【1】書式概要
この境界確定契約書は、隣接する土地の所有者同士が境界線を明確に定めるために作成する重要な書類です。不動産を所有していると、隣の土地との境界がはっきりしないことや、建物の一部が隣地にはみ出してしまうトラブルに遭遇することがあります。そんな時に威力を発揮するのがこの契約書です。
特に都市部では土地が狭く、わずか数センチの境界線の違いでも大きな問題となります。この契約書があれば、お互いの権利を守りながら、円満に境界を確定できるのです。建物の一部が隣地に越境している場合の取り壊しや明け渡し、その後の境界標の設置まで、一連の流れを網羅しています。
外国人の土地所有者や国際的な不動産取引が増えている現在、日本語と英語の両方で記載されたこの契約書は非常に実用的です。不動産業者、土地家屋調査士、司法書士の方々にとって、クライアントへの説明資料としても活用できます。
Word形式で提供されているため、実際の案件に合わせて土地の所在地や面積、当事者名などを簡単に編集できます。専門家でなくても使いやすく、時間と費用の節約にもつながります。
【2】逐条解説
第1条(境界の確定)
この条文は契約の核心部分です。境界線を「ロ点」と「ホ点」という具体的な座標点で結んだ直線として定義しています。実際の現場では、測量士が正確な測量を行い、これらの点を確定します。たとえば住宅地で隣家との境界が曖昧だった場合、この条文により「この線が正式な境界線です」と明確に宣言できるのです。土地の表示も詳細に記載され、後々の混乱を防ぎます。
第2条(明渡し)
越境建物の処理について定めた実務的な条文です。建物の一部が隣地にはみ出している場合、その部分を取り壊して土地を返還することを約束しています。期限を設けることで、いつまでも曖昧な状態を続けることを防ぎます。興味深いのは、期限内に履行すれば損害金を請求しないという「温情規定」と、遅れた場合の日割り計算による損害金の両方を規定している点です。これにより、当事者双方にとって公平な解決が図れます。
第3条(塀の設置)
境界が確定した後の物理的な境界標の設置について規定しています。費用を折半することで、どちらか一方に負担が偏ることを防いでいます。コンクリートブロックという具体的な材質を指定しているのは、将来の維持管理や取り替えの際に混乱を避けるためです。共有持分を明確にすることで、後々のメンテナンス責任も明確になります。
第4条(損害賠償責任)
契約違反に対する制裁措置を定めた条文です。単なる契約金額だけでなく、弁護士費用まで含めて賠償責任を負うことを明記しています。これにより、契約の履行に対する心理的な抑制効果を高めています。不動産関係の紛争では弁護士費用が高額になることが多いため、この規定により当事者は慎重に行動するようになります。
第5条(協議解決)
契約書に書かれていない事項や解釈に疑問が生じた場合の解決方法を定めています。いきなり裁判に持ち込むのではなく、まずは話し合いで解決を図ろうという姿勢を示しています。「誠意をもって」という表現により、感情的な対立を避け、建設的な話し合いを促進する効果があります。
第6条(合意管轄)
万が一裁判になった場合の裁判所を事前に決めておく条文です。東京地方裁判所を指定することで、どこで裁判をするかという余計な争いを避けることができます。特に当事者が異なる都道府県に住んでいる場合、この規定により手続きがスムーズに進みます。専属的合意管轄とすることで、他の裁判所に訴えることを防ぎ、紛争解決の効率化を図っています。
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