【1】書式概要
この契約書は、企業や団体がフリーランスのクリエイターやデザイナーに仕事を依頼する際に使用する業務委託契約書です。近年、働き方改革やデジタル化の進展により、多くの企業が外部のクリエイティブ人材を活用するようになっています。しかし、口約束だけで仕事を依頼してしまうと、後々トラブルになることが少なくありません。
特に、ウェブサイトのデザイン制作、ロゴ作成、販促用チラシの制作、SNS用バナー画像の作成といったクリエイティブ業務では、完成したデザインの著作権が誰に帰属するのか、修正は何回まで対応してもらえるのか、納期はいつなのかといった点が曖昧になりがちです。このような問題を解決するために作成されたのが、この契約書テンプレートです。
本書式は、日本語版と英語版を併記した対訳形式となっており、海外のクリエイターと契約を結ぶ際にも活用できます。Word形式で提供されているため、お客様の業務内容に合わせて自由に編集・カスタマイズが可能です。契約条項も実務で重要となるポイントを網羅しており、初めて外注契約を結ぶ企業でも安心してご利用いただけます。
契約書には、著作権の帰属、秘密保持、個人情報の取扱い、反社会的勢力の排除といった現代のビジネスに欠かせない条項も含まれています。また、別紙として業務仕様書も付属しており、具体的な作業内容、納期、納入物、修正回数などを明確に定めることができます。
【2】条文タイトル
第1条(目的) / Article 1 (Purpose) 第2条(業務の委託) / Article 2 (Entrustment of Services) 第3条(善管注意義務) / Article 3 (Duty of Care) 第4条(再委託の禁止) / Article 4 (Prohibition of Subcontracting) 第5条(納品および検収) / Article 5 (Delivery and Acceptance) 第6条(報酬および支払方法) / Article 6 (Compensation and Payment Method) 第7条(知的財産権) / Article 7 (Intellectual Property Rights) 第8条(秘密保持) / Article 8 (Confidentiality) 第9条(個人情報の取扱い) / Article 9 (Handling of Personal Information) 第10条(権利義務の譲渡禁止) / Article 10 (Prohibition of Assignment of Rights and Obligations) 第11条(契約期間) / Article 11 (Contract Period) 第12条(反社会的勢力の排除) / Article 12 (Exclusion of Anti-Social Forces) 第13条(解除) / Article 13 (Termination) 第14条(損害賠償) / Article 14 (Damages) 第15条(協議解決) / Article 15 (Resolution through Consultation) 第16条(管轄裁判所) / Article 16 (Jurisdiction)
【3】逐条解説
第1条(目的)/ Article 1 (Purpose)
この条項は契約書の存在意義を明確にしています。「なぜこの契約を結ぶのか」という基本的な目的を定めることで、後々の解釈で迷うことを防ぎます。実務では、この条項があることで契約の範囲が明確になり、想定外の業務を押し付けられるリスクを回避できます。
第2条(業務の委託)/ Article 2 (Entrustment of Services)
委託する業務の内容を定める核心部分です。具体的な作業内容は別紙の業務仕様書で詳細に規定するため、この条項では基本的な委託関係の成立を確認しています。例えば、ロゴデザインを依頼する場合、「ロゴデザイン業務」と記載し、詳細な要求事項は仕様書に記載するという流れになります。
第3条(善管注意義務)/ Article 3 (Duty of Care)
受託者であるクリエイターに対して、プロフェッショナルとしての責任ある仕事を求める条項です。「善良なる管理者の注意」とは、その分野の専門家として通常求められる注意義務を意味します。デザイナーであれば、業界標準のスキルと注意深さをもって作業することが期待されます。
第4条(再委託の禁止)/ Article 4 (Prohibition of Subcontracting)
信頼して依頼したクリエイターが、勝手に他の人に仕事を丸投げすることを防ぐ条項です。ただし、書面で同意があれば再委託も可能としており、完全に禁止しているわけではありません。例えば、ウェブデザイナーがコーディング作業の一部を専門業者に依頼したい場合などに配慮した規定です。
