第1条(本件不動産の売買)
売買対象となる土地と建物の詳細を明記する基本条項です。所在地や地番、建物構造などの物理的情報に加え、売買代金の総額と内訳を定めています。実際の取引では、この部分に正確な登記情報を転記することが重要で、一文字でも間違いがあると後々のトラブルの原因となります。税別表記になっているため、消費税の取扱いについても事前に確認が必要です。
第2条(手付金)
契約締結時に支払う手付金の金額と性質を定める条項です。手付金は単なる一時金ではなく、後述の手付解除権の行使にも関わる重要な要素です。一般的には売買代金の10~20%程度に設定されることが多く、買主の本気度を測る指標にもなります。最終的には売買代金に充当されるため、買主にとって追加負担にはなりません。
第3条(代金の支払い)
売買代金の支払方法と期限を具体的に定める条項です。一括払いか分割払いかによって記載内容が変わります。実務では銀行融資の実行日に合わせて支払期限を設定することが一般的で、買主の資金調達状況を十分考慮した現実的な日程設定が求められます。支払場所についても明記しておくと、後日の混乱を避けられます。
第4条(本件不動産の引き渡し・所有権の移転)
代金支払いと引き換えに物件を引き渡し、所有権を移転させる「同時履行」の原則を明記した条項です。登記手続きについても言及しており、登記費用は買主負担となっています。実際の取引では司法書士が立ち会い、代金決済と同時に所有権移転登記の申請を行うのが通例です。鍵の引き渡しもこのタイミングで行われます。
第5条(境界画定・実測精算)
この契約書の最大の特徴である実測売買の仕組みを定めた条項です。買主が引き渡し後に境界を確定し、測量を実施して面積の相違があれば価格調整を行います。測量費用や境界確定費用は買主負担となっており、売主にとって有利な条件設定です。隣地所有者との境界トラブルがある場合、事前の解決が困難なケースでよく用いられる手法です。
第6条(危険の移転)
天災などによる物件の滅失・毀損リスクがいつ買主に移転するかを定める条項です。引き渡し時点でリスクが移転するため、それまでは売主が火災保険等でリスクをカバーする必要があります。大規模な自然災害が発生した場合の契約解除についても規定しており、両当事者の権利を保護しています。引き渡し前に台風で建物が損傷した場合などに適用される重要な条項です。
第7条(公租公課)
固定資産税や都市計画税などの税金負担を所有権移転日で日割り計算する条項です。年度途中での売買では必須の規定で、一般的には登記日を基準として前日までを売主、当日以降を買主が負担します。実務では移転日の前後で税額を日割り計算し、決済時に精算することが多く、買主にとって公平な負担配分となっています。
第8条(保証)
売主が物件について各種の保証を行う条項です。抵当権等の担保権が設定されていないこと、第三者の占有がないことなどを保証し、問題が生じた場合は売主の責任で解決することを約束しています。中古物件では賃借人が居住している場合もあるため、引き渡し時までに確実に明け渡しを完了させる義務を売主に課しています。
第9条(手付解除)
契約の着手前であれば、手付金の放棄または倍返しによって契約解除できる権利を定めた条項です。買主が解除する場合は手付金を諦め、売主が解除する場合は手付金の2倍を支払います。「着手」の判断基準が重要で、融資申込みや測量開始などが着手に該当するかは事案ごとに判断されます。お互いにとって最後の逃げ道となる重要な権利です。
第10条(催告解除・無催告解除・損害賠償)
契約違反があった場合の解除権と損害賠償請求権を定める条項です。特に買主の信用不安や反社会的勢力との関係については無催告で即座に解除できる強力な条項となっています。破産申立てや手形の不渡りなど、具体的な事由を列挙することで解除要件を明確化しており、売主の権利保護に重点を置いた内容です。
第11条(責任制限)
売主の契約不適合責任を大幅に制限する、売主にとって極めて有利な条項です。現状有姿での売買であることを明記し、引き渡し後の建物の不具合等について売主は原則として責任を負いません。ただし、売主の故意・重過失による隠れた瑕疵については例外的に責任を負うため、売主といえども完全に免責されるわけではありません。
第12条(合意管轄)
契約に関する紛争が生じた場合の裁判所を事前に指定する条項です。通常は売主の所在地を管轄する地方裁判所を指定することが多く、売主にとって訴訟対応の負担軽減につながります。ただし、買主が遠方の場合は交渉材料として管轄裁判所の変更を求められることもあります。
第13条(協議)
契約書に定めのない事項については当事者間の協議で解決することを定める一般条項です。すべての事項を契約書で網羅することは不可能なため、このような包括的な解決手段を設けています。実際には専門家を交えた協議となることが多く、円満解決に向けた当事者の姿勢を示す重要な条項といえます。