【1】書式概要
このファイルは出張鍼灸治療業務を委託する際に使用する契約書の雛形です。鍼灸院やクリニックなどが施設内で鍼灸治療サービスを提供するために、外部の鍼灸師や治療院と業務委託契約を結ぶ際に活用できます。
この契約書は2020年の民法改正に対応した最新版となっており、業務内容や実施場所、委託料、支払方法、機密保持、反社会的勢力の排除など、出張鍼灸治療の委託に必要な事項を網羅しています。特に医療関連サービスを外部委託する際の責任範囲や個人情報の取り扱いなどの重要事項がしっかり明記されているため、トラブル防止に役立ちます。
実際の使用場面として、例えば福祉施設やスポーツジム、企業の福利厚生として鍼灸サービスを導入したい場合や、鍼灸院が別の施設に出張して治療を行う場合などに適しています。先日、知人が運営する介護施設でも、利用者向けの鍼灸サービスを導入する際にこのような契約書を使って外部の鍼灸院と契約を結んでいました。施設側と治療提供側の双方が安心して業務を進められるよう、基本的な取り決めを文書化しておくことは非常に大切です。
〔条文タイトル〕
第1条(業務内容)
第2条(業務実施場所・日時)
第3条(委託料)
第4条(支払方法)
第5条(費用負担)
第6条(再委託の禁止)
第7条(機密保持)
第8条(契約期間)
第9条(反社会的勢力の排除)
第10条(損害賠償)
第11条(協議事項)
【2】逐条解説
第1条(業務内容)
この条項では、受託者(鍼灸師側)が委託者(施設側)の施設において、受託者が雇用する有資格者の鍼灸師によって治療業務を行うことを明記しています。実務上は、誰が施術を行うのかを明確にしておくことが重要です。例えば、「乙は甲に対し、施術者のプロフィールと資格証のコピーを事前に提出する」といった追加条項を検討してもよいでしょう。先日、知人のデイサービスセンターでこの契約書を使った際は、事前に施術者3名分の情報を共有し、急なスケジュール変更にも対応できるよう準備していました。
第2条(業務実施場所・日時)
施術が行われる具体的な場所と時間を定める条項です。「甲乙協議の上決定する」という柔軟な表現になっていますが、トラブル防止のためには、月間スケジュールを前月末までに確定させるなど、具体的な決定プロセスを追記することをお勧めします。実際に都内のある企業では、毎月第2・第4水曜日の13時から17時と固定して社員向け鍼灸サービスを提供している例もあります。
第3条(委託料)
委託料の金額を定める重要な条項です。月額固定制になっていますが、実際の利用状況に応じた変動制にしたい場合は、「基本料金+利用者数に応じた従量料金」といった設定も考えられます。ある介護施設では、月額8万円の基本料に加え、1回の施術につき2,000円の追加料金という設定で契約していました。
第4条(支払方法)
支払期日や方法を定めています。実務上は、請求書の発行タイミングや支払い期限(例:翌月15日まで)、振込手数料の負担についても明記しておくと安心です。先日相談を受けたクリニックでは、委託先から請求書が届かず支払いが遅れるケースがあったため、「乙は毎月5日までに請求書を甲に提出する」という一文を追加していました。
第5条(費用負担)
業務に必要な経費の負担について定めていますが、抽象的な記載になっています。実際には、施術に使用する消耗品(鍼、お灸、タオルなど)、備品(ベッドなど)の負担区分を明確に記載しておくべきでしょう。例えば「施術用ベッドは甲が準備し、鍼や艾などの消耗品は乙が持参する」といった具体的な取り決めが必要です。
第6条(再委託の禁止)
受託者が業務を第三者に再委託することを禁止する条項です。特に医療関連サービスでは、誰が施術を行うかは重要な信頼関係の基礎となります。ただし、受託者の従業員による施術は再委託にはあたらないため、「乙の雇用する有資格者による施術は可能」といった但し書きを加えることで、運用の柔軟性を確保できます。
第7条(機密保持)
患者情報や業務上知り得た情報の取扱いに関する条項です。医療関連サービスでは特に重要です。個人情報保護法に対応するため、「本契約終了後も5年間はその効力を有する」といった期間の明記や、漏洩時の対応についても追記することをお勧めします。福祉施設での導入事例では、施術記録の保管方法や共有方法についても詳細に取り決めていました。
第8条(契約期間)
契約の有効期間と自動更新について規定しています。特に気をつけたいのは、契約終了の意思表示期限です。「1ヶ月前」という表現は曖昧になりがちなので、「期間満了日の30日前までに」といった明確な表現にするとよいでしょう。ある整骨院では、いつの間にか契約が更新されていて解約したくてもできなかったという事例があったため、通知期限は明確にしておくべきです。
第9条(反社会的勢力の排除)
反社会的勢力との関係排除を明記した条項です。最近の契約書では標準的に盛り込まれています。現実的には、契約締結時に双方が誓約書を交わすケースも多いです。特に医療・福祉分野では、利用者の安全確保の観点からも重要な条項です。
第10条(損害賠償)
契約違反による損害賠償責任を定めています。ただし、この条項は抽象的なので、施術によるトラブル(例:火傷や有害事象)が発生した場合の責任範囲を明確にしておくことをお勧めします。「乙は業務遂行に関連して発生した人身事故等について賠償責任保険に加入する」といった条項を追加する例も見られます。先日、スポーツジムでの出張鍼灸で軽度の火傷事故が発生したケースでは、この条項が曖昧だったため、対応に苦慮したという話を聞きました。
第11条(協議事項)
契約書に明記されていない事項や解釈の疑義について、誠意をもって協議するという条項です。実際のトラブル対応では、協議の場をどのように設定するかも重要になります。「月次の定例ミーティングで課題を共有する」など、コミュニケーションの機会を定期的に設けることで、多くの問題を未然に防ぐことができます。
この契約書は基本的な枠組みを示すものですが、個別の状況に応じて条項を追加・修正することで、より実態に即した内容にすることができます。特に鍼灸治療という専門性の高いサービスを外部委託する場合は、責任範囲や事故対応、施術記録の取扱いなどについて詳細に定めておくことが重要です。