【1】書式概要
この「〔改正民法対応版〕設備の保守点検業務委託契約書」は、設備の維持管理を外部業者に委託する際に必要となる正式な取り決めです。オフィスビル、工場、マンションなどの所有者や管理者が、設備の安全性確保と性能維持のための定期点検・保守作業を専門業者に依頼する場合に活用できます。
改正民法に準拠した内容となっており、委託業務の範囲、委託料、支払方法、報告義務などの基本事項から、機密保持や個人情報保護、反社会的勢力の排除といった近年重要視される条項まで網羅しています。
特に、設備トラブルによる責任の所在を明確にし、万が一の際の賠償責任についても明記しているため、委託者・受託者双方のリスク管理に役立ちます。
不動産管理会社、ビル管理会社、マンション管理組合、工場経営者などが設備管理業者と契約を結ぶ際に、スムーズな業務開始と安定した関係構築のための土台となる実用的な契約書です。
【2】条文タイトル
第1条(総則)
第2条(委託料)
第3条(支払方法)
第4条(報告書)
第5条(注意義務等)
第6条(教育)
第7条(機密保持)
第8条(個人情報の保護)
第9条(賠償責任)
第10条(契約の解除)
第11条(反社会的勢力の排除)
第12条(本契約の有効期間)
【3】逐条解説
第1条(総則)
委託者が受託者に対して設備の保守点検を依頼する基本的な関係を定めています。具体的な設備名称と所在地を記載することで、契約対象を明確にします。例えば、「エレベーター3基(メーカー名・型番)」「〇〇ビル地下1階機械室内の空調設備一式」などと具体的に記載することが重要です。曖昧な記載は後々のトラブルの原因となりますので注意しましょう。
第2条(委託料)
保守点検業務の対価として支払う金額を月額で定めています。金額は設備の種類、規模、点検頻度などによって異なります。たとえば中規模オフィスビルの空調設備一式なら月額10万円前後、大型商業施設の消防設備一式なら月額15〜20万円程度が相場となることもあります。物価変動に対応するため、数年契約の場合は料金改定の条項を別途設けることも検討すべきでしょう。
第3条(支払方法)
委託料の支払い期日と方法を定めています。通常は月末締めの翌月末支払いなど、支払サイトを明確にします。振込手数料の負担についても明記しておくと良いでしょう。中小企業の取引では特に、下請法に配慮した適切な支払期日の設定が求められます。
第4条(報告書)
点検作業後の報告義務を規定しています。報告書には点検日時、作業者名、点検箇所、点検結果、不具合箇所とその対応策などを記載します。最近ではタブレット端末で撮影した写真付きの電子報告書が主流になってきており、報告形式についても明記しておくと良いでしょう。故障の早期発見や予防保全につながる重要な条項です。
第5条(注意義務等)
受託者側の人員確保と、委託者による不適格者排除の権利について定めています。高度な技術や資格が必要な設備の場合は、有資格者の配置義務を追記することも検討すべきです。例えば特殊建築物の設備点検には建築物環境衛生管理技術者、消防設備点検には消防設備士など、法令で資格が求められる場合があります。
第6条(教育)
受託者が自社従業員や下請業者に対し、適切な教育訓練を行う義務を規定しています。専門知識や安全管理に関する定期的な研修実施が求められます。具体的な教育内容や頻度についても記載すると良いでしょう。昨今は技術革新が早いため、新技術に対応した教育の実施も重要となっています。
第7条(機密保持)
業務上知り得た情報の守秘義務を定めています。設備の構造や配置図面、セキュリティシステムの情報などは外部に漏れると大きなリスクとなります。従業員や下請業者の漏洩責任を受託者が負うことも明記されており、受託者はこれらの情報管理を徹底する必要があります。情報漏洩時の違約金条項を追加することも検討に値します。
第8条(個人情報の保護)
個人情報保護法に基づく取り扱いを定めています。設備管理の過程で入居者や利用者の個人情報に触れる機会があるため、その適切な管理を求める条項です。特に防犯カメラの映像データなどは慎重な取り扱いが求められます。近年は個人情報保護に関する社会的関心が高まっているため、より詳細な規定が望ましい場合もあります。
第9条(賠償責任)
受託者の過失による事故発生時の責任を明確にしています。例えば、点検不備による設備故障や、作業中の事故による第三者への損害などが該当します。保険加入義務や補償限度額についても記載すると、より明確になります。実際には責任の範囲や限度額について交渉の余地があるケースも多いです。
第10条(契約の解除)
契約解除の手続きと要件を定めています。通常の解約予告と、債務不履行等による即時解除の両方について規定しています。予告期間は業界や設備の複雑さによって3ヶ月から6ヶ月程度が一般的です。引継ぎ期間の設定や、解約時の業務引継ぎ義務なども追記すると安心です。
第11条(反社会的勢力の排除)
取引先が反社会的勢力でないことを相互に確認し、該当した場合の契約解除権を定めています。昨今のコンプライアンス意識の高まりから、ほぼすべての商取引契約に必須の条項となっています。下請け業者の管理まで求める条項となっており、受託者は自社の取引先管理にも注意を払う必要があります。
第12条(本契約の有効期間)
契約期間と自動更新について定めています。設備の保守点検は継続性が重要なため、多くの場合1年単位の自動更新条項が付されます。更新時の料金見直し条項を入れておくと、長期契約でも柔軟に対応できます。契約終了時の引継ぎ義務や最終点検報告の提出義務なども明記しておくと良いでしょう。