3%の利息を付けて払ってもらうという規定です。これによって、期限を守らない相手に対して金銭的なペナルティを課すことができ、きちんと期日通りに支払ってもらうインセンティブになります。
第18条(有効期間)
契約期間は1年間で、期限の1か月前までに解約の申し出がなければ自動更新されます。毎年契約を結び直す手間が省ける一方、解約したい場合は早めに伝える必要があります。長期的な関係を前提とした条文設計です。
第19条(合意管轄)
もし裁判になった場合、どこの裁判所で争うかを事前に決めておく条文です。これがないと、相手の地元で裁判をしなければならず、時間も費用も余計にかかってしまいます。自社に有利な場所を指定しておくことで、万が一の紛争時の負担を軽減できます。
第20条(別途協議)
契約書に書いていないことや、解釈が分かれることがあれば、話し合って決めましょうという条文です。契約書ですべてを網羅することは不可能なので、この条文によって柔軟な対応が可能になります。
【4】活用アドバイス
この契約書を使う際は、まず第1条の商品・顧客・委託業務の欄を具体的に埋めることから始めましょう。「商品」の欄には品名や型番まで書き込み、「顧客」は地域や業種で範囲を指定すると明確になります。委託業務も「①から④まで全部」とするのか、一部だけにするのかを検討してください。
第2条の手数料については、売上の何パーセントにするのか、それとも1件あたりいくらという定額制にするのか、自社のビジネスモデルに合わせて設定します。支払いサイクルも月末締め翌月末払いなのか、四半期ごとなのか、具体的に記入しましょう。
契約前には必ず相手企業の信用調査を行い、取引実績や財務状況を確認することをお勧めします。第15条で経営悪化時の対応は定めていますが、最初から問題のある相手と契約しないことが一番の予防策です。
契約期間は第18条で1年となっていますが、最初は半年などの短期間で様子を見て、うまくいくようなら更新するという使い方も可能です。テンプレートの期間を自社の状況に合わせて変更して構いません。
【5】この文書を利用するメリット
販売業務を外部に委託する際の基本的な事項が網羅されているため、ゼロから契約書を作る手間が大幅に省けます。弁護士に依頼すれば数万円から数十万円かかる契約書作成を、この雛形を使えば低コストで実現できます。
20条にわたる詳細な規定によって、想定されるトラブルをあらかじめ予防する仕組みが整っています。特に代理行為の禁止や秘密保持、競合品の制限など、委託取引でよく問題になるポイントがしっかりカバーされています。
Word形式で提供されるため、自社の商品や業界の特性に合わせて自由にカスタマイズできます。条文を追加したり、不要な部分を削除したりといった柔軟な対応が可能です。
この契約書があることで、委託先との関係が明確になり、お互いに安心して取引を進められます。口約束だけでは曖昧になりがちな責任範囲や報酬体系が文書化されるため、後々の言った言わないのトラブルを防げます。
また、取引先や金融機関に対しても、きちんとした契約関係に基づいて事業を展開していることを示せるため、社会的な信用度も向上します。ビジネスの透明性を高める効果も期待できる文書です。