【1】書式概要
この書道作品制作請負契約書は、書道家や書道作品の制作者と依頼主との間で交わす正式な契約書のテンプレートです。令和時代の改正民法に対応しており、書道作品の委託から納品までの一連のプロセスを明確に定めることで、双方のトラブルを未然に防ぐことができます。
このテンプレートは、個人・法人問わず書道作品の制作依頼を受ける書道家や、逆に企業や個人で書道作品を依頼する方にとって実用的な内容となっています。年賀状用の書や、開店祝いの額、企業のロゴデザインの元になる書など、様々な用途に対応できます。
〔条文タイトル〕
第1条(契約の目的)
第2条(制作物の仕様)
第3条(制作工程)
第4条(納期及び納入)
第5条(検収)
第6条(報酬及び支払方法)
第7条(所有権の移転)
第8条(危険負担)
第9条(権利関係)
第10条(保証)
第11条(維持管理)
第12条(守秘義務)
第13条(不可抗力)
第14条(契約の解除)
第15条(損害賠償)
第16条(反社会的勢力の排除)
第17条(権利義務の譲渡禁止)
第18条(協議事項)
第19条(合意管轄)
【2】逐条解説
第1条(契約の目的)
契約の基本的な枠組みを定める条項です。書道作品の制作と引き渡し、それに対する報酬支払いという基本的な約束事を明記しています。例えば、「○○神社の看板文字を制作し納品する」といった具体的な目的を念頭に置くと良いでしょう。
第2条(制作物の仕様)
作品の具体的な仕様を細かく定める重要な条項です。実際に私が友人の開業医院のために額を制作した際は、「楷書体、金泥使用、60cm×90cmサイズ、フレーム付き」など細部まで決めることで、イメージのずれを防ぐことができました。使用目的も明記することで、適切な素材選びができます。
第3条(制作工程)
制作の段階を明確化し、各段階での確認手続きを定めています。ラフスケッチから試作品、本制作までの流れは、例えば結婚式の席札など納期が厳しい案件でも計画的に進められるよう工程を可視化するのに役立ちます。
第4条(納期及び納入)
納品の日時や場所、運送方法などを明確にする条項です。私の経験では、特に企業の周年記念式典用の作品など、特定の日程に間に合わせる必要がある場合に重要です。壊れやすい書作品の運送方法についても具体的に決めておくと安心です。
第5条(検収)
作品の検査と承認のプロセスを定めています。例えば、企業のロゴに使う文字を制作した際、微妙なバランス調整を2回ほど行いましたが、この条項のおかげで修正回数と範囲が明確でした。
第6条(報酬及び支払方法)
報酬額と支払い方法、時期を明確に定める条項です。特に大型の作品では材料費も高額になるため、着手金の設定は制作者側にとって重要です。私が経験した6畳間の襖絵の制作では、材料調達のために着手金が必要でした。
第7条(所有権の移転)
作品の所有権がいつ依頼者に移るかを明確にしています。全額支払い完了後に所有権が移転するため、万が一支払いがなされない場合の作品の権利が保護されます。
第8条(危険負担)
作品の破損や損害が生じた場合の責任分担を明確にしています。特に配送中のトラブルなど、どちらに責任があるのかを明確にすることで、後々の紛争を防止できます。
第9条(権利関係)
著作権の帰属と使用許諾の範囲を定める重要な条項です。例えば、商業施設の看板などでは、その写真がSNSで拡散される可能性もあるため、使用範囲を事前に明確にしておくことが重要です。
第10条(保証)
作品が第三者の権利を侵害していないことの保証と、問題発生時の対応を定めています。例えば古典の一部を引用する場合など、著作権の問題がないことを保証する内容です。
第11条(維持管理)
作品の適切な保存方法や管理方法についての指示と責任を明確にします。特に和紙や墨を使った伝統的な書作品は湿度管理が重要なので、具体的な保存方法を伝えることで作品の長期保存に役立ちます。
第12条(守秘義務)
契約に関する情報の秘密保持を定めています。特に企業のスローガンや未公開の商品名などを書く場合は、情報漏洩を防ぐ条項として重要です。
第13条(不可抗力)
天災地変などの不可抗力による契約履行困難時の対応を定めています。2020年のコロナ禍では多くのイベント中止に伴い書の注文がキャンセルになるケースもあり、このような条項の重要性が再認識されました。
第14条(契約の解除)
契約を解除できる条件を明確にしています。例えば依頼者の経営状況が急変した場合など、契約を継続することが難しい状況での対応方法を定めています。
第15条(損害賠償)
契約違反による損害発生時の賠償責任を定めています。特に展示会など特定の機会に合わせた作品制作では、納期遅延が大きな損害につながる可能性があるため重要です。
第16条(反社会的勢力の排除)
反社会的勢力との関係がないことを保証し、違反時の対応を定める条項です。公共施設などに飾られる書作品の制作では特に重要性が高まります。
第17条(権利義務の譲渡禁止)
契約上の権利義務を第三者に譲渡することを禁止する条項です。書作品は作者の個性が重要なため、制作者が途中で変わることを防ぐ意味があります。
第18条(協議事項)
契約に定めのない事項や解釈の疑義が生じた場合の対応方法を定めています。書作品の制作過程では予期せぬ状況も発生するため、誠実な協議による解決を図る姿勢が大切です。
第19条(合意管轄)
紛争が生じた場合の管轄裁判所を定めています。特に遠方の依頼者との契約では、どこの裁判所で争うかが重要になるため、事前に決めておくことで無用な混乱を避けられます。