【1】書式概要
この区分地上権設定契約書は、地下や地上の空間を特定して利用権を設定する際に必要な法的文書です。改正民法にも対応しており、地下鉄や地下街の建設、電気・ガス・水道などのライフライン設備の設置、高架道路や橋梁の整備など、土地の立体的利用を必要とする場面で活用できます。
契約書には、地上権の設定範囲や存続期間、地代の支払い方法など基本的な条項はもちろん、権利の譲渡制限や反社会的勢力の排除条項など、実務で重要となる規定も網羅されています。特に、地上権の設定範囲を東京湾平均海面を基準とした高さで特定する方式を採用しているため、権利関係が明確になり、将来の紛争を防止できます。
地下鉄や高架道路の建設事業者、インフラ整備を行う電力会社やガス会社、不動産開発業者の方々にとって、土地所有者との円滑な権利関係の構築に役立つ実用的な契約書です。登記手続きの条項も含まれているため、権利の公示までスムーズに進められる内容となっています。
土地の有効活用が求められる現代の都市開発において、この契約書は地権者と事業者双方の権利と義務を明確にし、安心して土地の立体的利用を進めるための必須のツールとなります。
〔条文タイトル〕
第1条(目的)
第2条(区分地上権の範囲)
第3条(存続期間)
第4条(地代)
第5条(譲渡、賃貸等の禁止)
第6条(保存および管理)
第7条(地上権消滅請求)
第8条(登記)
第9条(反社会的勢力の排除)
第10条(協議事項)
第11条(管轄裁判所)
【2】逐条解説
第1条(目的)
区分地上権設定の基本的な合意内容を明示する条項です。土地所有者(甲)が土地利用者(乙)のために地上権を設定し、対象土地の表示(所在、地番、地目、地積)を特定します。地下鉄や高架道路、地下街、ライフライン設備など具体的な使用目的を明確にすることで、権利関係を明確化し、将来の紛争を予防します。
第2条(区分地上権の範囲)
地上権が及ぶ空間的範囲を東京湾平均海面(TP)を基準に高さで特定する重要条項です。地下○メートルから地上○メートルまでという形で立体的に権利範囲を確定させ、土地の立体利用における権利関係を明確にします。都市開発や公共インフラ整備において必須の規定です。
第3条(存続期間)
地上権の開始日と終了日を明確に定め、権利の存続期間を特定します。通常、建設工事期間や施設の利用予定期間を考慮して設定されます。期間満了時の処理や更新条件についても検討が必要な重要条項です。
第4条(地代)
年額の地代金額と支払方法(振込)、支払期日を規定します。前払い制を採用し、毎年12月末日までに翌年分を支払う方式となっています。振込手数料の負担者も明確にすることで、後々のトラブルを防止します。
第5条(譲渡、賃貸等の禁止)
地上権者による権利の譲渡や土地の転貸を禁止し、土地所有者の権利を保護する条項です。地上権の性質上、無断譲渡や転貸を認めると権利関係が複雑化するため、これを制限しています。
第6条(保存および管理)
地上権者に設置物の適切な管理義務を課す条項です。地下鉄や高架道路などの構造物の安全性確保、メンテナンス義務を明確にし、土地所有者の財産権を保護します。
第7条(地上権消滅請求)
地代の長期滞納(●年以上)や破産手続開始時に、土地所有者が地上権を消滅させられる権利を定めています。催告不要の即時消滅請求が可能となっており、土地所有者の権利保護を強化しています。
第8条(登記)
地上権設定登記の義務を土地所有者に課し、期限を設定しています。登記により第三者対抗要件を具備し、権利の安定性を確保します。登記費用は地上権者負担としています。
第9条(反社会的勢力の排除)
暴力団等の反社会的勢力との関係遮断を徹底する条項です。両当事者が暴力団等と無関係であることを表明保証し、違反時は催告なしに契約解除できる権利を規定しています。コンプライアンス上不可欠な条項です。
第10条(協議事項)
契約書に定めのない事項が発生した場合の処理方法を規定します。当事者間の協議による解決を図り、柔軟な対応を可能にします。
第11条(管轄裁判所)
紛争発生時の管轄裁判所を特定の地方裁判所に限定する合意条項です。専属的合意管轄とすることで、訴訟手続の効率化と予測可能性を確保します。