【1】書式概要
この配達業務委託契約書の雛型は、食品デリバリーや小包配達などの自転車配達業務を外部の個人事業主に委託する企業向けに作成された契約書です。委託者(企業側)に有利な条件設定となっており、業務内容の明確化から支払条件、責任範囲、秘密保持まで幅広く網羅しています。
特に、本契約が民法上の請負契約として位置づけられていること、配達業務に必要な自転車の貸与条件、業務放棄時の損害賠償責任、評価期間中の委託料調整など、委託者の権利を保護する条項が充実しています。また、契約期間や更新条件、支払方法、秘密情報や個人情報の取扱いなども詳細に規定されており、トラブル発生時のリスク軽減に配慮した内容となっています。
この雛型は改正民法に対応しており、2020年の債権法改正後の最新の法的要件を満たしています。契約書の各条項は空欄となっている部分に具体的な条件を記入するだけで、すぐに実務で使用できる実用的な設計になっています。フードデリバリーサービスやクイック配送サービスを展開する企業が、個人配達員とのトラブルを未然に防ぎ、安定した業務委託関係を構築するための必須ツールです。
〔条文タイトル〕
第1条(目的)
第2条(乙の義務)
第3条(有効期間)
第4条(委託料)
第5条(支払日・支払方法)
第6条(権利義務の譲渡)
第7条(秘密情報)
第8条(個人情報)
第9条(損害賠償)
第10条(契約の解除と期限の利益の喪失)
第11条(不可抗力免責)
第12条(裁判管轄)
第13条(規定外事項)
【2】逐条解説
第1条(目的)
この条項では契約の基本的な枠組みを定めています。甲(委託者)が乙(受託者)に対して、ピッキング作業、配達業務、およびそれに関連する業務を委託する関係を明確にしています。特筆すべき点は、本契約が民法上の委任契約ではなく請負契約として位置づけられていることを明示している点です。これにより、業務の完遂責任が乙に課せられ、甲による指揮命令関係が発生しないことを法的に担保しています。
第2条(乙の義務)
乙の具体的な義務を規定しています。甲は必要に応じて自転車を貸与できますが、乙は賠償責任保険への加入義務を負います。また第2項では、乙が業務を放棄した場合の責任を厳格に定めており、委託料の不払いに加えて損害賠償義務が発生することを明記しています。この条項は委託者保護の観点から設けられた条項です。
第3条(有効期間)
契約期間(6ヶ月間)と自動更新の仕組みを規定しています。特に評価期間中に甲が乙の能力に疑義を感じた場合、甲は一方的に契約を解約できる権利を留保しています。これにより、能力不足の受託者との契約を早期に終了させる柔軟性を確保しています。
第4条(委託料)
委託料の金額と支払条件を定めています。特徴的なのは評価期間が設けられており、この期間中は通常より低い報酬体系となっていることです。また、乙は納期内であれば自身の裁量で業務遂行できること、標準的な稼働時間・日数が例示されていることなど、業務委託の実態に沿った規定となっています。
第5条(支払日・支払方法)
委託料の支払時期と方法を規定しています。月末締め翌月末払いという一般的な支払サイクルが採用されており、振込手数料は乙負担とされています。また、実費については事前に甲の許可を得たもののみ支払い対象となる制限が設けられています。
第6条(権利義務の譲渡)
契約上の権利義務を第三者に譲渡・引き受けさせることを禁止する条項です。これにより、甲が契約した特定の乙による業務遂行が担保され、無断での業務の再委託などを防止しています。
第7条(秘密情報)
秘密情報の定義と取扱いについて規定しています。秘密情報の範囲、秘密情報から除外される事項、開示方法、第三者への開示禁止、秘密保持期間(3年間)などが詳細に定められており、業務委託に伴う情報漏洩リスクを低減する役割を果たしています。
第8条(個人情報)
個人情報保護法に基づく個人情報の取扱いについて規定しています。簡潔な条文ですが、法的義務を明確化することで、個人情報の適切な管理を求めています。
第9条(損害賠償)
契約違反による損害賠償請求の権利を規定しています。相手方の責めに帰すべき事由により損害を被った場合に、その賠償を請求できることを定めています。
第10条(契約の解除と期限の利益の喪失)
契約解除の条件を詳細に規定しています。重大な違反行為、経営状況の悪化、義務不履行などの事由が発生した場合の解除権と、それに伴う期限の利益喪失について定めています。特に第1項では催告不要で即時解除できる重大事由を列挙しており、リスク管理の観点から重要な条項となっています。
第11条(不可抗力免責)
天災地変や法令の改廃など、当事者の責めに帰すことのできない不可抗力による契約不履行について免責を定めています。配達業務は天候などの外部要因に影響されやすいため、この条項は実務上重要な意味を持ちます。
第12条(裁判管轄)
紛争発生時の裁判管轄を甲の住所地を管轄する裁判所に限定する専属的合意管轄条項です。これにより、甲は自らに有利な地域で訴訟を行うことができます。
第13条(規定外事項)
契約書に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合の対応方法として、甲乙協議による解決を定めています。これは契約書だけでは対応しきれない状況に柔軟に対処するための条項です。