【1】書式概要
この品質保証規程は、製造業や販売業を営む企業が、自社の製品やサービスの品質を組織的に管理し、お客様の信頼を獲得するために必要な社内ルールを定めた文書テンプレートです。
製品を作って売るだけでなく、企画の段階から市場に出た後のアフターサービスまで、一貫して品質に責任を持つ体制を築くことが現代の企業には求められています。この規程は、本社の各部門(品質管理部、営業部、サービス部など)と事業部門(商品企画、設計、製造など)が、それぞれどのような役割と責任を負うのかを明確に示しています。
特に、新商品を発売する前の審査プロセス、製造工程での品質チェック、お客様からのクレームへの対応方法、協力会社の選定基準など、実務で直面する具体的な場面での対応手順が盛り込まれています。Word形式で提供されるため、自社の組織構成や業種の特性に合わせて部門名や手続きを自由に編集できる点も大きな特徴です。
この文書を使用する場面としては、品質管理体制を初めて構築する企業、既存の品質管理の仕組みを見直したい企業、ISO9001などの品質マネジメントシステムの認証取得を目指す企業、取引先から品質保証体制の整備を求められた企業などが想定されます。また、製造現場での不良品の発生を減らしたい、お客様からのクレームを組織として適切に処理したい、外注先や購買先の品質管理を強化したいといった具体的な課題を抱えている企業にも有効です。
製品の安全性が厳しく問われる時代において、きちんとした品質保証の仕組みを持っていることは企業の信用そのものです。この規程を導入することで、全社員が品質に対する意識を共有し、各部門が連携して品質向上に取り組む土台を作ることができます。
【2】条文タイトル
- 第1条(目的)
- 第2条(適用範囲)
- 第3条(本社スタッフ部門の品質保証任務)
- 第4条(品質管理部長の品質保証任務)
- 第5条(営業部門長の品質保証任務)
- 第6条(サービス部門長の品質保証任務)
- 第7条(事業責任者の品質保証責任)
- 第8条(事業責任者の品質保証任務)
- 第9条(品質保証部門長の品質保証任務)
- 第10条(商品企画部門長の品質保証任務)
- 第11条(設計・技術部門長の品質保証任務)
- 第12条(生産部門の品質保証任務)
- 第13条(品質確認書)
- 第14条(計測)
- 第15条(製品安全に関する確認)
- 第16条(クレーム処理)
- 第17条(重要品質事故の処理)
- 第18条(変更管理)
- 第19条(OEM品質保証)
- 第20条(教育・訓練)
【3】逐条解説
第1条(目的)
品質保証規程を制定する狙いを明らかにした条文です。単に製品の品質を高めるだけでなく、お客様が「この会社の製品なら安心だ」と感じてもらえる信頼関係を築くことが最終目標となっています。企業活動のあらゆる場面で品質を意識する文化を作り上げる出発点と言えるでしょう。
第2条(適用範囲)
この規程がカバーする範囲を定めています。会社が作って売るすべての製品が対象ですから、特定の商品ラインだけ例外扱いするということはありません。全社統一のルールとして運用することで、どの製品を手に取っても同じ水準の品質が保たれる仕組みになっています。
第3条(本社スタッフ部門の品質保証任務)
本社のスタッフ部門、つまり現場で製品を作ったり売ったりする部門ではなく、全社的な視点で支援する部門の役割を示しています。各事業部が品質保証活動をスムーズに進められるよう後押しする立場です。例えば、品質管理の研修を企画したり、部門間の調整役を務めたりする場面が考えられます。
第4条(品質管理部長の品質保証任務)
品質管理部長は全社の品質保証活動の司令塔です。会社全体の品質方針を立案し、新製品が市場に出る前にしっかり審査する責任を負います。工場や市場で品質トラブルが起きた際には、すぐに社長へ報告し、関係部門へ改善策を提案します。また、計測器の管理責任者として、製品の検査に使う機器が正確に測定できる状態を維持する役割も担っています。
第5条(営業部門長の品質保証任務)
営業部門は製品を売るだけの部署ではありません。販売店やお客様に製品の正しい使い方や特長を伝え、誤解から生じるトラブルを未然に防ぐ役割があります。さらに、市場で「こんな機能が欲しい」「ここが使いにくい」といった生の声を集めて、商品企画や設計部門にフィードバックすることで、次の製品改良につなげる重要な窓口になっています。
第6条(サービス部門長の品質保証任務)
アフターサービスを担当する部門の責任者は、製品が壊れにくい設計になっているか、修理しやすい構造かといった「サービス性」の向上に関わります。修理マニュアルを整備し、全国のサービス拠点に技術を浸透させることで、お客様が困ったときに迅速に対応できる体制を作ります。また、修理の現場で得られた情報、例えば「この部品がよく壊れる」といったデータを設計部門に伝え、製品改良に活かす橋渡し役も務めます。補修部品の品質管理や在庫確保も重要な任務です。
