【1】書式概要
この規程は、企業が社員のプロボノ活動を組織的に支援するための包括的な仕組みを定めた社内規程です。現代の企業経営において、CSR(企業の社会的責任)の重要性が高まる中、多くの企業が社員の専門性を活かした社会貢献活動の推進を求められています。
プロボノ活動とは、社員が培った専門知識や技能を非営利団体に無償で提供する活動のことで、企業にとっては社会的評価の向上、社員にとってはスキルアップと自己実現の機会となります。しかし、こうした活動を野放しにしては、情報漏洩リスクや本業への支障といった問題が生じかねません。
この規程では、活動の申請から承認、実施、評価まで一連の流れを体系的に整理し、推進委員会や事務局の設置により組織的な管理体制を構築しています。また、活動時間の制限や費用負担のルール、守秘義務や個人情報保護など、企業が抱えるリスクへの対応も盛り込まれています。
人事部門が中心となってプロボノ活動制度の導入を検討する際や、既存制度の見直しを図る場合に活用できます。Word形式での提供により、各企業の実情に応じた条文の修正や追加が容易に行えます。中堅企業から大企業まで、幅広い組織規模での活用が想定されます。
【2】条文タイトル
第1条(目的) 第2条(定義) 第3条(基本方針) 第4条(対象となる活動分野) 第5条(プロボノ活動推進委員会) 第6条(事務局) 第7条(登録) 第8条(活動の申請) 第9条(活動時間) 第10条(費用) 第11条(活動の制限) 第12条(報告義務) 第13条(活動の評価) 第14条(表彰) 第15条(保険) 第16条(守秘義務) 第17条(個人情報の取扱い) 第18条(知的財産権) 第19条(免責) 第20条(教育研修) 第21条(改廃)
【3】逐条解説
第1条(目的)
この条文は規程全体の存在意義を明確にしています。単なる社会貢献活動の推進にとどまらず、社員の自己実現という個人的メリットも明記することで、会社と社員双方にとって有益な制度であることを示しています。実際の運用では、この目的を社内説明会などで強調することが制度の浸透につながります。
第2条(定義)
専門用語の定義を明確にすることで、後続の条文での解釈の混乱を防いでいます。特に「プロボノ活動」の定義では「専門的な知識、技能又は経験を活かし」という表現により、単なるボランティア活動とは区別しています。例えば、IT部門の社員がNPOのウェブサイト制作を支援する場合などが典型例です。
第3条(基本方針)
プロボノ活動の基本的な考え方を示しています。「自発的な意思」を強調することで、会社からの強制ではないことを明確にし、労働問題の発生を防いでいます。また、業務に支障をきたさない範囲という制限により、本業とのバランスを保つことを求めています。
第4条(対象となる活動分野)
支援可能な分野を具体的に列挙することで、社員が自身のスキルを活かせる領域を把握しやすくしています。経営支援では事業計画の策定支援、法務支援では契約書のチェック、IT支援ではシステム導入のアドバイスなど、各分野で具体的な活動内容をイメージできます。
第5条(プロボノ活動推進委員会)
活動の組織的な推進を図るため、経営層を含む委員会を設置しています。人事担当役員を委員長とすることで、経営方針との整合性を確保しています。委員会の所管事項には基本方針の策定から実施状況の評価まで含まれ、PDCAサイクルの実現を図っています。
第6条(事務局)
日常的な事務処理を担う事務局を人事部内に設置することで、継続的な運営体制を確保しています。情報収集から支援先団体との連絡調整まで、幅広い業務を担当します。実際の運用では、事務局担当者が制度の顔となることが多いため、適切な人材配置が重要です。
第7条(登録)
プロボノ活動への参加希望者に事前登録を求めることで、社員のスキルや希望を把握し、適切なマッチングを可能にしています。登録書では保有スキルと希望分野を記載させることで、効率的な人材活用を図っています。
第8条(活動の申請)
具体的な活動開始前に申請・承認プロセスを設けることで、活動内容の適切性を事前にチェックしています。支援先団体の情報から活動内容、期間、成果物まで詳細に記載を求めることで、リスク管理を行っています。
第9条(活動時間)
労働時間の管理は企業にとって重要な課題です。原則として所定労働時間外での活動とする一方、特別な場合には月20時間を上限として労働時間内での活動を認めています。この柔軟性により、より効果的な支援が可能になります。
第10条(費用)
活動に要する費用負担のルールを明確にしています。原則として支援先負担としつつ、必要に応じて会社が交通費などを負担することで、社員の経済的負担を軽減しています。領収書の添付を求めることで、適切な経費管理を行っています。
第11条(活動の制限)
企業のリスク管理の観点から、活動を制限する場合の基準を明確にしています。信用失墜や機密情報漏洩のリスク、反社会的勢力との関係など、具体的な制限事由を列挙することで、判断基準を明確にしています。
第12条(報告義務)
定期的な報告義務を課すことで、活動の進捗管理と問題の早期発見を図っています。月1回以上の報告頻度により、適切な支援とリスク管理を両立しています。報告書の記載事項も具体的に定めることで、必要な情報の収集を確実にしています。
第13条(活動の評価)
活動の成果を客観的に評価する仕組みを設けることで、制度の改善と社員のモチベーション向上を図っています。支援先への貢献度や社会的意義だけでなく、企業評価や社員成長への寄与も評価項目に含めることで、多角的な視点からの評価を可能にしています。
第14条(表彰)
優れた成果を上げた活動を表彰することで、社員のモチベーション向上と制度の活性化を図っています。表彰制度は社内での活動の認知度向上にもつながり、参加者の拡大効果も期待できます。
第15条(保険)
活動中の事故リスクに備えて保険加入を義務付けることで、社員の安心感を確保しています。保険内容は別途定めることで、具体的な補償範囲を明確にし、適切なリスク管理を行っています。
第16条(守秘義務)
支援先団体の機密情報保護は信頼関係の基盤です。活動終了後も継続する義務とすることで、長期的な信頼関係の維持を図っています。この条文により、支援先団体も安心して情報提供を行えます。
第17条(個人情報の取扱い)
個人情報保護は現代企業にとって重要な課題です。関連法令と社内規程の遵守を明記し、活動終了後の返却・廃棄も定めることで、適切な個人情報管理を確保しています。
第18条(知的財産権)
活動により生じた成果物の知的財産権について、事前の取決めを求めることで、後々のトラブルを防いでいます。原則として支援先団体に帰属するとすることで、支援の趣旨に沿った運用を図っています。
第19条(免責)
企業の責任範囲を明確にすることで、過度なリスク負担を避けています。故意・重過失の場合を除く免責により、バランスの取れたリスク配分を実現しています。
第20条(教育研修)
効果的な活動実施のため、必要な教育研修の実施を定めています。守秘義務や個人情報保護、支援先とのコミュニケーション方法など、実践的な内容の研修が想定されます。
第21条(改廃)
規程の改廃手続きを明確にすることで、制度の継続的な改善を可能にしています。委員会での審議と取締役会での決議により、適切な意思決定プロセスを確保しています。
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