【1】書式概要
この規約は、インターネット上で店舗検索サービスを運営する事業者が、サービスに登録する店舗運営者との間で締結する契約書の雛型です。近年のデジタル化により、グルメサイトや美容院検索、小売店舗の検索プラットフォームなど、様々な業界で店舗検索サービスが急速に普及しています。
このような検索プラットフォームを運営する際、登録店舗との権利関係を明確にし、サービス運営上のトラブルを未然に防ぐことが極めて重要です。特に改正民法に対応した内容となっており、現在の商慣行に即した契約関係を構築できます。
実際の使用場面としては、新規で店舗検索サイトを立ち上げる企業、既存の検索サービスの規約を見直したい運営会社、フランチャイズ本部が加盟店向けの検索システムを構築する際などが想定されます。また、地域密着型の商店街アプリや業界特化型の検索プラットフォームでも幅広く活用いただけます。
サービス利用料金の設定、知的財産権の取り扱い、投稿データの利用許諾、禁止行為の明確化など、実務上重要なポイントが網羅的に規定されているため、安心してサービス運営を開始できる内容となっています。
【2】条文タイトル
第1条(目的)
第2条(定義)
第3条(会員登録)
第4条(登録事項の変更)
第5条(パスワードおよびユーザーIDの管理)
第6条(料金および支払方法)
第7条(禁止事項)
第8条(本サービスの停止等)
第9条(権利帰属)
第10条(投稿データの利用)
第11条(投稿データの削除)
第12条(本サービスの内容の変更、終了)
第13条(保証の否認および免責)
第14条(秘密保持)
第15条(利用停止等)
第16条(退会)
第17条(本サービスの利用のためのシステム)
第18条(本規約等の変更)
第19条(連絡/通知)
第20条(利用者情報の取扱い)
第21条(本サービスに掲載される広告)
第22条(本サービスの提供の中断)
第23条(反社会的勢力の排除)
第24条(譲渡等の禁止)
第25条(完全合意)
第26条(分離可能性)
第27条(存続規定)
第28条(協議解決)
第29条(準拠法および管轄裁判所)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条文は規約全体の基本方針を示すものです。店舗検索サービスという特殊な事業形態において、サービス提供者と登録店舗の間の権利義務を明確にすることで、後々のトラブルを防ぐ狙いがあります。たとえば、掲載料金の支払い時期や、店舗情報の更新責任の所在などを明確にしておくことで、運営上のスムーズな関係構築が可能になります。
第2条(定義)
サービス運営において重要な用語を定義する条文です。特に「エンドユーザー」と「会員」を明確に区別することで、誰に対してどのような責任を負うのかが明確になります。実際の運営では、レストラン検索サイトであれば、登録飲食店が「会員」、お店を探す一般消費者が「エンドユーザー」という構図になります。この区別により、情報掲載責任の範囲が明確化されます。
第3条(会員登録)
登録審査に関する重要条項です。特に注目すべきは未成年者や反社会的勢力の排除規定で、健全なサービス運営のための防護壁となります。実務では、美容院検索サービスに個人経営の店舗が登録する際、営業許可証の確認や実際の店舗存在確認などを通じて、この条項に基づく審査が行われることになります。
第4条(登録事項の変更)
店舗情報の最新性を保つための重要な規定です。住所変更、電話番号変更、営業時間の変更など、検索サービスの価値に直結する情報の更新義務を定めています。たとえば、コロナ禍で営業時間を短縮した飲食店が、速やかに情報更新を行わなければ、来店したお客様とのトラブルにつながる可能性があります。
第5条(パスワードおよびユーザーIDの管理)
セキュリティ管理の基本を定める条文です。近年増加するアカウント乗っ取り被害を防ぐため、管理責任を登録店舗側に明確に負わせています。美容院の店長がパスワードを従業員と共有し、退職した元従業員が勝手に店舗情報を改ざんするようなトラブルを防ぐ効果があります。
第6条(料金および支払方法)
サービス収益の根幹となる条項です。年14.6%という遅延損害金の設定は、改正民法の法定利率改正を踏まえた現実的な水準です。月額制の店舗掲載サービスにおいて、支払いが滞った場合の対応が明確化されているため、安定した事業運営が可能になります。
第7条(禁止事項)
サービスの健全性維持のための包括的な禁止規定です。特に重要なのは、競合他社の誹謗中傷や虚偽情報の投稿禁止です。例えば、ライバル店の口コミ欄に悪意ある書き込みを行ったり、自店の営業実態と異なる情報を掲載することを防ぎます。また、出会い目的での利用禁止は、健全な商用サービスとしての位置づけを保つためです。
第8条(本サービスの停止等)
システムメンテナンスや障害時の対応を定めた条文です。24時間365日稼働が期待されるインターネットサービスにおいて、計画的なメンテナンスや緊急時の対応について、事前の免責を明確にしています。大型連休前のシステム更新作業など、予測可能なメンテナンス時の対応指針となります。
第9条(権利帰属)
知的財産権の帰属を明確にする重要条項です。検索システムの技術的な部分は運営会社に帰属し、店舗が投稿する写真や文章については、投稿者が適法な権利を有することを保証させています。料理写真の著作権問題や、他店の画像を無断使用するトラブルを防ぐ効果があります。
第10条(投稿データの利用)
店舗が投稿した情報の利用範囲を定める条文です。検索サービスの特性上、投稿された店舗情報は広く一般公開される必要があるため、必要な利用許諾を取得しています。ただし、非公開情報については利用対象外とすることで、店舗側の権利にも配慮したバランスの取れた規定となっています。
