【1】書式概要
この契約書は、タレントと芸能事務所やプロダクションとの間で結ばれる業務提携に関する包括的な合意書です。芸能界で活動するタレント、俳優、歌手、モデル、YouTuber、インフルエンサーなどが、マネジメント会社と正式な契約を結ぶ際に使用される重要な書式となっています。
エンターテイメント業界では、タレントの活動全般をサポートする事務所との間で明確な権利関係と義務を定めることが不可欠です。この契約書では、出演交渉から収入管理、著作権処理、スケジュール調整まで、タレント活動に必要な全ての業務範囲を網羅的に規定しています。特に改正民法に対応した内容となっており、現在の制度に適合した条項構成となっています。
実際の使用場面としては、新人タレントがデビューする際の初回契約、既存タレントの契約更新時、事務所移籍に伴う新規契約締結、YouTuberやインフルエンサーがマネジメント会社と提携する場面などが想定されます。また、小規模な芸能事務所が新たにタレントとの契約を結ぶ際の基本書式としても活用できます。
この文書はWord形式で提供されるため、各社の実情に応じて条項の修正や追加が容易に行えます。報酬比率や契約期間、業務内容の詳細など、具体的な数値や条件は実際の契約時に当事者間で協議して記入していただく仕様となっています。
【2】条文タイトル
第1条(目的) 第2条(委任業務) 第3条(甲の義務) 第4条(乙の義務) 第5条(専属性) 第6条(報酬) 第7条(経費) 第8条(契約期間) 第9条(独占的権利) 第10条(著作権) 第11条(秘密保持) 第12条(競業避止) 第13条(契約解除) 第14条(損害賠償) 第15条(反社会的勢力の排除) 第16条(権利譲渡の禁止) 第17条(再委託の禁止) 第18条(契約の変更) 第19条(存続条項) 第20条(管轄裁判所) 第21条(協議事項)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条項は契約全体の基本的な枠組みを定めています。タレント活動とそれに付随する全ての業務について、事務所がマネジメント及び代理業務を行うことを明確にしています。例えば、テレビ出演だけでなく、CM撮影、雑誌取材、イベント出演など、タレントとしての活動全般が対象となります。
第2条(委任業務)
事務所が担当する具体的な業務内容を8つの項目に分けて規定しています。出演交渉では、ドラマのオーディション手配やCM案件の価格交渉などが含まれます。宣伝広報業務では、SNS運用サポートやメディア対応なども想定されます。税務助言では、確定申告のサポートや節税対策の提案などが該当します。
第3条(甲の義務)
事務所側に課せられる義務を明確化しています。タレントの利益最優先という原則は、例えば明らかに不利な条件の仕事を断る判断や、長期的なキャリア形成を考慮した案件選択などに表れます。個人情報保護では、プライベートな住所や電話番号の厳格な管理が求められます。
第4条(乙の義務)
タレント側の責任を定めています。品位保持義務は、SNSでの発言や私生活での行動に注意を払うことを意味します。例えば、不適切な投稿や反社会的な行動は契約違反となる可能性があります。技術向上努力では、演技レッスンや歌唱指導への積極的な参加が想定されます。
第5条(専属性)
タレントが他の事務所と重複して契約できないことを規定しています。ただし、本業に関連する講演活動や執筆活動については、事前通知により自由に行えるとしています。例えば、元スポーツ選手のタレントが競技に関する講演を行う場合などが該当します。
第6条(報酬)
最も重要な金銭面の取り決めです。一般的には10%から30%程度の手数料が設定されることが多いです。支払期限や振込方法、明細書の提供義務なども詳細に規定されています。新人の場合は手数料率が高く、売れっ子になるにつれて交渉により下がることもあります。
第7条(経費)
活動にかかる費用負担を明確化しています。基本的にはタレント負担ですが、事務所が事前承認した場合は事務所負担となります。例えば、オーディション用の衣装代は事務所負担、普段の移動費はタレント負担といった区分けが考えられます。
第8条(契約期間)
契約の有効期間と自動更新条項を定めています。満了前の一定期間内に終了意思表示がない場合の自動更新は、継続的な関係維持に有効です。初回契約では1年程度、その後は2〜3年での更新が一般的です。
第9条(独占的権利)
タレントの氏名や肖像を使用する権利について規定しています。事務所が第三者にライセンスできる権利も含まれており、例えばグッズ製作会社への許諾や、CM制作会社への使用許可などが想定されます。
第10条(著作権)
創作物の権利帰属を明確化しています。タレントが個人的に作詞作曲した楽曲は本人に帰属し、事務所企画のオリジナル番組の台本は事務所に帰属するといった区分けが考えられます。著作者人格権の不行使条項により、事務所が自由に利用できるようになっています。
第11条(秘密保持)
双方が知り得た機密情報の保護義務を定めています。タレントの私生活情報や事務所の営業戦略、他のタレントに関する情報などが対象となります。契約終了後も一定期間継続する点が重要です。
第12条(競業避止)
契約終了後の競業制限を規定しています。同業他社への就職制限期間が設定されており、タレントのキャリア継続に影響を与える可能性があるため、期間設定は慎重に行う必要があります。
第13条(契約解除)
契約違反時の解除手続きを定めています。軽微な違反では催告期間を設け、重大な違反では即座に解除できるという二段階の仕組みになっています。例えば、無断で他社と契約した場合は即座解除の対象となります。
第14条(損害賠償)
契約違反による損害の賠償責任を明確化しています。例えば、タレントが急に撮影を無断欠席した場合の制作費用や、事務所が約束した仕事を一方的にキャンセルした場合の機会損失などが対象となります。
第15条(反社会的勢力の排除)
現在の社会情勢を踏まえた重要な条項です。暴力団関係者との関与が判明した場合の即座解除を規定しており、エンターテイメント業界のクリーン化に貢献しています。
第16条(権利譲渡の禁止)
契約上の地位や権利義務を第三者に譲渡することを制限しています。事務所の買収や合併時、タレントの個人的事情による契約権利の譲渡などの場面で重要となります。
第17条(再委託の禁止)
事務所が業務を他社に丸投げすることを防ぐ条項です。ただし、専門性の高い業務(例:税務処理や法務相談)については事前承諾により外部委託が可能となっています。
第18条(契約の変更)
契約内容の変更は必ず書面で行うことを定めています。口約束による変更を防ぎ、後々のトラブルを避ける効果があります。
第19条(存続条項)
契約終了後も効力を持続する条項を明確化しています。秘密保持や競業避止義務は契約終了後も継続するため、この規定により法的根拠が明確になります。
第20条(管轄裁判所)
紛争発生時の解決場所を予め定めています。東京地方裁判所など、双方にとってアクセスしやすい場所を選択することが一般的です。
第21条(協議事項)
契約に明記されていない事項や解釈に疑義が生じた場合の解決方法を定めています。まずは当事者間での話し合いによる解決を優先する姿勢を示しています。
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