第7条(事業責任者の品質保証責任)
事業部門のトップは、自分の部門が企画して作って売る製品について、最初から最後まで一貫して品質に責任を持ちます。企画段階での品質目標設定から、設計、製造、出荷、そして市場でのアフターケアまで、すべてのプロセスで品質を保証する体制を整える義務があります。いわば「この製品の品質は私が保証します」という宣言であり、組織として継続的に改善を回していく仕組みを維持しなければなりません。
第8条(事業責任者の品質保証任務)
新製品を市場に出す前には、いくつかの重要なチェックポイントがあります。まず、新製品として販売してよい品質レベルに達しているか審査を受けます。合格しなければ出荷できません。次に、量産を始める前に「品質確認会」を開き、製造ラインが安定して良い製品を作れる状態か、サービス体制や補修部品の準備は整っているか確認します。さらに、最初のロットを出荷する際にも「出荷確認会」で最終チェックを行います。こうした段階的な確認を経ることで、品質トラブルを未然に防ぐわけです。
第9条(品質保証部門長の品質保証任務)
品質保証部門のトップは、事業責任者の右腕として品質保証業務を実行します。出荷前の製品をお客様の目線でチェックし、もし信用を失うような品質問題があれば、出荷をストップさせる強い権限を持っています。市場や工程で異常が発生したときには、迅速に対策を立てて事業責任者に提案し、適切な処置を講じます。出荷する製品(補修部品も含む)の品質状態を、あくまで「お客様だったらどう感じるか」という視点で最終確認する番人のような存在です。
第10条(商品企画部門長の品質保証任務)
商品企画の段階から品質保証は始まっています。お客様が本当に求めている品質、つまり「こんな性能が欲しい」「こんなデザインがいい」といった要望を常にキャッチし、それを具体的な製品の仕様に落とし込む役割です。市場調査やアンケート、競合製品の分析などを通じて、お客様の期待を的確につかむことが品質保証の第一歩になります。
第11条(設計・技術部門長の品質保証任務)
商品企画で決まった内容を、実際に動く製品として形にするのが設計・技術部門です。部門長は、企画段階で定めた品質目標を設計仕様書という形で明文化し、その目標を達成できる技術を選んで設計に反映させます。また、設計の節目節目で「デザインレビュー」という評価会議を開き、関係者を交えて「この設計で本当に品質目標を満たせるか」をチェックします。問題を早く見つけて早く直すことで、後工程でのトラブルを減らせます。
第12条(生産部門の品質保証任務)
製造現場での品質確保は複数の部門が連携して行います。まず、購買・外注部門は、部品や材料を供給してくれる会社を選ぶ際、その会社がきちんとした品質管理体制を持っているかチェックします。信頼できる協力会社を選ぶことが品質の土台です。購入品の品質を継続的に管理する仕組みも必要です。製造部門長は、工程内で「人・方法・機械・材料・測定」という5つの要素(5M)を常に管理し、安定した品質の製品を作り込みます。また、次の工程に不良品を流さないよう、適切なタイミングで検査工程を設けることも求められます。
第13条(品質確認書)
新製品の品質状態を記録する「品質確認書」という文書を作成します。品質保証部門長が所定の要領に従って作り、事業責任者がその内容を確認することで、「要求していた品質がちゃんと実現できているか」を客観的に判断できます。品質確認書は、後で振り返ったときの証拠にもなりますし、万が一トラブルが起きたときの原因究明にも役立ちます。
第14条(計測)
製品の品質を測るには、正確な計測器が欠かせません。事業責任者は、使用する測定機器が狂っていないか定期的に点検し、校正を行う責任があります。例えば、寸法を測るノギスや電圧を測るテスターなどが正確でなければ、良品と不良品の判定を誤ってしまいます。計測管理規程に従って、機器の精度を維持する仕組みを回すことが品質保証の基本です。
第15条(製品安全に関する確認)
製品の安全性は品質以上に重要です。企画、設計、製造、出荷のそれぞれの段階で、担当部門長が製品安全管理基準に沿って安全性をチェックします。例えば、電気製品なら感電や発火のリスクがないか、子供が使う製品なら誤飲の危険がないかなど、段階ごとに確認することで、市場に出てから重大事故が起きるリスクを最小限に抑えます。
第16条(クレーム処理)
