【1】書式概要
この「肖像権利用許諾契約書」は、個人の肖像を商業的に利用する際に必要となる契約の雛形です。芸能人やモデルなど、人物の写真や映像を広告、出版物、Webサイトなどで使用する場合に、権利者と使用者の間で取り交わすための書式となっています。
特に許諾者(肖像の持ち主)に有利な条件設定がなされているため、タレントやインフルエンサー側の代理人として契約を結ぶ場合に最適です。
実際の使用場面としては、広告代理店がタレントの写真を商品PRに使用したい場合や、出版社が著名人の肖像を書籍に掲載する際、またWebメディアが取材した人物の画像をオンライン配信する場合などが挙げられます。肖像の使用範囲や期間、対価の支払い方法まで詳細に規定されており、後々のトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。改正民法に対応しているため、最新の法規制に準拠した内容となっています。
当事者間の権利義務関係を明確にし、特に肖像を提供する側の権利を守るための各種条項が網羅されているので、芸能事務所やマネジメント会社にとって心強い内容です。肖像の無断使用や目的外使用を防ぎ、適切な対価を確保するための必須書類といえるでしょう。
〔条文タイトル〕
第1条(定義)
第2条(使用許諾)
第3条(使用対価)
第4条(使用)
第5条(販売)
第6条(使用状況の報告・記録)
第7条(契約有効期間)
第8条(使用の終了)
第9条(権利の保全)
第10条(解除)
第11条(専属的合意管轄裁判所)
第12条(協議事項)
【2】逐条解説
第1条(定義)
本条では「本件肖像」という契約上の重要な用語を明確に定義しています。単に写真だけでなく、演劇、映画、テレビ番組など、あらゆる媒体における肖像が対象となることを明確にしています。この広範な定義により、許諾者の肖像が様々な形で使用される可能性をカバーし、後のトラブルを防止します。例えば、タレントAさんがファッション誌の撮影をした場合、その写真だけでなく、撮影時の動画素材なども「本件肖像」に含まれることになります。
第2条(使用許諾)
本条は契約の核心部分であり、肖像の使用許諾範囲を明確に規定しています。特に第1項では掲載、複製、編集など具体的な許諾行為を列挙し、第2項では目的外使用や第三者への譲渡を禁止しています。第3項では使用地域を日本国内に限定することで、国際的な無断使用から肖像権者を保護します。例えば、化粧品広告のために撮影された写真を、許可なく海外のSNS広告に流用することはできません。このように肖像権者の利益を守る条項となっています。
第3条(使用対価)
対価の支払いについて定めた本条は、肖像使用料の算定方法と支払いタイミングを明確にしています。商品販売価格の一定割合を対価とする歩合制を採用し、四半期ごとの集計・支払いを義務付けることで、安定的な収入を確保できる仕組みです。例えば、タレントの写真を使用した商品が1000円で販売された場合、契約で定めた割合(例えば10%)を乗じた100円が肖像権者への対価となります。これにより販売実績に応じた公平な対価が得られます。
第4条(使用)
肖像使用に関するガイドライン遵守義務を定めたこの条項は、イメージ管理が重要な芸能人やモデルにとって非常に重要です。許諾者が定めるガイドラインの変更があった場合にも対応を義務付けることで、時代や状況の変化に柔軟に対応できます。例えば、かつては問題なかった表現が社会情勢の変化で不適切になった場合、ガイドラインを変更することで対応できるのです。特定の政治団体のイメージと結びつけないなど、肖像権者のブランド保護に役立ちます。
第5条(販売)
本条は簡潔ですが、販売方法について肖像権者の指針に従うことを義務付ける重要な条項です。例えば、高級ブランドのイメージを持つタレントの写真を使った商品が、ディスカウントストアで投げ売りされるような事態を防止できます。肖像権者のブランディングや市場での評価を守るための条項であり、販売チャネルや価格設定などについて一定の管理権を確保します。
第6条(使用状況の報告・記録)
透明性確保のための条項として、定期的な報告義務と監査権を規定しています。販売数や金額を四半期ごとに報告させ、必要に応じて立ち入り監査も可能とすることで、不正な報告や対価の未払いを防止します。例えば、化粧品メーカーが芸能人の写真を使用した商品の販売実績を過少申告した場合、この条項に基づいて記録監査を行い、適正な対価を請求できます。肖像権者の収入を適切に確保するための実効性ある条項です。
第7条(契約有効期間)
契約期間を明確に定め、自動更新条項も設けています。期間満了の6ヶ月前までに意思表示がなければ1年間自動延長されるため、継続的な関係を安定させつつも、不要となった場合には適切なタイミングで終了できる柔軟性を持たせています。例えば、アイドルグループの写真を使用したグッズ販売の契約などで、人気の継続に応じて自動更新されるため、双方にとって使いやすい条項となっています。
第8条(使用の終了)
使用者側からの契約終了手続きを定めています。商品販売などの終了を決めた場合、速やかに通知することで契約終了できる条項です。例えば、季節限定で有名モデルの写真を使った商品を販売していたメーカーが、シーズン終了とともに契約を終了したい場合に活用できます。明確な終了手続きを設けることで、契約関係の曖昧さを防止します。
第9条(権利の保全)
権利保護のための協力義務を定めた本条は、第三者による権利侵害への対応策を規定しています。特に第三者による権利侵害発見時の連絡義務は、インターネット上での無断使用など、権利者自身では把握しきれない侵害行為を早期に発見し対処するために重要です。例えば、契約した出版社が街中で自社が許諾を得た芸能人の写真が無断で使用された広告を発見した場合、すぐに権利者に連絡する義務があります。また第3項では使用者側の責任で第三者からのクレームに対応することを定め、権利者の負担軽減を図っています。
第10条(解除)
契約解除の条件を詳細に規定しており、特に第2項では催告不要で直ちに解除できる重大な事由を列挙しています。特に注目すべきは第6号の反社会的勢力排除条項で、近年の契約書では標準的に盛り込まれる重要条項です。例えば、契約後に相手方が暴力団関係者と取引があることが判明した場合、即座に契約解除できる強力な条項となっています。芸能人やモデルのイメージ保護の観点からも重要な条項です。
第11条(専属的合意管轄裁判所)
紛争発生時の裁判管轄を特定の裁判所に限定する条項です。地方在住の肖像権者が東京の企業と契約する場合など、遠隔地での訴訟対応負担を軽減するために、自分に便利な裁判所を指定できます。例えば、大阪在住のタレントが東京の広告代理店と契約する場合、大阪地方裁判所を管轄裁判所として指定することで、万一の紛争時の負担を軽減できます。
第12条(協議事項)
契約に定めのない事項や解釈について疑義が生じた場合の対応方法を定めています。民法などの法令に基づき誠実に協議することを明記し、当事者間の信頼関係を重視する姿勢を示しています。例えば、契約締結時点では想定していなかったSNS上での新たな使用形態が登場した場合なども、この条項に基づいて協議し、解決を図ることができます。柔軟な対応を可能にする重要な締めくくりの条項です。