【1】書式概要
この「役員行動規範」文書テンプレートは、企業統治の基盤となる重要な指針を提供する包括的な雛形です。企業の役員が果たすべき責任と遵守すべき倫理基準を明確に定義し、健全な企業経営を実現するための具体的なフレームワークを提示しています。
本テンプレートの核心は、経営理念の実現と法令遵守を基本としながら、役員に求められる高度な倫理観と社会的責任を具体的な行動規範として体系化している点にあります。冒頭で目的を明確にし、役員としての自覚を促した上で、各条項において遵守すべき具体的な行動指針を詳述しています。
法令遵守の基本原則から始まり、不正な利益取得の禁止、公務員等への贈収賄行為の禁止、独占禁止法違反および入札談合行為の禁止など、ビジネスにおける重大な法的・倫理的問題に対する明確な指針を提供しています。さらに、インサイダー取引の禁止、企業秘密の漏洩防止、不当表示の禁止、知的財産権侵害の防止といった、現代企業が直面する多様な法的リスクにも網羅的に対応しています。
本テンプレートの特長は、法的要件を満たすだけでなく、「これを疑われるような行為についても同様である」という表現を用いることで、グレーゾーンの行為も明確に禁止している点です。これにより、単なる法令遵守を超えた、より高い倫理水準を企業文化として根付かせる基盤となります。
また、取締役会による決議を通じて改廃できる仕組みを備えており、企業の成長や法的環境の変化に応じて柔軟に更新できる実用性も兼ね備えています。新設企業から上場企業まで、あらゆる規模・業種の企業に適応可能な汎用性を持ちながら、各社の具体的なニーズや業界特性に合わせてカスタマイズできる柔軟性も備えています。
コーポレートガバナンスの強化が求められる現代において、この役員行動規範テンプレートは、企業の持続的成長と社会的信頼の構築に不可欠なツールとなるでしょう。企業倫理の確立、リスク管理の強化、そして企業価値の向上を目指す企業にとって、理想的な出発点となる文書です。
〔条文タイトル〕
第1条(目的)
第2条(役員の行動規範)
第3条(法令等の遵守)
第4条(不正な利益取得の禁止)
第5条(公務員等への贈収賄行為の禁止)
第6条(独占禁止法違反の行為及び入札談合行為の禁止)
第7条(インサイダー取引の禁止)
第8条(秘密漏洩行為の禁止)
第9条(景表法違反行為の禁止)
第10条(知的財産権侵害の禁止)
附則:
第1条(施行期日)
第2条(規範の改廃)
【2】逐条解説
第1条(目的)
この条文では、役員行動規範の存在意義と目的を明確に定めています。本規範は、企業の役員が経営理念を実現し、法令を遵守するとともに、企業としての社会的責任を果たすことを目的としています。これにより、役員の行動に指針を与え、企業全体の倫理的な方向性を示す基盤となります。
第2条(役員の行動規範)
この条文は、役員に対して本規範に従う義務を課しています。役員は自らの職責を自覚し、以下に続く具体的な行動規範に従って行動することが求められています。これは本規範の基本的な拘束力を示す条項です。
第3条(法令等の遵守)
この条文は、役員の法令遵守義務の基本を定めています。役員は法律、定款、社内規程等を遵守し、高い倫理観を持って職務を遂行する必要があります。第2項では法令違反行為の禁止、第3項では法令の解釈が明確でない場合でも高い倫理観と良識に基づいて行動する義務を課しています。これは単なる法令遵守を超えた、より高い水準の行動規範を求めるものです。
第4条(不正な利益取得の禁止)
この条文は、役員による地位の濫用と不正な利益取得を禁止しています。第1項では役員の地位を利用した個人的利益の取得を禁止し、第2項では取引先等からの過度の接待や贈答の受領を禁止しています。これは利益相反の防止と公正な業務執行の確保を目的としています。
第5条(公務員等への贈収賄行為の禁止)
この条文は、公務員や政治家に対する贈収賄行為を明確に禁止しています。贈収賄罪に該当する行為だけでなく、そのように疑われる行為も同様に禁止されています。これは企業の社会的信頼を守り、公正な取引関係を維持するための重要な規定です。
第6条(独占禁止法違反の行為及び入札談合行為の禁止)
この条文は、自由・公正・透明な競争原理の尊重を求め、独占禁止法違反行為や入札談合といった反競争的行為を禁止しています。これらの行為は市場の健全性を損なうだけでなく、企業の信頼性や評価にも大きな影響を与えるため、厳しく禁止されています。
第7条(インサイダー取引の禁止)
この条文は、職務上知り得た重要な経営情報を利用した株式や債券の売買など、証券取引法(現在の金融商品取引法)に違反する行為を禁止しています。公正な市場の維持と投資家保護のため、疑われるような行為も含めて禁止しています。
第8条(秘密漏洩行為の禁止)
この条文は、役員が職務上知り得た会社および取引先の重要な経営情報を第三者に漏らすことを禁止しています。企業機密の保護は競争力維持のために不可欠であり、情報管理の徹底を役員に求める重要な規定です。
第9条(景表法違反行為の禁止)
この条文は、商品に関する虚偽または誤解を招く表示や広告など、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)に違反する行為を禁止しています。消費者保護と公正な競争の確保のため、疑われる行為も含めて禁止しています。
第10条(知的財産権侵害の禁止)
この条文は、他社の特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの知的財産権を侵害する行為を禁止しています。知的財産の尊重は企業間の公正な競争環境を維持するために重要であり、疑われる行為も含めて明確に禁止されています。
附則 第1条(施行期日)
この条文は、本規範の効力が発生する日を定めるものです。実際の日付を設定することで、いつから役員がこの行動規範に従う義務が生じるかを明確にします。
附則 第2条(規範の改廃)
この条文は、本規範の改正や廃止の手続きを定めています。取締役会の決議によって決定されることを明記しており、規範の適切な更新と管理のための基本的な手続きを確立しています。