【1】書式概要
この契約書は、不動産オーナーが所有する物件の日常的な維持管理業務を専門の管理会社に委託する際に使用する書式です。マンションやアパート、オフィスビルなどの建物において、清掃や設備点検、小規模な修繕作業といった保守管理全般を第三者に任せたい場面で活用されます。
不動産投資を行う個人や法人にとって、物件の適切な維持管理は収益性を保つ上で欠かせない要素となっています。しかし、遠方の物件を所有している場合や、複数の物件を管理する必要がある場合、自分で全ての管理業務を行うのは現実的ではありません。そこで専門知識を持つ管理会社に業務を委託することで、効率的かつ確実な物件運営が可能になります。
この契約書では、管理業務の範囲や管理費用の支払い方法、契約期間の設定など、委託に関する重要な事項が明確に定められています。特に改正民法に対応した内容となっているため、現在の規定に沿った適切な契約関係を築くことができます。また、物価変動への対応や追加工事が必要になった場合の取り決めも含まれており、長期間にわたる安定した管理体制の構築に役立ちます。
【2】条文タイトル
第1条(目的)
第2条(契約期間)
第3条(管理費用)
第4条(通知義務)
第5条(協議義務)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条文は契約の根幹となる部分で、不動産オーナーが管理会社に対して物件の保守管理業務を包括的に委託することを定めています。「保守管理及びそれに付随する業務の一切」という表現により、日常的な清掃から設備点検、小規模修繕まで幅広い業務が対象となります。
第2項では再委託の可能性について触れており、管理会社が専門業者に一部業務を外注することを認めています。例えば、エレベーターの点検は専門の保守会社に、清掃業務は清掃専門業者に委託するといったケースが想定されます。これにより管理会社はより効率的で質の高いサービスを提供できるようになります。
第2条(契約期間)
契約期間を1年間に設定し、自動更新条項を盛り込んだ条文です。期間満了の1か月前までに書面で更新拒絶の意思表示がなければ、同条件で自動的に契約が延長される仕組みになっています。
この自動更新条項は双方にとってメリットがあります。毎年契約書を作り直す手間が省けるだけでなく、安定した管理体制を維持できます。ただし、条件変更を希望する場合は期限内に適切な手続きを行う必要があるため、注意が必要です。
第3条(管理費用)
管理費用の支払いに関する詳細な規定を含む重要な条文です。毎月定額の管理費を設定し、初月の日割り計算についても明記されています。
第2項では振込による支払い方法を指定し、第3項では遅延損害金について定めています。年率での遅延損害金設定により、支払い遅延に対する一定の抑制効果が期待できます。
第4項は大規模工事等で追加費用が発生した場合の取り決めです。例えば、外壁の大規模修繕や給排水設備の更新など、通常の管理費では対応できない工事が必要になった際の費用負担について、事前の協議を条件としています。
第5項は物価変動への対応条項で、経済情勢の変化に伴う管理費の見直しを可能にしています。長期契約において特に重要な規定といえるでしょう。
第4条(通知義務)
不動産オーナーが物件を第三者に譲渡や賃貸する際の事前通知義務を定めた条文です。管理会社にとって、物件の所有者や利用状況の変化は管理業務に直接影響するため、事前の情報共有は不可欠です。
例えば、賃貸に出す場合は入居者対応が必要になりますし、売却する場合は新しい所有者への引き継ぎ準備が必要になります。この通知により、スムーズな管理業務の継続が可能になります。
第5条(協議義務)
契約書に明記されていない事項が発生した場合の解決方法を定めた条文です。「審議に従い、誠実に協議して」という文言により、双方が建設的な話し合いを通じて問題解決を図ることを求めています。
不動産管理の現場では、契約締結時に想定していなかった状況が発生することも少なくありません。設備の予期せぬ故障や法令改正への対応など、様々な課題に対して柔軟に対処するための基盤となる重要な条項です。