第5条(納品および検収)/ Article 5 (Delivery and Acceptance)
制作物の納品から検収までの流れを明確にした重要な条項です。14日間の検収期間を設けることで、委託者は十分な時間をかけて成果物をチェックできます。また、期間内に何も言わなければ自動的に合格とみなされるため、曖昧な状態が続くことを防げます。修正要求も可能ですが、これは仕様書通りでない場合に限定されます。
第6条(報酬および支払方法)/ Article 6 (Compensation and Payment Method)
金銭面でのトラブルを避けるため、報酬額と支払方法を明確に定めています。検収合格後に請求書を受領し、翌月末までに支払うという一般的なビジネス慣行に沿った内容です。振込手数料は委託者負担とすることで、受託者の実質的な収入を保護しています。
第7条(知的財産権)/ Article 7 (Intellectual Property Rights)
クリエイティブ業務で最も重要な条項の一つです。制作された成果物の著作権は納品時に委託者に移転すると明記されています。また、著作者人格権の不行使も定めており、委託者が自由に改変や利用を行えるようになっています。例えば、制作されたロゴを後から色を変更したい場合でも、デザイナーから文句を言われる心配がありません。
第8条(秘密保持)/ Article 8 (Confidentiality)
業務を通じて知り得た情報の守秘義務を定めています。5年間という期間を設定することで、契約終了後も一定期間は秘密を保持する義務が続きます。新商品のデザインを依頼する場合など、企業の機密情報に触れる可能性が高いクリエイティブ業務では特に重要な条項です。
第9条(個人情報の取扱い)/ Article 9 (Handling of Personal Information)
個人情報保護への社会的関心が高まる中で設けられた条項です。顧客データベースのデザイン作業など、個人情報に触れる可能性がある業務において、適切な取扱いを求めています。目的外使用や第三者への開示を禁止することで、個人情報漏洩リスクを軽減します。
第10条(権利義務の譲渡禁止)/ Article 10 (Prohibition of Assignment of Rights and Obligations)
契約上の地位を勝手に他者に譲渡することを禁止しています。信頼関係に基づく委託契約の性質を保護するための条項です。ただし、書面による同意があれば譲渡可能としており、合理的な理由がある場合には柔軟に対応できるようになっています。
第11条(契約期間)/ Article 11 (Contract Period)
契約の有効期間を業務完了までと定めています。継続的な契約ではなく、特定の業務が完了すれば契約も終了するという明確な仕組みです。これにより、いつまでも契約関係が続くという曖昧な状況を避けることができます。
第12条(反社会的勢力の排除)/ Article 12 (Exclusion of Anti-Social Forces)
現代の契約書には欠かせない条項となっています。暴力団などの反社会的勢力との関係を完全に遮断することで、健全なビジネス環境を維持します。違反が発覚した場合の無催告解除権も定められており、迅速な対応が可能です。
第13条(解除)/ Article 13 (Termination)
契約違反や支払能力の喪失など、重大な事態が発生した場合の契約解除について定めています。催告期間を設けることで改善の機会を与える一方、破産手続きの開始など回復不可能な事態については即座に解除できるようになっています。
第14条(損害賠償)/ Article 14 (Damages)
契約違反による損害賠償責任を明確にしています。ただし、天災などの不可抗力による損害は除外されており、合理的な制限が設けられています。例えば、地震によりデザイナーのパソコンが壊れて納期に間に合わなかった場合などは、賠償責任を問われません。
第15条(協議解決)/ Article 15 (Resolution through Consultation)
契約書に定めのない事項や解釈に疑義が生じた場合の解決方法を定めています。まずは当事者間の話し合いで解決を図るという、円満解決を重視した内容になっています。
第16条(管轄裁判所)/ Article 16 (Jurisdiction)
万が一訴訟になった場合の裁判所を事前に決めておく条項です。専属的合意管轄とすることで、他の裁判所に訴えを提起することを防ぎ、予測可能性を高めています。通常は委託者の本社所在地を管轄する地方裁判所を指定することが多いです。
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