お客様からクレームが入ったら、まず迅速に対応することが大切です。サービス部門や関係部門が協力して、お客様が納得できる解決策を提供します。同時に、同じトラブルが二度と起きないよう、原因を徹底的に分析して再発防止策を講じます。クレームは品質改善のヒントの宝庫でもあるので、単に謝って終わりではなく、次の製品やサービスに活かす姿勢が求められます。
第17条(重要品質事故の処理)
製品に重大な欠陥が見つかったり、大きな事故につながる可能性がある情報を入手したりした場合には、通常のクレーム対応とは別の特別な手続きが必要です。事業責任者は、あらかじめ定められた「重要品質事故用の取扱要領」に従って、社長への報告、関係機関への届出、リコールの検討など、迅速かつ組織的に対応しなければなりません。
第18条(変更管理)
製品の設計や製造工程を変更するときは、品質に影響が出ないか慎重に確認する必要があります。例えば、コストダウンのために部品の材質を変えたら強度が落ちてしまった、といった失敗を防ぐため、変更管理システムに沿って事前にチェックを行います。変更前後で品質テストを実施し、問題がないことを確認してから変更を実施するプロセスが重要です。
第19条(OEM品質保証)
他社ブランドで自社製品を供給するOEM取引では、取引先と品質契約を結び、相手が要求する品質水準を確保します。ただし、契約で明記されていない部分の品質についても、自社ブランドで販売する場合と同等か、それ以上の品質を維持することが原則です。他社の名前で売られる製品でも、最終的には自社の技術力や信用に跳ね返ってくるからです。
第20条(教育・訓練)
品質保証体制は、制度を作っただけでは機能しません。従業員一人ひとりが品質の重要性を理解し、日々の業務で実践できるよう、継続的な教育や訓練が欠かせません。各部門長は、品質管理の基礎知識、統計的手法の使い方、問題解決の進め方など、職場に応じた教育プログラムを定期的に実施し、全員が品質意識を持って改善活動に取り組む風土を育てます。
【4】活用アドバイス
この品質保証規程を導入する際は、まず自社の組織図と照らし合わせて、各条文で定められている部門名や役職名を実態に合わせて修正しましょう。例えば「品質管理部」が「品質保証課」になっている会社もあれば、「事業責任者」が「工場長」や「事業部長」と呼ばれている場合もあります。Word形式なので簡単に編集できます。
次に、規程の中で「別途定める」と書かれている関連文書のリストを作成してください。商品審査規程、計測管理規程、製品安全管理基準、重要品質事故の取扱要領など、この規程を実際に運用するために必要な下位文書が複数あります。すべてを一度に整備するのは大変なので、優先順位をつけて段階的に作成していくのが現実的です。
また、規程を作っただけで満足せず、実際に運用して初めて効果が出ます。新製品の発売時に第8条で定めた「品質確認会」や「出荷確認会」を実施してみる、クレームが発生したら第16条に沿って再発防止策を文書化するなど、小さなことから実践していきましょう。最初は形式的でもかまいません。回数を重ねるうちに、自然と品質意識が組織に浸透していきます。
定期的に規程の見直しも必要です。事業環境が変われば、必要な品質管理のレベルや手法も変わります。年に一度、経営層や各部門長が集まって、この規程が実態に合っているか、追加すべき項目はないかを話し合う機会を設けると良いでしょう。
【5】この文書を利用するメリット
組織全体の品質意識が統一される 品質保証規程があることで、企画から製造、販売、アフターサービスまで、すべての部門が同じ方向を向いて品質向上に取り組めます。「品質は製造部門だけの仕事」という縦割り意識を打破し、全社で責任を分担する文化が育ちます。
トラブル発生時の対応が迅速になる クレームや品質事故が起きたとき、誰がどう動くべきかが明確になっていれば、混乱せずに対処できます。特に重大事故の場合は初動の遅れが致命的ですから、あらかじめ手順を決めておくことで被害の拡大を防げます。
取引先や顧客からの信頼が向上する きちんとした品質保証体制を持っている企業は、それだけで社会的信用が高まります。新規取引の際に品質保証規程の提示を求められることもありますし、ISO9001などの認証取得を目指す際の土台にもなります。
教育コストの削減 新入社員や異動してきた社員に品質管理の考え方を教える際、この規程が教科書代わりになります。口頭で説明するよりも、文書で体系的に示した方が理解しやすく、教育の属人化も防げます。
継続的な品質改善の仕組みができる デザインレビューや変更管理といったプロセスを規程に組み込むことで、問題を早期に発見し、小さなうちに改善する習慣が根付きます。結果として、市場に出てからの大きなトラブルが減り、リコールなどのリスクも低減できます。
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