【1】書式概要
この事業譲渡に関する基本合意書は、民法改正に対応した最新フォーマットであり、中小企業から大企業まで幅広い規模の企業間での事業譲渡を進めるための必須書類です。
M&Aや事業承継を検討中の経営者の方々にとって、この文書テンプレートは交渉プロセスの初期段階で大きな価値を発揮します。デューデリジェンス実施前の段階で当事者間の意向を明確にし、重要な条件面での合意を形成することで、その後のスムーズな協議進行を可能にします。
本テンプレートでは、秘密保持から譲渡価格の調整、従業員の処遇、そして最終契約までの具体的なタイムスケジュールまで、実務上重要な論点を網羅しています。法務部門や顧問弁護士とのやり取りを円滑に進めるための橋渡し役として、また経営判断の材料となる重要書類として機能します。
経営統合や事業ポートフォリオの再構築を検討中の企業様、地域密着型企業の後継者問題解決を模索する経営者様、そして成長戦略の一環として事業買収を考えている企業様にとって、このテンプレートは信頼できる出発点となるでしょう。専門家によるリーガルチェックを経て、各企業の実情に合わせてカスタマイズすることで、安心して事業譲渡プロセスを進めることができます。
〔条文タイトル〕
第1条(目的)
第2条(譲渡の内容)
第3条(譲渡対価)
第4条(クロージング)
第5条(守秘義務)
第6条(解除)
第7条(有効期間)
第8条(特約)
第9条(協議)
【2】逐条解説
第1条(目的)
本条は本合意書の根本的な趣旨を明らかにするものであり、将来の本契約締結に向けた基本的な合意を文書化することを目的としています。事業譲渡という重大な経営判断について、当事者間で共通認識を持つための重要な規定となっています。時期の定めは柔軟性を持たせつつも、計画的な進行を担保する実務的なアプローチが採用されています。
第2条(譲渡の内容)
事業譲渡の具体的な対象範囲を明確化し、現状有姿での引渡しという実務慣行に即した内容になっています。従業員の取り扱いについては、譲渡人・譲受人双方の立場を考慮し、柔軟性と実現可能性のバランスを取った規定となっています。雇用義務の免除は譲受人の判断を尊重しつつ、現実的な人材移転を促進する構造になっています。
第3条(譲渡対価)
譲渡価格についての暫定的な合意を記載し、デューデリジェンスの結果を踏まえた最終調整の余地を残す実務的な条項です。この段階での価格表示は、交渉の出発点としての機能を果たし、当事者双方の期待値管理に寄与します。
第4条(クロージング)
資金決済と権利移転の同時履行を定め、取引の安全性を確保する構造となっています。具体的なクロージング日の設定は、当事者の準備期間を確保しつつ、計画的な実行を促す設計になっています。
第5条(守秘義務)
事業譲渡交渉における機密情報の保護は極めて重要であり、本条はその核心的な規定といえます。専門家への開示を認める例外規定は実務上の必要性に配慮したものであり、適切な情報共有と機密保持のバランスを図っています。
第6条(解除)
一定期間内に本契約に至らなかった場合の取り扱いを明確にし、当事者の予測可能性を確保しています。解除による損害賠償の免除は、誠実交渉の結果として成立しなかった場合の責任リスクを軽減し、安心して交渉に臨める環境を提供します。
第7条(有効期間)
本合意書の時的な適用範囲を明確にし、無期限の拘束を回避するとともに、必要に応じた期間延長の可能性も確保しています。これにより、当事者の状況に応じた柔軟な対応が可能となります。
第8条(特約)
譲受人となる主体の選択権に関する特約であり、経営上の柔軟性を確保するための重要な規定です。新設会社を通じた事業譲渡という実務上しばしば用いられるスキームにも対応可能な設計となっています。
第9条(協議)
本合意書の解釈・運用をめぐる紛争の予防と円満な解決を図るための条項です。信義誠実の原則に基づく協議という日本の法実務に即した解決方法を採用し、柔軟かつ建設的な問題解決を促進します。
別紙の意義
本合意書に添付される譲渡対象目録は、具体的な譲渡範囲を明確にする重要な書類です。不動産、動産、無形資産から負債や契約関係まで、事業譲渡の対象となる全ての要素を網羅的に記載することで、当事者間の認識齟齬を防ぎ、明確な合意形成を支援します。実務においては、この目録を基にデューデリジェンスが進められ、最終的な譲渡対象の確定に向けた作業が行われます。