役員退職慰労金規程

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役員退職慰労金規程

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【1】書式概要

 

この文書は、企業の取締役や監査役が任期を終えて退任する際に、どのくらいの慰労金を支給するのかをあらかじめ定めておくための規程です。役員が退職するときの扱いは、会社ごとに大きく異なります。何も決めておかないと、支給額でトラブルが起きたり、税務上の問題が生じたりする可能性があります。この規程があれば、支給額の計算方法が明確になり、役員と会社の双方が安心できます。

 

実務では、例えば創業者である会長が退任したり、経営方針の違いで役員が交代したり、新しい事業体制に向けて経営陣を刷新したりといった場面で活用されます。特に会社が成長段階にあるとき、または事業承継の際に、この規程の重要性が増します。こうした場面を想定して、あらかじめきちんとした基準を作っておく必要があります。

 

この規程では、月額報酬と在任期間、そして役職に応じた功績倍率を組み合わせて、退職慰労金の金額を計算します。取締役と監査役で決定プロセスが異なることも明記されています。また、経営判断上必要に応じて支給額を減額できる仕組みも設けられており、実務的な柔軟性も備えています。

 

このテンプレートはWord形式で提供されるため、自社の事情に合わせて細部をカスタマイズして使用できます。計算式や功績倍率を調整したり、自社固有の条項を追加したりすることが容易です。法律の専門知識がなくても、提供されたひな形に沿って自社の状況を反映させるだけで、実用的な規程を完成させられます。

 

 

 

 

【2】条文タイトル

 

第1条(目的)
第2条(退任の定義)
第3条(使用人兼務取締役)
第4条(退職慰労金の決定)
第5条(退職慰労金の基準)
第6条(功績倍率)
第7条(退職慰労金の減額等)
第8条(支払方法)
第9条(改定)

 

 

 

 

【3】逐条解説

 

第1条(目的)

この規程全体が何のために存在するのかを宣言する部分です。取締役と監査役が退任するときの慰労金支給について定めるという基本方針を示しています。重要な点は、この規程の対象から除外される者がいるということです。非常勤役員や他社から派遣されてきた役員については、別の扱いをすることが想定されています。例えば、外部から招いた非常勤監査役や一時的に親会社から派遣されてきた役員には、この規程を適用しないということです。こうした除外規定があることで、各企業の多様な人事体制に柔軟に対応できます。

 

第2条(退任の定義)

ここで「退任」が具体的に何を意味するのかが定義されます。役員の地位を失うことが基本ですが、注目すべきは「引き続き選任された場合も含む」という部分です。例えば、取締役から監査役に異動した、あるいは監査役から取締役に異動したといった場合、会社にとっては同じ人物が引き続き役員であっても、元の役職からは退任したとみなされます。その際には慰労金が支給される可能性があります。一方、任期満了後に同じ職のまま重任(再任)された場合は退任ではなく、慰労金は支給されません。これにより、単なる職位の変更と本当の退職を区別しています。

 

第3条(使用人兼務取締役)

取締役の中には、同時に従業員としても働く人がいます。これを使用人兼務取締役といいます。この条文は、そうした人が退職する際に、この規程で支給する退職慰労金には、従業員としての退職金は含まれないということを明確にしています。つまり、役員退職慰労金と従業員退職金は別々に計算・支給されるということです。例えば、営業部長兼取締役が退職する場合、取締役としての慰労金と営業部長としての退職金の両方が発生しますが、混同しないようにするための規定です。

 

第4条(退職慰労金の決定)

誰がどのような手続きで退職慰労金の額を決めるのかを定めています。取締役の場合は、株主総会の決議と取締役会の決定の両段階を経ます。これは、役員の報酬に関わる重要な決定であり、株主の同意と経営陣の合意の両方が必要という考え方です。監査役の場合は、同じく株主総会の決議を経た上で、監査役同士の協議によって決定されます。監査役は企業の監視機能を担う立場であるため、互いに協議してバランスの取れた判断をする仕組みになっています。

 

第5条(退職慰労金の基準)

