【1】書式概要
この給与規程は、企業が従業員の給与体系を明確に定めるための重要な社内規定です。特に役割給方式を採用している会社において、基本給から各種手当、昇給制度まで包括的に管理できる実用的な書式となっています。
近年の労働基準法改正に完全対応しており、時間外労働の上限規制や割増賃金率の変更など、最新の法改正事項も織り込まれています。中小企業から大手企業まで、どのような規模の会社でも活用できるよう、実務に即した内容で構成されています。
この規程を導入することで、給与の支払いルールが明確になり、労使間のトラブルを未然に防ぐことができます。新入社員から管理職まで、それぞれの役割に応じた適正な給与設定が可能となり、従業員のモチベーション向上にもつながります。人事制度の整備を進める企業や、既存の給与制度を見直したい会社にとって、実践的なガイドラインとして機能します。
労務監査対策としても有効で、労働基準監督署の調査時にも適切な給与管理体制を証明できる重要な書類として活用できます。テンプレートとして使用する際は、自社の実情に合わせて金額や条件を調整するだけで、すぐに運用開始できる実用性の高い内容です。
【2】逐条解説
第1条(目的)
この条文は規程全体の適用範囲を明確にしています。正社員を対象とし、嘱託やパート従業員は別途規定することで、雇用形態に応じた柔軟な運用を可能にしています。労働基準法との関係も明示されており、法令遵守の姿勢が表れています。
第2条(給与の定義)
給与の基本概念を定義する条文です。労働の対償であることを明記することで、恩恵的な支給ではなく、労働契約に基づく権利であることを明確にしています。これにより給与の性質が法的に安定します。
第3条(給与の構成・形態)
給与を基本給と諸手当に分ける構造を示しています。月額制を採用することで、従業員にとって収入が予測しやすくなり、企業側も人件費の管理が容易になります。賞与は別途規定されるため、固定給部分が明確になります。
第4条(計算期間・支払日)
給与の締切日と支払日を定める重要な条文です。中途入社や退職時の日割り計算方法も規定されており、実務上のトラブルを防げます。退職時の7日以内支払いは労働基準法の要求に対応しています。
第5条(支払方法)
銀行振込による支払いを規定しています。現金手渡しと比べて管理が効率的で、従業員の利便性も高まります。本人名義の口座指定により、不正受給も防止できます。
第6条(控除)
法定控除項目を明示しています。労使協定に基づく控除も含めることで、社宅費や親睦会費なども適正に控除できます。透明性の高い給与計算が実現されます。
第7条(遅刻・欠勤等の控除)
ノーワーク・ノーペイの原則に基づく控除規定です。役職者を除外することで、管理職の裁量労働的性格を反映しています。計算式が明確なため、従業員も納得しやすい仕組みです。
第8条(決定基準)
役割給制度の根幹となる条文です。職務内容に応じた公平な処遇を実現できます。別表との連動により、昇進時の給与変動も明確になり、キャリアパスが見えやすくなります。
第9条(家族手当)
扶養家族に対する生活支援の側面を持つ手当です。配偶者、子ども、親それぞれに区分があり、家族構成に応じた支給が可能です。18歳未満の子どもという年齢制限も実務的です。
第10条(住宅手当)
住居費負担軽減のための手当です。扶養家族の有無で金額を区分することで、生活実態に応じた支給となります。持ち家の場合は対象外とすることが一般的です。
第11条(通勤手当)
通勤に要する実費を補償する規定です。公共交通機関利用者には実費、マイカー通勤者には相当額を支給する仕組みです。非課税限度額の考慮により、税務上も適正な処理が可能です。
第12条(時間外勤務手当)
労働基準法に基づく割増賃金の規定です。基本給に住宅手当を加えた額を基準とすることで、生活給的要素も反映されます。60時間超の50%割増や深夜労働の50%割増も法改正に対応しています。
第13条(休日勤務手当)
休日労働に対する35%割増の規定です。深夜に及ぶ場合の60%割増も明記されており、労働者保護の観点から適切な設定となっています。
第14条(時間外・休日勤務手当の不支給)
管理監督者に対する割増賃金除外規定です。ただし深夜労働分は支給対象とすることで、労働基準法の要求に完全対応しています。課長以上という基準も明確です。
第15条(昇給の時期)
年1回4月の昇給時期を定めています。業績条項により、経営状況に応じた柔軟な運用も可能です。従業員にとって昇給時期が明確なため、モチベーション管理にも効果的です。
第16条(昇給の算定期間)
昇給査定の対象期間を明示しています。前年3月21日から当年3月20日までの1年間という設定により、公平な評価期間が確保されます。
第17条(昇給の基準)
人事評価に基づく昇給制度の詳細です。S評価から D評価まで5段階の評価により、成果に応じた処遇が実現されます。号俸制により昇給額も明確で、従業員の納得度も高まります。
第18条(昇格昇給)
役割区分の昇格時における給与調整規定です。新しい役割の初号値適用により、昇格のメリットが明確になり、従業員のキャリアアップ意欲を促進できます。
第19条(降格のときの取り扱い)
降格時の給与調整方法を定めています。従前の給与水準をできる限り維持する配慮がなされており、降格による過度な不利益を回避しています。
第20条(支給の時期)
賞与の支給時期を年2回と定めています。業績連動条項により、企業の支払能力に応じた柔軟な運用が可能です。6月と12月の支給は一般的で、従業員の家計管理にも適しています。
第21条(計算期間)
賞与の査定対象期間を明確にしています。夏季賞与は前年10月から3月まで、年末賞与は4月から9月までという6か月単位の設定により、公平な評価期間が確保されます。
第22条(支給対象者)
賞与支給の要件を明示しています。支給日在籍要件と60日以上の出勤要件により、適正な支給基準が設定されています。定年退職者への配慮規定も含まれており、バランスの取れた制度です。
第23条(支給基準)
賞与額決定の基準を定めています。勤務成績と勤務態度による公正な評価により、従業員のモチベーション向上と企業業績の向上を両立させる仕組みとなっています。