第1条(契約の目的)
この条項は契約の基本的な枠組みを定めるもので、甲(委託者)が乙(受託者)に測量業務を委託し、乙がこれを受け入れるという契約の骨格を示しています。この条項があることで、文書全体が「業務委託契約」であることが明確になります。例えば、測量会社に土地の境界確定のための測量を依頼する際、この条項によって委託関係が明確に規定されます。
第2条(業務内容)
契約の対象となる具体的な業務内容を規定しています。別紙仕様書に詳細が記載されることで、業務範囲を明確にし、後々の「これも含まれていると思った」といったトラブルを防止します。例えば、住宅建設予定地の測量を依頼する場合、この条項と仕様書によって「基準点測量」「現況測量」などの具体的業務内容が明確になります。
第3条(履行期間)
業務の開始日と完了期限を明記することで、スケジュール管理の基準を設けています。工事計画や土地取引など、測量結果を前提とした次のステップがあることが多いため、この期間設定は重要です。例えば「契約締結日から3ヶ月以内」などと定めることで、プロジェクト全体の進行管理ができます。
第4条(委託料)
報酬額とその支払条件を明確にしています。特に重要なのは、成果物の検査合格後に支払うとしている点で、これにより品質確保と対価の適切な関係が担保されます。例えば「金300万円(税込)」と明記し、支払いは検査合格後30日以内と規定することで、金銭トラブルを防止できます。
第5条(業務の管理)
測量業務を実際に管理する責任者を定め、指示系統を明確化しています。これにより、委託者は誰に指示すべきかが明確になり、業務の円滑な進行が期待できます。例えば、測量会社側の現場責任者が誰かを書面で通知し、委託者はその人物に対して「この部分をより詳細に測量してほしい」などの指示ができます。
第6条(業務計画書の提出)
受託者に業務計画書の提出を義務付けることで、業務の進め方を委託者が確認・承認できるようにしています。例えば、いつどの区画を測量するか、どのような機器を使用するかなど、具体的な計画を契約締結後14日以内に提出することで、委託者は進捗状況を把握できます。
第7条(委託業務の調査等)
委託者が業務の進捗や実施状況を確認する権利を保障しています。例えば、委託者が「思ったより作業が進んでいないのではないか」と懸念した場合、現地調査を行ったり、進捗報告を求めたりする権利があることを明確にしています。
第8条(成果物の提出)
業務完了時に提出すべき成果物とその期限について規定しています。測量業務では、測量図面やデータなどが成果物となりますが、これらを期限内に提出する義務が受託者にあることを明確にしています。例えば、基準点網図や現況平面図などを履行期間内に提出することが求められます。
第9条(検査及び引渡し)
成果物の品質確保のための検査手続きを定めています。委託者が14日以内に検査を行い、不備があれば修正を求めることができる権利を保障しています。例えば、測量データに誤りがあった場合、委託者は修正を求め、再検査を行うことができます。合格した時点で初めて成果物の引渡しが完了したとみなされます。
第10条(契約不適合責任)
改正民法に対応した重要条項です。従来の「瑕疵担保責任」に代わるもので、引き渡された成果物に種類、品質、数量の点で契約不適合があった場合の対応を規定しています。例えば、提出された測量図に誤りがあった場合、委託者は修補を求めることができ、それが行われない場合は委託料の減額を請求できます。この責任は成果物引渡しから2年以内に行使する必要があります。
第11条(権利義務の譲渡等の禁止)
契約上の権利・義務を第三者に譲渡することを原則として禁止しています。例えば、受託者が「この測量業務の権利を別の会社に売却する」といったことができないようにするための条項です。ただし、委託者の承諾があれば例外的に譲渡が可能です。
第12条(再委託の禁止)
受託者が業務を丸投げすることを防ぐための条項です。全部の再委託は禁止され、一部であっても委託者の事前承諾が必要とされています。例えば、主要な測量業務は受託者自身が行い、特殊な測量の一部だけを専門業者に再委託する場合でも、書面による承諾が必要です。
第13条(秘密保持)
測量業務で知り得た情報の秘密保持義務を定めています。契約終了後も5年間は守秘義務が継続します。例えば、土地開発計画に関わる測量の場合、その計画情報を漏らさないよう義務付けられています。この義務は従業員や再委託先にも及びます。
第14条(成果物の著作権)
測量図面等の成果物に関する著作権の帰属を明確にしています。成果物引渡しと同時に著作権が受託者から委託者に移転することで、委託者は自由に成果物を活用できます。例えば、測量図をもとに設計図を作成したり、複製したりする権利が委託者に移ります。
第15条(第三者の権利侵害)
成果物が第三者の権利を侵害していないことを保証する条項です。例えば、他者の測量データを無断流用した場合など、第三者との間でトラブルが生じた際は、受託者の責任と費用で解決することを義務付けています。
第16条(損害賠償)
契約違反によって生じた損害の賠償責任を定めています。例えば、守秘義務違反によって委託者の事業計画が漏洩し損害が生じた場合、受託者はその損害を賠償する義務があります。
第17条(契約の解除)
委託者が契約を解除できる条件を列挙しています。受託者が義務を履行しない場合や期限内に完了する見込みがない場合など、重大な契約違反があれば催告なしで即時解除できます。例えば、測量作業がまったく進んでいない場合、委託者は契約を解除して別の業者に依頼し直すことができます。
第18条(反社会的勢力の排除)
暴力団等の反社会的勢力との関係遮断を明確にする条項です。両当事者が反社会的勢力でないことを相互に確認し、違反があれば契約解除できるとしています。これは建設・不動産関連業界での取引における標準的な条項となっています。
第19条(協議)
契約書に明記されていない事項や解釈に疑義が生じた場合の対応方法を定めています。当事者間の協議によって解決することを原則としており、例えば、天災による業務遅延など予期せぬ事態が発生した場合も、まずは話し合いで解決を図ることを示しています。
第20条(管轄裁判所)
紛争が生じた場合の裁判管轄を定めています。委託者の所在地を管轄する裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることで、紛争解決の場所を明確にしています。例えば、東京の委託者と大阪の受託者の間で紛争が生じた場合、東京の裁判所で争うことになります。
仕様書について
契約書に添付される仕様書は、業務内容の詳細を具体的に示す重要な文書です。業務の目的、測量の種類と数量、成果品の形式、適用される基準や規程、留意事項などが詳細に記載されています。例えば「4級基準点測量:20点」「平板測量:約10ヘクタール」といった具体的な数量や、「現況平面図(縮尺1/500)」などの成果品の仕様を明確にすることで、業務範囲や品質基準が明確になります。仕様書は契約書と一体となって契約内容を構成するため、慎重な作成と確認が必要です。