第11条(投稿データの削除)
不適切な投稿への対応権限を定めた条文です。虚偽の営業時間や存在しないメニューの掲載など、エンドユーザーに迷惑をかける情報については、運営側が削除権限を有することを明確にしています。ただし、過度な監視義務は負わないことで、運営コストとのバランスも考慮されています。
第12条(本サービスの内容の変更、終了)
サービス運営の柔軟性を確保する条文です。技術革新や市場環境の変化に対応するため、サービス内容の変更権限を運営側に留保しています。スマートフォン対応への移行や、新機能の追加など、サービス向上のための変更が円滑に行えるよう配慮されています。
第13条(保証の否認および免責)
運営リスクを適切に分散する重要条項です。システムの完全性や継続性について過度な保証を行わないことで、現実的なサービス運営を可能にしています。賠償責任についても過去12ヶ月の利用料金を上限とすることで、予測可能な範囲でのリスク管理を実現しています。
第14条(秘密保持)
営業秘密の保護を定めた条文です。検索アルゴリズムの詳細や、他店舗の登録状況など、競争上重要な情報の取り扱いについて規定しています。美容院の予約システムとの連携方法など、技術的な情報の漏洩防止にも効果があります。
第15条(利用停止等)
契約違反時の制裁措置を定めた条文です。規約違反や料金滞納などの場合に、段階的な対応ではなく即座に利用停止できる権限を運営側に付与しています。悪質な店舗による被害拡大を防ぐため、迅速な対応が可能な仕組みとなっています。
第16条(退会)
サービスからの離脱手続きを定めた条文です。店舗側の都合による退会を認めつつ、退会後の情報取り扱いについては別条項で規定することで、適切な処理が確保されています。閉店や業態変更に伴う退会時の手続きが明確化されています。
第17条(本サービスの利用のためのシステム)
技術環境の準備責任を店舗側に負わせる条文です。インターネット接続環境やスマートフォンなど、サービス利用に必要な機器や通信環境の準備責任を明確にしています。特に高齢の店舗経営者などが、システム環境の不備を理由にサービス提供を求めることを防ぐ効果があります。
第18条(本規約等の変更)
規約変更手続きを定めた重要条項です。サービスの発展や法改正への対応のため、一定の手続きを経て規約変更を可能にしています。変更通知の方法や効力発生時期を明確にすることで、後々の紛争を防ぐ仕組みとなっています。
第19条(連絡/通知)
連絡手段と効力発生要件を定めた条文です。メールアドレスへの送信で通知が完了するという「みなし規定」により、連絡不通による業務停滞を防いでいます。店舗移転等で連絡先が変更された場合の対応も含めて、実務的な配慮がなされています。
第20条(利用者情報の取扱い)
個人情報保護に関する基本方針を示した条文です。個人情報保護法への準拠を明確にしつつ、統計情報としての利用権限を確保しています。店舗検索の傾向分析や、サービス改善のためのデータ活用が適切に行える仕組みとなっています。
第21条(本サービスに掲載される広告)
広告掲載に関する事前承諾を得る条文です。検索サービスの収益源として広告掲載は重要ですが、登録店舗の理解を得ることで、後々のトラブルを防いでいます。競合他社の広告が表示されることへの対応も含めて配慮されています。
第22条(本サービスの提供の中断)
サービス中断時の対応を定めた条文です。第8条と類似していますが、より広範囲な中断事由を想定しています。自然災害時の対応や、サイバー攻撃への対処など、現代的なリスクにも対応した内容となっています。
第23条(反社会的勢力の排除)
コンプライアンス強化のための重要条項です。近年の企業統治強化の流れを受けて、反社会的勢力との関係を完全に遮断することを明確にしています。金融機関との取引や、上場企業との業務提携においても、この条項の存在が重要な意味を持ちます。
第24条(譲渡等の禁止)
契約関係の安定性を保つ条文です。登録店舗が第三者に契約上の地位を譲渡することを制限する一方、運営会社の事業譲渡については一定の条件下で認めています。M&Aや事業承継時の対応が明確化されており、事業の継続性が確保されています。
第25条(完全合意)
契約書の完結性を担保する条文です。口約束や別途の合意が後から主張されることを防ぎ、書面化された規約が唯一の合意内容であることを明確にしています。営業担当者の口頭説明と規約内容が異なる場合のトラブルを防ぐ効果があります。
第26条(分離可能性)
規約の一部が無効となった場合の対応を定めた条文です。消費者契約法などにより一部条項が無効と判断されても、規約全体の効力は維持されることを明確にしています。規約の安定性と継続性を確保する重要な規定です。
第27条(存続規定)
契約終了後も効力を持続する条項を明確にした条文です。料金支払義務や秘密保持義務など、契約終了後も継続すべき義務を特定することで、円滑な契約終了処理が可能になっています。
第28条(協議解決)
紛争解決の基本姿勢を示した条文です。裁判に頼る前に、当事者間での話し合いによる解決を優先することで、コスト削減と関係修復の可能性を高めています。長期的な取引関係を重視する商慣行に適合した規定です。
第29条(準拠法および管轄裁判所)
紛争解決の手続的事項を定めた条文です。日本法の適用と東京地方裁判所の管轄を明確にすることで、全国展開するサービスにおける紛争解決手続きの統一化が図られています。予測可能性の高い紛争解決制度の構築に寄与しています。