【1】書式概要
この契約書は、会社が外部の営業担当者と仕事をする際に使える契約書です。最大の特徴は「成果が出たときだけ報酬が発生する」完全成功報酬型であることです。
この契約書が役立つのは、次のような場面です。毎月固定で人件費を払うのではなく、売上が立ったときだけ報酬を支払いたい場合。新しい市場に挑戦するけれど、リスクを抑えたい場合。フリーランスの営業マンや独立したセールス代行と仕事をする場合。中小企業が販路を広げたい場合などです。
契約書の内容は、営業の仕事内容をはっきりさせ、お互いの立場や報酬の計算方法、支払いのタイミングなどを定めています。特に大事なのは、「いつ売上として計算するか」という点で、契約が結ばれて、お金が入金されて、商品やサービスが提供完了したときに初めて売上としてカウントする形になっています。
また、情報の守秘義務や個人情報の扱い方、競合他社との仕事の制限、成果物の権利関係なども細かく決めています。契約期間や中途での解約条件も明確にしているので、後々のトラブルを防ぐ工夫がされています。
この契約書は会社側に有利な内容になっています。外部の営業パートナーと協力する時や、固定費を抑えながら営業力を高めたいときに最適です。成果が出なければお金を払わなくていいので、リスクを低く抑えられる点が大きな魅力です。
実際に使う際には、具体的な報酬率や計算方法、ボーナスの条件などを別紙で詳しく決める必要があります。また、競合他社との仕事の制限について、期間や範囲を当事者同士でよく話し合って決めることをお勧めします。
〔条文タイトル〕
第1条(目的)
第2条(委託業務)
第3条(独立当事者の関係)
第4条(業務遂行方法)
第5条(設備等の使用)
第6条(報酬)
第7条(売上の計上)
第8条(報酬の支払方法)
第9条(経費負担)
第10条(インセンティブ制度)
第11条(契約期間)
第12条(中途解約)
第13条(契約解除)
第14条(秘密保持義務)
第15条(個人情報の取扱い)
第16条(競業避止義務)
第17条(知的財産権)
第18条(反社会的勢力の排除)
第19条(損害賠償)
第20条(税金及び社会保険)
第21条(権利義務の譲渡禁止)
第22条(通知方法)
第23条(存続条項)
第24条(準拠法)
第25条(合意管轄)
第26条(協議事項)
【2】逐条解説
第1条(目的)
この契約の目的を定めています。会社(甲)が外部の営業担当者(乙)に営業の仕事を頼み、それによって会社の売上を増やすことが目的です。
第2条(委託業務)
具体的に頼む仕事の内容を詳しく書いています。商品・サービスの販売活動、新しいお客さんを見つける仕事、お客さんの要望を聞いて会社に伝える仕事、提案書や見積書の作成、契約手続きの手伝い、顧客情報の管理などが含まれます。
第3条(独立当事者の関係)
とても大切な条項です。外部営業担当者は会社の社員ではなく、独立した事業者だということを明確にしています。会社からの指示命令はなく、自分で仕事のやり方を決められます。また、必要な人員も自分で用意する必要があります。
第4条(業務遂行方法)
仕事の進め方について定めています。外部営業担当者は仕事のやり方、時間、場所などを自分で決められますが、法律や会社の営業方針は守らなければなりません。また、会社から求められたら仕事の進み具合を報告する義務があります。
第5条(設備等の使用)
仕事に必要な機器や消耗品は基本的に外部営業担当者が自分で準備するという決まりです。会社が資料やサンプルを提供することもありますが、それらは会社の所有物なので、契約が終わったら返さなければなりません。
第6条(報酬)
報酬に関する重要な条項です。外部営業担当者が獲得した売上に応じて報酬が支払われます。報酬の具体的な金額や計算方法は別紙で決めます。この報酬には仕事に必要な一切の費用や消費税も含まれていて、これ以外のお金(給料、ボーナス、退職金など)は支払われません。
第7条(売上の計上)
売上をいつ計算に入れるかの条件を明確にしています。お客さんと正式に契約が結ばれて、お金が実際に入金されて、商品やサービスが提供完了した時点で初めて売上として数えます。お客さんが契約を解約した場合は、報酬を返さなければならないこともあります。
第8条(報酬の支払方法)
報酬をいつどのように支払うかの手順を説明しています。毎月の報酬を計算し、外部営業担当者が業務報告書を出し、会社が確認して通知し、請求書をもらってから支払うという流れです。
第9条(経費負担)
仕事にかかる交通費や通信費などの経費は基本的に外部営業担当者が自分で払います。ただし、会社が事前に認めた特別な経費については、領収書などを提出すれば支払ってもらえることもあります。
第10条(インセンティブ制度)
通常の報酬とは別に、特に良い成績を上げた場合のボーナス制度についての規定です。ボーナスの条件や金額は会社が別に決め、変更や廃止も可能です。
第11条(契約期間)
契約の有効期間は1年間です。期間が終わる1ヶ月前までにどちらからも終了の意思表示がなければ、自動的にさらに1年間延長されます。
第12条(中途解約)
契約期間中でも、3ヶ月前に通知すれば契約を終了できます。また、3ヶ月連続で売上がない場合は、会社は1ヶ月前の通知で契約を終了できます。
第13条(契約解除)
契約違反や破産申立てなど、重大な問題が起きた場合に契約を即座に解除できる条件を定めています。
第14条(秘密保持義務)
仕事を通じて知った相手の秘密情報を漏らしてはいけないという規定です。この義務は契約が終わっても3年間は続きます。ただし、すでに公開されている情報などは秘密情報に含まれません。
第15条(個人情報の取扱い)
顧客の個人情報を適切に扱うための規定です。個人情報保護法に従って安全に管理し、許可なく第三者に渡してはいけません。契約が終わったら、個人情報は返却するか廃棄しなければなりません。
第16条(競業避止義務)
契約期間中と契約終了後6ヶ月間は、会社と競合する仕事をしてはいけないという制限です。この制限の代わりに、会社は外部営業担当者に最後の報酬の3ヶ月分を支払います。
第17条(知的財産権)
仕事で作成した提案書や企画書などの著作権は全て会社に帰属します。外部営業担当者は著作者人格権(作品の変更を拒否する権利など)も行使しないことになっています。
第18条(反社会的勢力の排除)
暴力団などの反社会的勢力ではないことをお互いに約束し、もしそうだと分かった場合は契約を解除できるという規定です。
第19条(損害賠償)
契約違反によって損害が生じた場合の賠償責任について定めています。第三者に損害を与えた場合は外部営業担当者が責任を持って解決する必要があります。賠償金額の上限も定められていますが、故意や重大な過失がある場合は上限なしになります。
第20条(税金及び社会保険)
外部営業担当者は自分で税金を申告・納付し、健康保険などの社会保険にも自分で加入する必要があります。会社は源泉徴収義務がある場合はそれを行いますが、社会保険料の会社負担分は支払いません。
第21条(権利義務の譲渡禁止)
この契約上の権利や義務を勝手に他の人に譲ることはできません。
第22条(通知方法)
契約に関する連絡は書面や電子メールで行い、相手に届いた時点で効力が生じます。
第23条(存続条項)
契約が終了しても効力が続く条項(秘密保持義務、個人情報の取扱い、競業避止義務など)を示しています。
第24条(準拠法)
この契約は日本の法律に基づいて解釈されます。
第25条(合意管轄)
裁判になった場合、どこの裁判所で争うかを決めています。
第26条(協議事項)
契約書に書かれていないことや解釈に疑問がある場合は、両者で誠実に話し合って解決するという約束です。