実際の計算式が示されます。月額報酬に在任期間の年数と功績倍率を掛けることで、退職慰労金が算出されます。例えば、月額報酬が100万円、在任期間が5年、功績倍率が300%の役員であれば、1,500万円が支給されます。ここで注目すべきは、任期途中での退職についての扱いです。1年未満で退職する場合は、6ヶ月未満は切り捨て、6ヶ月以上は1年として計算します。これにより、短期間の役員任期については支給額が少なくなったり、ゼロになったりする可能性があります。

 

第6条(功績倍率)

役員の職位ごとに、功績倍率の上限が定められています。取締役社長が最も高く500%まで、その下が副社長の400%、専務取締役の350%、常務取締役の300%、取締役が250%、そして監査役も250%です。この倍率は、役員の責任の大きさや会社への貢献度を反映させたものと考えられます。例えば、社長は企業全体の経営責任を負うため最も高く、平取締役の倍率は低めに設定されています。実際の倍率は、これらの上限の範囲内で、個別の役員の実績や状況に応じて調整されます。

 

第7条(退職慰労金の減額等)

この規程により支給する慰労金は、一定の条件下では減額されたり、支給されなくなったりすることがあります。会社に対して重大な損害を与えた場合や、役員としての責務に反して解任された場合がそれに該当します。例えば、不正行為で会社に損害を与えたり、職務怠慢で解任されたりした場合です。取締役の場合は取締役会の決議で減額を決定し、監査役の場合は監査役の協議で決定します。このように、支給を保障しつつも、経営判断の余地を残す仕組みになっています。

 

第8条(支払方法)

退職慰労金をどのような方法で支払うのかを決める手続きを定めています。一括払いなのか、分割払いなのか、あるいは特殊な方法をとるのか、そういった具体的な支払方法は、第4条と同様に、株主総会の決議と役員会議(取締役会または監査役協議)で決定されます。これにより、単に「いくら支給するか」だけでなく、「どのように支給するか」についても、適切な手続きを経た上で決まることになります。

 

第9条(改定)

この規程自体を変更する場合は、取締役会の決議によって行うことが定められています。規程の改定は、会社の重要な事項であるため、独断で変更されるのではなく、取締役会という合議体の決議を経ることで、透明性と適切性が保証されます。例えば、経営環境の変化に対応して功績倍率を見直したり、新しい役職に対応する条項を追加したりする場合に、この手続きが必要になります。

 

 

 

 

【4】FAQ

 

Q1:この規程は必ず導入しなければならないのですか?

A:法律で義務化されているものではありませんが、役員退職時のトラブルを防ぐために、多くの企業が導入しています。あらかじめ基準を定めておくことで、支給額についての紛争を未然に防ぐことができます。

 

Q2:すでに役員がいる会社でも、この規程を新たに導入できますか?

 A:可能です。ただし、既存の役員に対してはどのようなルールを適用するのか、あらかじめ確認しておく必要があります。新規程の導入と同時に、経過措置や既得権の扱いについて、役員と話し合っておくことが大切です。

 

Q3:使用人兼務取締役とはどのような人ですか?

A:同時に従業員としても働いている役員のことです。例えば、営業部長として会社で働きながら、同時に取締役の地位にある人がそれに該当します。この場合、役員としての慰労金と従業員としての退職金は別々に計算されます。

 

Q4:月額報酬とは基本給だけですか、それとも手当も含みますか?

A:規程には具体的な定義がないため、会社の判断になります。通常は基本給を指しますが、固定的な職務手当を含めるかどうかは、あらかじめ定めておくべきです。

 

Q5:功績倍率はどのようにして決めるのですか?

A:規程では各役職の「上限」を定めているだけで、実際の倍率は別途、役員の実績や貢献度に応じて個別に決定されます。例えば、取締役社長でも、業績不振であれば上限の500%ではなく、より低い倍率が適用される場合もあります。

 

Q6:任期途中で退職する場合、6ヶ月未満の場合は慰労金をまったく支給しないということですか?

A:そうではなく、6ヶ月未満の場合は「切り捨て」という意味なので、その期間については計算時に0年として扱われます。つまり、在任期間が1年と5ヶ月の場合は、1年として計算されるということです。

 

Q7:役員が会社に損害を与えた場合、本当に慰労金をまったく支給しないことができますか?

