【1】書式概要
この有価証券担保差入証は、企業間の取引において債務の確実な履行を保証するための重要な契約書です。株式や国債といった有価証券を担保として差し入れることで、取引相手に対する信用力を高め、スムーズな商取引を実現します。
特に融資を受ける際や継続的な商取引を行う場合、金融機関や取引先から担保の提供を求められることがあります。現金担保と異なり、有価証券担保は資金繰りへの影響を最小限に抑えながら信用補完ができる優れた手段です。改正民法に対応したこの書式により、現代の取引慣行に適した担保設定が可能になります。
中小企業が銀行融資を受ける際の追加担保や、商社同士の継続取引における与信枠設定、さらには建設業界での工事代金保証など、様々な業界で活用されています。適切な担保設定により、取引先との信頼関係を深めつつ、事業拡大の機会を確実に掴むことができるでしょう。
【2】条文タイトル
第1条(担保の処分)
第2条(清算)
第3条(増資新株)
第4条(免責条項)
【3】逐条解説
第1条(担保の処分)について
この条項は担保権者が担保を現金化する方法を定めています。債務者が約束通りに支払いを行わなかった場合、担保として預かった株式や国債を売却して回収に充てることができます。例えば、月末の支払期日に代金が入金されなかった場合、事前通知なしに市場で担保株式を売却し、その代金から手数料を差し引いた金額を未払い債務に充当できます。また、現金化せずに株式そのものを債務の代わりに取得することも可能で、これを代物弁済といいます。
第2条(清算)について
担保を処分しても債務が完全に解消されない場合の取り扱いを規定しています。担保価値が債務額を下回る状況では、残った債務について債務者が即座に支払う義務を明確にしています。例えば、1000万円の債務に対して800万円相当の株式を担保としていた場合、株価下落により担保売却で600万円しか回収できなければ、残り400万円を直ちに現金で支払わなければなりません。
第3条(増資新株)について
担保として差し入れた株式について増資が行われた場合の対応を定めています。株主には新株引受権が付与されますが、この権利も含めて担保の範囲とし、実際に新株を取得した場合の費用負担も債務者が行います。例えば、担保株式を保有する会社が1株につき1株の割合で新株を発行する場合、その新株引受権も担保に追加され、担保権者が新株購入資金を立て替えた際は債務者がその費用を負担します。
第4条(免責条項)について
印鑑照合に関する免責事項を規定しています。担保権者が届出印鑑と相当の注意をもって照合確認した場合、万が一印鑑偽造等の事故があっても、担保権者の責任を免除し、債務者が責任を負うことを明確にしています。例えば、担保変更の依頼書に押印された印鑑が精巧な偽造印であった場合でも、通常の注意義務を果たして照合していれば、担保権者に損害賠償責任は生じず、債務者側で対応することになります。