【1】書式概要
この書式は、過去に撮影された動画や写真のデータを削除するよう、撮影した会社やプロダクションに対して正式に請求するための文書です。
「軽い気持ちで撮影に応じてしまったけれど、やっぱり消してほしい」「知らないうちにネット上で公開されていた」「辞めたいと言ったのに、撮影したデータを盾に脅されている」。こうした悩みを抱える方は決して少なくありません。2022年に施行されたAV出演被害防止・救済法により、一定の条件を満たせば、撮影に同意していた場合でも契約を解除してデータの削除を求められるようになりました。
この請求書は、そうした被害からの回復を目指す方が、相手方に対して明確な意思表示を行うために作成しました。削除を求めるデータの範囲、請求の根拠、具体的な請求事項、回答期限、そして対応がなければ法的措置を検討する旨の警告まで、必要な内容をすべて盛り込んでいます。請求の根拠としては、AV出演被害防止・救済法だけでなく、契約の無効や取消し、肖像権やプライバシー権に基づく請求など、複数の選択肢を用意していますので、状況に応じて使い分けることができます。
使用する場面としては、プロダクションや制作会社に対して自分でまず請求書を送りたいとき、弁護士に依頼する前に相手の出方を見たいとき、あるいは支援団体のサポートを受けながら交渉を進めるときなどが想定されます。
Word形式でお渡ししますので、ご自身の状況に合わせて日付や宛先、チェック項目などを自由に編集してお使いいただけます。
【2】解説
1. 撮影の特定
どの撮影についての請求なのかを明らかにする項目です。撮影日、撮影場所、作品名や企画名、契約日などを記載します。これがあいまいだと、相手方に「どの撮影のことか分からない」と言い逃れをされてしまいます。たとえば、2024年3月15日に渋谷のスタジオで撮影した「〇〇企画」というように、できるだけ具体的に書くことが重要です。契約書の控えがあれば、そこに記載されている情報をそのまま写すのが確実です。
2. 削除を請求するデータの範囲
何を消してほしいのかを明確にする項目です。動画データ、静止画(写真やスクリーンショット)、音声データ、それらの複製物など、チェックボックス形式で選べるようにしています。「動画は消してもらったけど、写真が残っていた」「編集前の素材がまだある」といった事態を防ぐため、できるだけ広く指定しておくことをおすすめします。編集前・編集後の両方を含むと明記しているのもポイントです。
3. 請求の根拠
なぜ削除を請求できるのか、その法的な根拠を示す項目です。AV出演被害防止・救済法に基づく契約解除や公表停止請求のほか、契約が無効である場合、詐欺や強迫で取り消せる場合、肖像権やプライバシー権に基づく場合など、複数の選択肢を用意しています。どれに該当するか分からない場合は、弁護士や支援団体に相談してから記入するのが安全です。複数にチェックを入れることも可能です。
4. 請求事項
相手方に具体的に何をしてほしいかを列挙しています。データの削除、公表の停止(販売・配信・レンタルの中止)、第三者に渡したデータの回収と削除、そして削除完了の書面報告です。特に、制作会社が販売代理店や配信プラットフォームにデータを渡している場合、その先まで削除させることが重要です。回答期限を設けることで、いつまでに対応すべきかを明確にしています。
5. 回答期限
相手方がいつまでに返事をすべきかを定めています。一般的には2週間から1か月程度が多いです。期限を区切らないと、いつまでも対応を引き延ばされてしまうリスクがあります。「本書面到達後○日以内」という形式なので、内容証明郵便で送れば到達日が明確になり、期限の計算もしやすくなります。
6. ご対応いただけない場合
期限までに対応がなければ法的措置を検討する、という警告です。損害賠償請求、差止請求、刑事告訴などの可能性を示すことで、相手方に対して真剣に対応するよう促しています。この警告があることで、「とりあえず無視しておこう」という対応を取りにくくなります。実際に法的措置に進むかどうかは、相手の対応を見てから判断すればよいことです。
【4】FAQ
Q1. AV出演被害防止・救済法とは何ですか?
2022年6月に施行された法律で、正式名称は「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」です。この法律により、性行為を含む映像作品については、公表から一定期間内であれば無条件で契約を解除し、データの削除や公表停止を請求できるようになりました。
Q2. 撮影に同意していた場合でも削除請求できますか?
はい、AV出演被害防止・救済法では、撮影時に同意していた場合でも、公表から5年以内(法律施行後2年間は期間制限なし)であれば契約を解除できます。また、詐欺や強迫があった場合、契約内容について十分な説明がなかった場合なども、同意の有無にかかわらず取り消せる可能性があります。
Q3. 性行為を含まない撮影でも使えますか?
はい、この請求書は性行為映像以外にも使えます。グラビア撮影、モデル撮影、インタビュー映像など、肖像権やプライバシー権に基づいて削除を請求できます。ただし、AV出演被害防止・救済法の適用は性行為映像に限られますので、請求の根拠として選択する項目が変わってきます。
Q4.相手が削除に応じない場合はどうすればいいですか?
まずは弁護士や支援団体に相談することをおすすめします。法的措置としては、削除や公表停止を求める仮処分の申立て、損害賠償請求訴訟、刑事告訴(名誉毀損、わいせつ物頒布等)などが考えられます。また、配信プラットフォームやサイト運営者に対して直接削除要請を行う方法もあります。
Q5. 匿名で請求できますか?
残念ながら、正式な請求書として効力を持たせるためには、氏名と住所を記載する必要があります。匿名では相手方も対応のしようがありません。ただし、弁護士に依頼すれば、弁護士名義で請求書を送ることができ、ご自身の住所を直接相手に知らせずに済む場合があります。
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