A:規程上は可能ですが、実際には個別の状況を総合的に判断する必要があります。また、支給しないという決定をした場合は、その根拠を明確にしておくことが大切です。

 

Q8:監査役の慰労金も同じ計算式で計算されるのですか?

A:はい、計算式は同じです。ただし、功績倍率の上限は取締役と監査役で異なります。取締役では役職によって250%から500%まで幅がありますが、監査役は一律で250%までです。

 

Q9:この規程を税務申告の際に提出する必要があるのですか?

A:役員退職慰労金は給与所得控除が受けられる場合があり、税務上の取り扱いは複雑です。支給する際には、会社の顧問税理士に相談して、適切な手続きを取ることをお勧めします。

 

Q10:退職慰労金の支払いが大きな負担になってしまいます。何か対策はありますか?

A:役員退職慰労金債務を保険で準備する方法があります。また、支払方法を分割払いにすることで、会社の資金流出を平準化することも可能です。このような対策については、顧問税理士や保険代理店に相談してください。

 

 

 

 

【5】活用アドバイス

 

最初のステップ:自社の役員構成を整理する

まずこの規程を導入する前に、現在の役員が何人いるのか、どのような役職にあるのか、月額報酬はいくらなのかを整理してください。その上で、規程内の役職区分が自社に合っているかを確認します。例えば、自社には専務取締役がいない場合でも、規程には専務取締役の功績倍率が載っています。そういった場合は、規程をカスタマイズするか、または「該当者がいない場合は適用されない」という認識で進めてもかまいません。

 

月額報酬の定義を明確にする

「月額報酬」という言葉は一般的ですが、その定義は会社によって異なる可能性があります。基本給だけなのか、固定的な手当を含むのか、期末手当は含むのか、そうした詳細を別途の覚書や経営会議の議事録で明確にしておくことをお勧めします。あとで支給額をめぐるトラブルが起きるのを防ぐことができます。

 

在任期間の計算方法をあらかじめ決めておく

就任日と退任日を正確に記録することが大切です。6ヶ月未満の切り捨て規定があるため、退任日が1日違うだけで慰労金の額が変わる場合があります。会社の登記簿や役員名簿を確認して、正確な日付を把握してください。

 

株主総会と取締役会のスケジュールを確保する

この規程では、支給金額の決定に株主総会と取締役会(または監査役協議)の決議が必要です。役員が退職する可能性が想定されるなら、あらかじめこうした会議のスケジュールを決めておくと、スムーズに手続きが進みます。退職が予見できない場合でも、急遽対応できるように社内体制を整えておくことが大切です。

 

功績倍率の基準を社内で共有する

規程には各役職の「上限」が示されていますが、実際にどの倍率を適用するかは、個別の判断になります。社長や経営陣の間で「どのような功績があれば、どの程度の倍率を適用するのか」という暗黙の基準が形成されることが多いです。ただ、これが暗黙の了解だと、後々解釈の相違が生じます。特に経営陣が交代するときは、新しい経営陣と既存役員との間でトラブルが起きやすいです。可能であれば、功績評価の考え方について、経営会議で一度議論し、会議録に残しておくことをお勧めします。

 

損害賠償や減額の基準も明確にしておく

第7条では「会社に損害を与えた場合は支給しないこともある」と定められていますが、この「損害」や「責務違反」がどのレベルを指すのかは、別途の判断が必要です。あらかじめ「不正行為があった場合」「職務怠慢で解任された場合」などの事例を想定して、どのような場合に減額するのか、取締役会で一度議論しておくとよいでしょう。

 

顧問税理士との相談を早めに

役員退職慰労金には、税務上の特別な取り扱いがある場合があります。また、支給方法によって税務申告の方法が異なることもあります。規程を作成したら、顧問税理士に見せて、税務上の問題がないか、あるいは節税の工夫の余地がないか、相談することをお勧めします。

 

定期的な見直しを予定する

会社の経営環境や役員構成は変わります。例えば、事業が大きく成長した、あるいは経営危機に直面した、新しい事業領域に進出した、といった場合は、役員への報酬基準も見直しが必要な可能性があります。3年ごと、あるいは経営環階の大きな変化があったときに、この規程が現状に合致しているか、定期的に検討する習慣をつけることが大切です。

 

 

 

 

 

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