【1】書式概要
この交互計算契約書は、企業間で継続的に行われる商取引において、お互いの売掛金と買掛金を相殺して決済を簡素化するための契約書です。
例えば、A社がB社に商品を販売する一方で、B社からもサービスを購入している場合、毎回個別に請求書を発行し合うのではなく、月末に差額のみを精算することで事務処理を大幅に効率化できます。特に継続的な取引関係にある企業同士では、この仕組みを導入することで経理担当者の負担軽減と資金繰りの改善が期待できます。
建設業界では元請けと下請け間での材料費と工事費の相殺、製造業では部品調達と製品販売の相殺、商社間では輸出入取引の相殺など、様々な業界で活用されています。Word形式で提供されるため、自社の取引実態に合わせて条文の修正や追加が簡単に行えます。経理や法務の専門知識がなくても、基本的な取引条件を入力するだけで実用的な契約書として活用できるよう、分かりやすい条文構成になっています。
【2】条文タイトル
第1条(基本合意) 第2条(組み入れる債権債務) 第3条(組入れ除去) 第4条(交互計算期間) 第5条(支払) 第6条(解約)
【3】逐条解説
第1条(基本合意)
両社が今後発生する売掛金や買掛金について、個別決済ではなく交互計算による一括決済を行うことを定めています。これにより、例えば月に10件の取引があっても、月末に1回の決済で済むようになります。
第2条(組み入れる債権債務)
原則として両社間の全ての取引を交互計算の対象とすることを規定しています。ただし、手形や小切手など現金同等物の取引については除外される場合があります。製造業であれば原材料費と製品代金、サービス業であればサービス料と経費などが対象となります。
第3条(組入れ除去)
手形や小切手が不渡りになった場合など、支払いが確実でない債権については交互計算から除外できることを定めています。これにより、一方的に損失を被るリスクを回避できます。除外する際は相手方への即座の通知が必要です。
第4条(交互計算期間)
毎月20日に計算を締め切り、25日までに計算書を提出することを定めています。受け取った側は月末までに異議を述べなければ承認したものとみなされます。この期間設定により、月次の資金繰り計画が立てやすくなります。
第5条(支払)
計算書で確定した残額について、当月末までの支払義務と遅延時の損害金(年10%)を規定しています。また、計算ミスが後で発見された場合の修正方法も定めており、透明性の高い決済システムを構築できます。
第6条(解約)
契約の解約方法と解約時の最終決済手続きを定めています。書面通知により一方的に解約でき、解約日から1週間以内に最終計算書を提出することで、スムーズな契約終了が可能です。
【4】活用アドバイス
まず自社の取引先の中から、継続的かつ双方向の取引がある企業を特定しましょう。月間の取引回数が多く、金額も相当程度ある取引先が最適です。
契約締結前には、相手方の財務状況を確認することが重要です。交互計算は相手方の信用力に依存するシステムのため、信頼できる取引先との間でのみ導入しましょう。
Word形式の雛形を使用する際は、自社の会計システムや決済サイクルに合わせて期日や条件を調整してください。特に締切日や計算書提出日は、自社の月次決算スケジュールと整合させることが大切です。
導入後は定期的に効果を検証し、事務処理時間の短縮や資金繰り改善の効果を数値で把握しましょう。必要に応じて条件の見直しも検討してください。
【5】この文書を利用するメリット
経理業務の大幅な効率化が最大のメリットです。従来は取引のたびに請求書発行、支払処理、入金確認という一連の作業が必要でしたが、月1回の決済に集約できます。
資金繰りの改善も期待できます。売掛金の回収と買掛金の支払いが同時に行われるため、キャッシュフローの予測が立てやすくなり、運転資金の効率的な活用が可能です。
振込手数料などの決済コストも削減できます。月10回の振込が1回になれば、年間で数万円のコスト削減効果があります。
取引先との信頼関係強化にもつながります。お互いの事務負担軽減により、より本質的なビジネス関係に集中できるようになります。
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